このページは別記事で描いたVaundyの『常熱』という曲をモチーフにした、私の妄想ストーリーの葵視点ですφ(・ω・`)
元記事を読んでいない方は、元記事からご覧になっていただければ幸いです。ρ(._.*)ρ
それでは「常熱(葵視点)」(´っ・ω・)っすた~と
『常熱(葵視点)』
第一章:はじまりは、私だった
最初におかしいと思ったのは、音だった。
朝、目が覚める。
カーテン越しに光が差し込んで、
遠くで車の走る音がする。
いつもと同じ朝。
そのはずなのに。
「……同じだ」
昨日と、同じ音だった。
車が通るタイミング。
鳥の鳴く間隔。
風が窓に触れる音。
全部が、同じ位置にあった。
気のせいだと思った。
寝ぼけているだけだと。
でも、その違和感は消えなかった。
学校に行く途中。
角を曲がると、
いつも同じ場所で犬が吠える。
ワン。
一回だけ。
それも、昨日と同じ“間”で。
「……」
立ち止まる。
もう一度、同じ時間に通ってみる。
ワン。
やっぱり同じだった。
「……ありえない」
小さく呟く。
偶然じゃない。
“再現”されている。
その日から、私は記録を取り始めた。
時間。
出来事。
人の動き。
細かく、細かく。
そして、数日後。
「……やっぱり」
ノートを見て、確信した。
全部、同じだった。
一日の流れ。
会話の内容。
笑うタイミング。
何もかもが、ズレずに繰り返されている。
「……戻ってる」
そう思った瞬間、
背筋が一気に冷えた。
進んでいるはずの時間が、
どこかで巻き戻っている。
しかも、それは“完全に同じ形”で。
最初は、怖かった。
自分だけが壊れているのかと思った。
周りに話そうともした。
「ねぇ、昨日と同じこと起きてない?」
でも、返ってくるのは同じ反応。
「なにそれ、寝ぼけてる?」
笑われる。
でもその“笑い方”すら、昨日と同じだった。
「ああ……」
そのとき、理解した。
これは、私だけが気づいている。
世界は壊れている。
でも。
壊れていることに気づけるのは、
私だけ。
それは、救いじゃなかった。
むしろ。
“逃げ場がない”ってことだった。
夜。
部屋にひとり。
何も音がない空間。
その静けさの中で、
自分の呼吸だけがやけに大きく聞こえる。
「……ねぇ」
誰もいないのに、声を出す。
返事は、ない。
当たり前。
でも。
「……いるんでしょ」
そんな気がしてしまう。
何かが、この世界を“回している”。
見えない何かが。
「……誰」
問いかけても、答えはない。
でもその代わりに。
胸の奥で、わずかに違う感覚があった。
ドクン。
一拍だけ、ズレた鼓動。
「……?」
その違和感に、意識を向ける。
普段は気づかないはずの、小さなズレ。
でも今は、それだけが“違う”。
世界は同じ。
でも。
“私の中だけ”、ほんの少しズレている。
それが、救いだった。
「……まだ、壊れてない」
完全には、飲み込まれていない。
そう思えたから。
それから私は、待つようになった。
何かが変わる瞬間を。
このループに、ほころびが出る瞬間を。
そして、ある日。
それは、唐突に現れた。
人の流れの中で。
ほんの一瞬だけ。
“違う動き”をする人間がいた。
立ち止まるタイミングが、ズレている。
視線の動きが、揃っていない。
「……あ」
思わず、声が漏れる。
その人は、こちらを見た。
その目は。
世界を、“疑っていた”。
「……見つけた」
その瞬間。
この終わらないループに、初めて“意味”が生まれた。
第二章:近づくという選択
見つけた瞬間、わかった。
「あ、この人もだ」
確信だった。
歩き方が違う。
周りの人間は、流れに沿って動く。
信号が変われば進み、
止まれば止まる。
でも、その人だけは違った。
一瞬だけ、遅れる。
まるで、“考えてから動いている”みたいに。
「……やっぱり」
胸の奥が、わずかに高鳴る。
ドクン。
その鼓動だけが、
この世界の中で唯一“ズレている”。
本当は、関わらないほうがいい。
そう思った。
この世界のループは、
“気づいた者”を巻き込む。
巻き込まれた先は——
“戻れない場所”。
私は、それを知っている。
何度も、何度も見てきたから。
だから。
「……やめよう」
一度は、そう決めた。
でも。
足が、止まらなかった。
気づけば、彼の後ろを歩いていた。
距離を保って。
視線を逸らしながら。
「……だめだ」
わかっている。
関われば、変わる。
このループの“形”が。
そして——
彼の行き先も。
それでも。
「……もう少しだけ」
そう思ってしまった。
最初は、本当に些細なことだった。
同じ時間に、同じ場所に立つ。
それだけ。
話しかけない。
目も合わせない。
ただ、“存在する”。
それを、何日か繰り返した。
そして、ある日。
彼の動きが、少しだけ変わった。
立ち止まるタイミングが、
私に合わせて、ほんの少しズレた。
「……あ」
気づいた。
“気づき始めてる”。
それは、嬉しさと同時に、
はっきりとした恐怖を連れてきた。
「……ここからだ」
ここから先は、“戻れない”。
でも。
止めなかった。
次は、もう少しだけ近づく。
同じカフェ。
同じ席。
偶然を装って、隣に座る。
彼は、一瞬だけこちらを見る。
その視線。
完全じゃない。
でも確実に、“違和感”を持っている目。
「……」
何も言わない。
言葉を使うと、壊れてしまう気がした。
この“微妙なズレ”のまま、
ゆっくりと引き込んでいく。
それが、一番自然だから。
何日か経つと、彼の変化は明確になった。
時計を見る回数が増える。
周囲を見渡す時間が長くなる。
そして、何より——
“考える時間”が増えた。
「……だめだ」
小さく、呟く。
ここまで来たら、もう止まらない。
彼はもう、“気づき始めている”。
そして気づいた人間は、
必ず“選ばされる”。
戻るか。
進むか。
私は、それを知っている。
だから。
最後の一歩は、彼に任せるしかない。
でも。
「……ほんとに、それでいいの?」
自分に問いかける。
答えは、出ている。
“よくない”。
彼を、引き込んでいる。
このループに。
この“常熱”に。
それがどういう意味か、
私はちゃんと知っている。
それでも。
「……会いたい」
その一言が、すべてを上書きした。
そして、その日。
海へ向かう。
いつもと同じルート。
でも今日は、少しだけ違う。
“彼も来る”。
確信があった。
夕焼けの中、立つ。
風が吹く。
波の音が響く。
そして。
背後に、気配。
「……来た」
振り返る。
彼が、そこにいる。
その瞬間。
「……やっぱり」
すべてが、繋がる。
彼は、ここまで来た。
“選ぶ場所”まで。
「……ねぇ」
少しだけ、声をかける。
ここから先は、もう止められない。
「なんか、変な感じするね」
その一言で。
彼は、完全にこちら側へ踏み込む。
それがわかっていても。
私は。
止めなかった。
第三章:選ばれるということ
彼が来た瞬間、わかった。
「……また、ここまで来た」
夕焼けの色。
波の音。
風の温度。
全部が、知っている配置だった。
そして、その中にいる彼も。
「……遼」
まだ名前は知らないはずなのに、
喉の奥で、その音が浮かぶ。
何度も呼んできた名前。
何度も、ここで出会ってきた名前。
彼は、少しだけ息を乱していた。
走ってきたのかもしれない。
それとも。
“ここに来ること”を、どこかで理解していたのかもしれない。
「……なんで」
彼が、小さく呟く。
「なんで、ここなんだ」
その問いに、答えはある。
でも、言わない。
言った瞬間、終わるから。
代わりに、少しだけ笑う。
「なんか、変な感じするね」
その言葉。
それは毎回、同じ場所で使う“鍵”。
彼の中にある違和感を、
一気に表面に引き上げるための。
案の定、彼の表情が変わる。
迷いと、確信が混ざる顔。
「……はじめてじゃない」
その一言で、すべてが決まる。
「……やっぱり」
小さく、呟く。
ここから先は、毎回同じ。
でも。
“同じじゃない”。
彼は、毎回少しずつ違う。
迷う時間。
視線の揺れ。
声の震え。
それが、少しずつ変わっている。
「ねぇ」
ゆっくりと、距離を詰める。
本当は、怖い。
この距離。
ここから先は、完全に“選択”になる。
「さっきさ」
彼の目を見る。
「はじめてじゃないって言ったよね」
逃げ道は、残してある。
ここで否定すれば。
“普通の出会い”として終われる。
でも。
彼は、毎回——
「……ああ」
肯定する。
その瞬間。
胸の奥が、少しだけ締め付けられる。
「……なんで」
小さく、呟く。
どうして、毎回こっちを選ぶの。
でも、その問いは出さない。
代わりに、手を伸ばす。
触れるか、触れないか。
ほんの数センチ。
この距離が、境界線。
「……やめたほうがいい」
彼が言う。
その言葉を聞くたびに、少しだけ安心する。
まだ、戻れる。
まだ、彼は“向こう側”にいる。
「ねぇ」
でも、私は止めない。
「なんで?」
わざと聞く。
理由を。
彼が、自分で答えを出すために。
「……戻れなくなる」
その言葉。
それが、すべて。
理解している。
彼はちゃんと、わかっている。
それでも。
「……戻りたい?」
その問いを投げる。
これが、最後の分岐。
ここで、彼が“戻る”と言えば。
すべて終わる。
彼は日常に戻る。
私は、またひとりになる。
それでもいいはずだった。
それが、正しいはずだった。
でも。
「……いいよ」
その言葉が、すべてを壊す。
「戻れなくても」
その瞬間。
胸の奥で、何かが弾けた。
嬉しい。
でも同時に。
“終わった”と思った。
「……そっか」
かろうじて、そう返す。
もう止められない。
距離を詰める。
呼吸が混ざる。
「ねぇ」
耳元で、囁く。
「これが、“常熱”だよ」
触れる。
その瞬間。
彼の身体が、わずかに震える。
わかる。
内部が変わっていく感覚。
鼓動が上がる。
思考が崩れる。
「……っ」
彼の声が、崩れ始める。
言葉が、溶けていく。
「……ごめん」
小さく、呟く。
聞こえていないかもしれない。
でも、それでも言う。
「止められなかった」
これは、事故じゃない。
私が、引き込んだ。
それでも。
手は、離さない。
離せなかった。
「……ねぇ、遼」
彼の鼓動が、どんどん強くなる。
「今回は、どこまで行く?」
答えは、知っている。
それでも、聞く。
何度でも。
彼が、“自分で選ぶ”ように。
それが。
このループの、ルールだから。
第四章:見届けるという罰
触れた瞬間、わかる。
「ああ……まただ」
彼の中で、何かが変わる。
鼓動のリズム。
呼吸の浅さ。
指先の震え。
全部が、一気に“こっち側”に傾いていく。
「……っ」
彼の声が、崩れ始める。
言葉が、途切れる。
意味を持たなくなる。
それを見るたびに、思う。
「……戻れたのに」
ここで止めればいい。
手を離して、距離を取ればいい。
“これ以上進まない”って、決めればいい。
それだけで、彼はまだ戻れる。
まだ、“平熱の世界”に帰れる。
でも。
「……できない」
手が、離れない。
むしろ、少しだけ強く握ってしまう。
彼の温度が、上がっていくのがわかる。
平熱じゃない。
明らかに、“異常な熱”。
「ねぇ……」
彼が、何かを言おうとする。
でも。
言葉にならない。
その様子が、痛いほどわかる。
頭の中では、ちゃんと考えているのに。
それが、外に出てこない。
“溶けている”。
「……ごめん」
また、同じ言葉が漏れる。
何度目か、わからない。
でも毎回、同じところで言っている。
謝る資格なんて、ないのに。
「……ねぇ」
彼の顔を、少しだけ覗き込む。
目が、揺れている。
焦点が、合っていない。
でも。
完全に壊れてはいない。
まだ、少しだけ“戻る余地”が残っている。
「……やめる?」
本当は、答えを聞きたくない。
でも、それでも聞く。
彼が、自分で選ぶために。
「……っ」
彼は、言葉を探している。
その時間が、やけに長く感じる。
数秒なのに。
何度も繰り返してきた、この瞬間。
「……やばいな、これ」
かすれた声で、そう言う。
その言葉を聞いた瞬間。
「……ああ」
終わった、と思った。
その言い方は、“拒否”じゃない。
“受け入れている”。
壊れていくことを。
自分が戻れなくなることを。
「……そっか」
小さく、呟く。
胸の奥が、少しだけ痛む。
でも同時に。
安心してしまう。
「……ほんとに、ずるい」
そう思う。
彼は、わかっていて来る。
わかっていて、選ぶ。
だから私は。
止められない。
「ねぇ、遼」
少しだけ距離を縮める。
もう、境界はほとんどない。
触れているのか、
溶けているのか、
区別がつかない距離。
「これがね」
静かに、囁く。
「“常熱”なんだよ」
彼の鼓動が、さらに上がる。
ドクン、ドクン、ドクン。
リズムが崩れていく。
それに合わせて、
私の中の何かも変わっていく。
怖い。
でも。
「……気持ちいい」
思ってしまう。
彼の変化を感じるたびに。
彼の鼓動が、自分と重なるたびに。
“満たされていく”。
「……最低だな」
自分で、わかっている。
守りたかったはずなのに。
壊している。
それでも。
「……離せない」
手を、さらに強く握る。
彼の存在が、少しずつ曖昧になる。
輪郭が、ぼやける。
それは。
“こっちに来ている”証拠。
「……ねぇ」
最後に、問いかける。
「どこまで行く?」
その言葉は、確認じゃない。
“覚悟の共有”。
彼が、どこまで溶けるのか。
そして。
私が、どこまで壊すのか。
その境界を。
一緒に、越えるための。
最終章:それでも、待っている
静かになる。
彼が、完全に“こちら側”に来たあと。
音が、消える。
波の音も、風も、夕焼けも。
全部が、一度、白く溶ける。
そして。
残るのは——
鼓動だけ。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
「……また、ここまで来たね」
小さく、呟く。
返事は、ない。
でも。
「……いるでしょ」
確信だけは、ある。
ここは、“境界の奥”。
戻るでも、進むでもない場所。
選択の、終点。
彼は、ここまで来る。
毎回。
何度でも。
そして。
毎回、溶ける。
「……ほんとに」
少しだけ、笑う。
「ずるいよ」
わかっていて、来る。
わかっていて、選ぶ。
そのくせ。
最後の最後で、“全部を委ねてくる”。
「……どうする?」
誰に向けているのか、わからない問い。
ここで、終わらせることもできる。
彼を、このまま“こちら側”に残すこと。
完全に溶かして、
二度と戻れないようにすること。
それも、できる。
「……」
少しだけ、迷う。
本当は。
それが一番、楽だ。
もう、別れなくていい。
もう、繰り返さなくていい。
ずっと、このままでいられる。
でも。
「……それじゃ、意味ないんだよね」
静かに、息を吐く。
これは、“閉じるための場所”じゃない。
“選び続けるための場所”。
彼が、何度でも選ぶためにある。
「……ねぇ、遼」
鼓動に、そっと触れる。
もう形はない。
でも、確かにそこにある。
「今回も、戻すね」
優しく、言う。
これが、私の役割。
彼を、ここまで連れてくること。
そして。
“手放すこと”。
「……ほんと、やだな」
小さく、笑う。
毎回、同じことを思う。
離したくない。
でも、離さないといけない。
その矛盾が、胸に刺さる。
「……また来るでしょ」
わかっているくせに、聞く。
答えは、ない。
でも。
ドクン。
鼓動が、少しだけ強くなる。
それだけで、十分だった。
「……うん」
頷く。
彼は、また来る。
何度でも。
“こっち”を選びに。
「……だから」
少しだけ、声を落とす。
「次も、ちゃんと迷ってね」
それが、彼のためだから。
簡単に来られたら、意味がない。
苦しんで。
迷って。
それでも選んで。
ここに来るから、意味がある。
「……待ってる」
その言葉と同時に。
世界が、ゆっくりとほどけていく。
白が、崩れる。
音が、戻る。
時間が、動き出す。
彼は、“向こう側”へ戻る。
私は、ここに残る。
ひとりで。
でも。
「……ひとりじゃないか」
小さく、呟く。
この鼓動は、まだ残っている。
彼の中にも。
私の中にも。
それがある限り。
また、必ず出会う。
何度でも。
「……次は、どこまで行けるかな」
静かな空間で、微かに笑う。
それが。
私の、願い。
そして。
“常熱”の、正体。
~完~
現実再会編のストーリも書いてみましたのでもしよろしければ読んでみてくださいρ(._.*)ρ
また、他にも『Vaundy』の名曲を紹介しておりますので併せてご覧くださいρ(._.*)ρ








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