このページは別記事で描いたVaundyの『灯火』という曲をモチーフにした、私の妄想ストーリーの月菜過去編ですφ(・ω・`)
元記事を読んでいない方は、元記事からご覧になっていただければ幸いです。ρ(._.*)ρ
それでは「灯火 月菜過去編」(´っ・ω・)っすた~と
『灯火(月菜過去編)』
第一章:音が途切れた日
最初に違和感を覚えたのは、ほんの一瞬だった。
いつも通り、ギターを抱えて、
いつも通りのコードを押さえて、
いつも通りに弦を弾いた。
ジャラン——
その音が鳴った瞬間。
「……あれ?」
指が止まった。
何かが違う。
でも、それが何なのか分からない。
もう一度、弾く。
ジャラン——
同じ音。
同じはずなのに、違う。
音はちゃんと鳴っている。
響きも、ズレていない。
でも——
何も残らない。
前は違った。
同じコードでも、少しの違いで楽しくなったり、
思い通りに鳴らせたときは、自然と笑えていた。
“音があるだけで嬉しい”時間が、確かにあった。
なのに、その日は——
ただの音だった。
「……なんで?」
小さく呟く。
部屋の中は、いつもと同じだった。
机の上に置いたノート。
開きっぱなしの教科書。
窓から差し込む、少しだけ冷たい冬の光。
全部、変わってない。
変わってないのに——
“中身だけが抜けている”。
そんな感覚。
ギターをもう一度構える。
今度は少し強めに弾く。
ジャラン——
音が、少しだけ大きくなる。
でも、それだけ。
何も変わらない。
「……つまんない」
気づけば、そう口にしていた。
その言葉に、自分で少しだけ驚く。
今まで、一度も思ったことがなかったから。
上手くいかなくても、
指が痛くても、
コードが押さえられなくても。
“つまらない”なんて思ったことはなかった。
それなのに——
今日は、それしか出てこない。
ギターを膝の上に置いたまま、動けなくなる。
指先が、少しだけ冷たい。
でも、それ以上に——
“何も感じないこと”の方が怖かった。
「……これ、ダメなやつだ」
直感的に分かる。
これはただの“気分”じゃない。
一時的なものじゃない。
もっと深いところで、何かが止まっている。
でも——
それをどうすればいいのか、分からない。
時間が過ぎる。
窓の外の光が、少しずつ傾いていく。
それでも、私は動けなかった。
ただ、ギターを抱えたまま、座っているだけ。
「……やめよ」
ぽつりと呟く。
その言葉に、理由はなかった。
ただ——
続ける意味が、分からなかった。
“やりたい”って気持ちが、どこにも見つからない。
だから、やめる。
それだけ。
ギターをケースに戻す。
その動作が、やけに静かだった。
音がしない。
前は、ケースを閉めるときの音さえ楽しかったのに。
カチッ、と金具が閉まる。
それで、終わった気がした。
何かが。
その日から、ギターに触らなくなった。
最初は一日。
次は三日。
気づけば、一週間。
ケースは部屋の隅に置いたまま。
視界には入るのに、手は伸びない。
「……まぁ、いいか」
何度もそう思った。
無理にやる必要もないし、
別に困ることもない。
学校もあるし、
友達もいるし、
日常は普通に続いている。
だから——
問題ないはずだった。
でも、夜になると少しだけ違った。
部屋が静かになると、
ふと気づく。
「あ、今日も弾いてない」
その事実だけが、浮かび上がる。
でも、それ以上は考えない。
考えたら、多分、戻れなくなる。
だから——
やめる。
何も考えない。
“見えないもの”には、触れない。
その方が、楽だから。
そうやって、時間が過ぎていった。
少しずつ、少しずつ。
“何か”が消えていくのを感じながら。
でも——
その時の私は、まだ知らなかった。
それが“終わり”じゃなくて、
“灯りが見えなくなっただけ”だったことを。
第二章:見えないままの時間
ギターを触らなくなってからも、
生活は何も変わらなかった。
朝、起きて。
制服に着替えて。
学校に行く。
それだけ。
全部、今まで通り。
「月菜、おはよ」
「おはよ」
教室に入ると、いつもの声が飛んでくる。
笑って、返す。
何も変わらない。
ちゃんと会話もできるし、
ちゃんと笑えている。
少なくとも、周りからはそう見えている。
「昨日の課題やった?」
「うん、適当に」
「え、絶対ちゃんとやってるでしょ」
「いや、ほんと適当」
そんなやり取りも、いつも通り。
でも——
どこか、遠い。
自分がその会話をしているはずなのに、
少し離れたところから見ているような感覚。
“参加してる”のに、“関わってない”。
そんなズレ。
授業中も同じだった。
黒板の文字を書き写す。
先生の話を聞く。
ノートを取る。
全部、できている。
でも——
「……なんで分かるんだろ」
ふと、思う。
内容は理解している。
答えも出せる。
でも、それに“意味”を感じない。
分かること自体が、空っぽだった。
「月菜ってさ、ほんと何でもできるよね」
隣の席の子が、何気なく言う。
「そうかな」
笑って返す。
その反応も、自然にできる。
でも——
内側では、何も動いていない。
“できる”ことと、“やりたい”ことが、完全に分離していた。
テストの点も、悪くなかった。
体育も、それなりにこなせる。
特別じゃないけど、困ることもない。
“ちょうどいい位置”。
その場所に、自然と収まっていた。
でも——
「……つまんないな」
放課後、ひとりで帰りながら呟く。
理由は分からない。
何かが足りない気もするし、
何も足りてない気もする。
でも、それを考えるのが面倒だった。
だから——
「まぁ、いいか」
そうやって流す。
その方が、楽だから。
考えなければ、傷つかない。
見なければ、失わない。
そう思っていた。
でも——
本当は分かっていた。
“何かを見ないようにしてる”って。
帰り道、楽器屋の前を通る。
ショーウィンドウに、ギターが並んでいる。
少しだけ、足が止まる。
でも——
すぐに視線を逸らす。
「……いいや」
小さく呟いて、そのまま歩き出す。
見たら、多分、戻りたくなる。
でも、戻れなかったときが怖い。
だから、見ない。
触れない。
“なかったことにする”。
それが、一番楽な方法だった。
家に帰る。
部屋に入る。
視界の端に、ギターケースが映る。
そのまま、何も考えずに通り過ぎる。
でも——
完全には無視できない。
頭のどこかに、ずっと引っかかっている。
「あ、今日も弾いてない」
夜、ベッドに入ってから、ふと思う。
それだけ。
それ以上は考えない。
考えたら、多分、何かが崩れる。
だから——
止める。
「……もういいって」
自分に言い聞かせる。
続ける理由もないし、
別に困ってるわけでもない。
今のままでも、ちゃんと生きていける。
それでいいはずなのに。
それなのに——
胸の奥に、ほんの少しだけ残る違和感。
小さくて、弱くて、今にも消えそうなもの。
でも確かに、そこにある。
「……なんなんだろ」
答えは出ない。
出そうとも思わない。
ただ——
見えないまま、そこにある。
その感覚だけが、少しずつ積もっていく。
日々の中で。
何も変わらない毎日の中で。
気づかないふりをしながら。
“見えないままの時間”が、静かに流れていった。
第三章:あいつの音
その日は、特別な日じゃなかった。
いつも通りの放課後。
いつも通りの帰り道。
ただ——
少しだけ、遠回りした。
理由はない。
なんとなく、まっすぐ帰る気になれなかっただけ。
校舎の裏手を通って、
人気の少ない廊下を歩く。
窓から差し込む夕方の光が、少しだけオレンジ色に揺れている。
静かだった。
人の気配も、声もない。
その静けさの中で——
ふと、音が聞こえた。
ジャラン——
ギターの音。
少しだけ不安定で、
でも、妙に耳に残る響き。
「……誰かいる?」
足が止まる。
音楽室の前だった。
ドアは閉まっている。
でも、中から音が漏れてくる。
ジャラン——
もう一度、鳴る。
同じようで、少しだけ違う。
完璧じゃない。
むしろ、下手。
でも——
「……なにこれ」
思わず、そう呟いた。
自分でも分かる。
この音は、上手くない。
でも、“何も感じない音”じゃない。
何かがある。
ちゃんと、乗ってる。
それが何なのか、分からない。
でも——
耳が、離れない。
ドアに手をかける。
少しだけ迷う。
開ける理由なんて、ない。
でも——
離れられなかった。
ゆっくりと、ドアを開ける。
軋む音が、小さく響く。
中にいたのは、あいつだった。
ひとりで、ギターを弾いている。
真剣な顔で。
でも、どこか楽しそうに。
その表情を見た瞬間——
胸の奥が、ざわついた。
「……なんで」
小さく、呟く。
何がってわけじゃない。
でも——
違和感があった。
同じはずなのに。
未来が見えないのは、同じはずなのに。
やりたいことが分からないのも、同じはずなのに。
それなのに——
なんで、そんな顔ができるの。
なんで、そんなふうに音を鳴らせるの。
ジャラン——
また音が鳴る。
少しだけズレる。
でも、止まらない。
弾き続ける。
その姿を見て、思う。
「……ずるい」
小さく、そう呟いた。
理由は分からない。
でも、そう感じた。
何も見えてないのに、
それでも進んでる感じがして。
私は、止まってるのに。
何も感じないまま、ただ流れてるだけなのに。
「……下手だな」
気づけば、口にしていた。
あいつが、びくっと肩を揺らして振り返る。
「うるせぇな」
少しだけムッとした顔。
でも——
その目は、どこか楽しそうだった。
「何しに来たんだよ」
「別に」
そう言いながら、中に入る。
ドアを閉める。
音が、少しだけはっきり聞こえるようになる。
「続けてよ」
椅子に座る。
理由はない。
でも——
もう一度、聞きたかった。
あいつは少しだけ不思議そうな顔をしてから、
また弾き始める。
ジャラン——
その音を、今度は近くで聞く。
さっきより、よく分かる。
やっぱり、上手くない。
でも——
「ちゃんと、ある」
思わず、そう呟きそうになる。
音の中に、“何か”がある。
迷いも、
不安も、
それでも弾いてる意志も。
全部、混ざってる。
それが、そのまま音になってる。
「……なんで続けてんの?」
気づけば、聞いていた。
自分でも驚くくらい、素直な声で。
あいつは、少しだけ考えてから言う。
「別に」
肩をすくめる。
「なんとなく」
その答えに、少しだけイラッとする。
「それだけ?」
思わず、聞き返す。
「それだけ」
でも——
その顔は、真剣だった。
“なんとなく”なのに、
ちゃんと“やってる顔”。
その矛盾が、胸に引っかかる。
「……変なの」
そう言いながら、視線を落とす。
自分の手を見る。
何もしていない手。
何も掴んでいない手。
少しだけ、悔しくなる。
「……貸して」
気づけば、そう言っていた。
あいつが少しだけ驚いた顔をする。
でも、何も言わずにギターを差し出す。
受け取る。
少しだけ重い。
でも、懐かしい重さ。
指を置く。
久しぶりで、少しだけ硬い。
でも——
覚えている。
弦を弾く。
ジャラン——
音が鳴る。
少しだけ震えている。
でも——
「……あ」
小さく声が漏れる。
感じる。
ちゃんと。
さっきまでなかった感覚。
音が、少しだけ胸に残る。
完全じゃない。
でも——
確かに、“ある”。
その瞬間、分かった。
消えてたんじゃない。
ただ——
見えなくなってただけだ。
「な」
あいつが笑う。
「いいじゃん」
その一言で、胸の奥が少しだけ軽くなる。
ああ——
そうか。
全部分からなくても、いいんだ。
未来が見えなくても、いいんだ。
理由なんてなくても、いいんだ。
ただ——
やればいい。
それだけで、いい。
ジャラン——
もう一度、弾く。
さっきより、少しだけ強く。
音が、少しだけ前に出る。
その感覚が、嬉しかった。
本当に、久しぶりに。
「……なんか」
小さく呟く。
「悪くないかも」
その言葉に、あいつが笑う。
「だろ」
短く、それだけ。
でも——
それで十分だった。
止まっていた時間が、少しだけ動き出す。
見えなかったものが、ほんの少しだけ形を持つ。
それはまだ、小さくて、弱い。
でも——
確かに、そこにあった。
“灯り”みたいに。
第四章:灯りをもらった日
音楽室の空気は、思ったよりも静かだった。
さっきまで感じていたざわつきが、少しだけ落ち着いている。
でも——
完全には消えていない。
胸の奥に、小さく残っている。
ジャラン——
もう一度、弦を弾く。
さっきよりも、少しだけしっかりと。
音が鳴る。
ちゃんと、響く。
そして——
ほんの少しだけ、残る。
「……なんで」
小さく呟く。
自分でも分からない。
さっきまで、何も感じなかったのに。
同じギター。
同じ指。
同じ音のはずなのに。
今は——
違う。
隣を見る。
あいつが、こっちを見ている。
特別な顔じゃない。
いつも通りの、少しだけ緩い表情。
でも——
その目は、ちゃんと“ここ”を見ている。
逃げていない。
ごまかしていない。
ただ、そのまま。
「……なんで続けてんの?」
さっきと同じ質問を、もう一度する。
でも今度は——
少しだけ違う意味で。
答えが知りたいんじゃない。
“その状態”が知りたい。
あいつは、少しだけ考えてから言う。
「だから、なんとなくって言っただろ」
少しだけ笑う。
でも——
その言葉の奥に、何かがある気がした。
「ほんとにそれだけ?」
少しだけ踏み込む。
自分でも驚くくらい、自然に。
あいつは、少しだけ視線を逸らす。
そして——
「やめたくないから」
小さく、そう言った。
その一言で、空気が変わる。
“なんとなく”じゃなかった。
ちゃんと、そこに理由があった。
強くなくていい。
綺麗じゃなくていい。
ただ——
「やめたくない」
それだけ。
その言葉が、胸の奥に落ちる。
ああ——
そうか。
それでいいんだ。
“やりたい理由”なんて、なくてもいい。
“続ける理由”があればいい。
それだけで、十分なんだ。
「……そっか」
小さく呟く。
そのまま、もう一度ギターを構える。
指を置く。
少しだけ、迷う。
でも——
弾く。
ジャラン——
今度は、少しだけ迷いが減っている。
音が、少しだけ前に出る。
「……いいじゃん」
あいつが言う。
軽い調子で。
でも、その一言が、やけに嬉しかった。
「……別に」
そっけなく返す。
でも——
口元が、少しだけ緩んでいるのが分かる。
隠しきれない。
「もう一回」
自分から言う。
あいつが少しだけ驚いた顔をする。
でも、すぐに笑う。
「いいよ」
そのまま、コードを鳴らす。
それに合わせて、弾く。
ジャラン——
音が重なる。
まだズレてる。
でも——
“繋がってる”。
その感覚が、ちゃんとある。
それだけで、十分だった。
時間が少しだけ流れる。
外の光が、少しずつ暗くなっていく。
でも、気にならない。
「……なんかさ」
弾きながら、口を開く。
言葉が、自然に出てくる。
「さっきまで、全部どうでもよかったんだよね」
正直に言う。
隠す必要もない気がした。
「勉強も、部活も、未来も」
音を鳴らしながら、続ける。
「全部、見えてるフリしてただけ」
あいつは、何も言わない。
ただ、聞いている。
その距離感が、ちょうどいい。
「でも」
少しだけ間を置く。
音が、一瞬だけ途切れる。
「今は、ちょっと違う」
その言葉は、自分でも驚くくらい素直だった。
「全部分かんないけど」
弦を弾く。
ジャラン——
「それでもいいかもって思ってる」
その音が、少しだけ強く響く。
あいつが、ふっと笑う。
「いいじゃん」
それだけ。
でも——
その一言で、十分だった。
ああ、戻ってきたんだ。
完全じゃない。
まだ、ぼやけてる。
でも——
ちゃんと、自分の中にある。
「ねぇ」
ふと、口を開く。
少しだけ迷う。
でも——
聞く。
「これ、続ける?」
あいつが、少しだけ笑う。
「いいけど」
その答えに、小さく頷く。
「じゃあ、続ける」
それは、確認じゃなかった。
“決めた”言葉だった。
この人とやる。
この人となら、進める。
理由なんて、まだ分からない。
でも——
それでいい。
ジャラン——
もう一度、音を鳴らす。
さっきよりも、少しだけ強く。
音が、少しだけ遠くまで届く気がした。
その感覚が、嬉しかった。
本当に、久しぶりに。
外は、すっかり暗くなっていた。
でも——
不思議と怖くなかった。
見えないままでも、いいと思えた。
だって——
ここに、灯りがあるから。
小さくて、弱いけど。
確かに、ここにある。
「……ありがとう」
小さく、誰にも聞こえない声で呟く。
あいつは、気づいていない。
でも、それでいい。
これは、私の中の言葉だから。
その日——
私は、もう一度“始めた”。
見えないままで。
でも、確かに前を向いて。
この灯りを、消さないように。
そして——
いつか、あいつが迷ったときは。
今度は、私が返す。
そう、静かに決めながら。
最終章:隣にいる理由
それから、時間はゆっくりと流れていった。
特別な出来事があったわけじゃない。
劇的な変化も、奇跡みたいな瞬間もない。
ただ——
音を鳴らす時間が、少しずつ増えていった。
放課後の音楽室。
誰もいない時間。
ジャラン——
あいつが弾く。
少し遅れて、私が重ねる。
ジャラン——
音が、少しだけズレる。
でも——
そのズレすら、嫌じゃなかった。
むしろ、それが“今の自分たち”みたいで。
未完成で、不安定で、でも止まっていない。
「……ここ、違う」
私が言う。
「分かってる」
あいつが返す。
少しだけ笑いながら。
そのやり取りが、妙に心地よかった。
正解じゃなくていい。
完璧じゃなくていい。
ただ——
“続いていること”が、大事だった。
帰り道も、同じだった。
並んで歩く。
特別な話はしない。
音楽の話をしたり、
どうでもいい話をしたり。
沈黙も、増えた。
でも、それが苦じゃなかった。
コツ、コツ。
足音が重なる。
あの頃と同じ。
でも——
違う。
あの時は、ただ流れていただけ。
今は——
少しずつでも、“進んでいる”感覚がある。
ある日、ふと思った。
もし、あいつに会っていなかったら。
もし、あの音を聞いていなかったら。
多分——
私は、あのままだった。
ギターも触らなくなって、
何も感じないまま、
“できる自分”だけで生きていたと思う。
それでも、困らなかったはずだ。
成績も、普通に取れて、
周りとも上手くやれて、
それなりに生きていけた。
でも——
「それでよかったのかな」
小さく呟く。
答えは、すぐに出た。
「よくない」
はっきりと、そう思えた。
あのままだったら、多分——
“何も残らない”。
見えてるフリだけで、
何も掴まないまま、終わる。
それが、怖かった。
でも——
今は違う。
見えてない。
分からない。
それでも——
手を伸ばしている。
それだけで、全然違う。
「あ」
ふと、思い出す。
あの日の音。
少しだけ下手で、
でも真っ直ぐだった音。
あれが、最初だった。
あれが——
“灯り”だった。
見えなかったものを、少しだけ照らしてくれた。
全部じゃない。
ほんの少し先だけ。
でも、それで十分だった。
だから——
今度は、私の番だと思った。
あいつが、もし止まったら。
あいつが、もし見えなくなったら。
あの時と同じように。
「今度は、私が照らす」
それが、自然だった。
義務でもないし、
約束でもない。
ただ——
そうしたいと思ったから。
それだけ。
音楽室で、あいつが弾いている。
少しだけ、前より上手くなっている。
でも——
それよりも大事なのは、
“やめてないこと”。
それだけで、十分だった。
隣に座る。
何も言わずに、ギターを構える。
ジャラン——
音を重ねる。
あの時と同じ。
でも——
今は、もっとはっきりしている。
自分の中の灯りが。
そして——
あいつの中にも、ちゃんとあることが。
「……ねぇ」
ふと、口を開く。
あいつが、少しだけこちらを見る。
「ん?」
少しだけ迷う。
言葉にするかどうか。
でも——
全部は言わない。
まだ、言わない。
「……なんでもない」
軽く流す。
でも——
心の中では、ちゃんと決めている。
この先、何があっても。
うまくいかなくても。
迷っても。
見えなくなっても。
私は——
「隣にいる」
それだけは、変えない。
理由は、もう分かっているから。
もらったから。
あの時、灯りを。
見えない中で、進むための小さな光を。
だから——
今度は、消さないようにする。
あいつの中の、それを。
そして——
一緒に進む。
見えない未来でもいい。
分からなくてもいい。
ただ——
この灯りがある限り。
私たちは、進める。
それでいい。
それが、すべてだから。
ジャラン——
音が鳴る。
少しだけ強く。
少しだけ遠くへ。
その音が、確かに響いた。
ここにある証みたいに。
消えないものとして。
~完~
二人の未来編のストーリも書いてみましたのでもしよろしければ読んでみてくださいρ(._.*)ρ
また、他にも『Vaundy』の名曲を紹介しておりますので併せてご覧くださいρ(._.*)ρ









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