『灯火』Vaundy。”妄想ストーリー 二人の未来編”

Vaundy

このページは別記事で描いたVaundyの『灯火』という曲をモチーフにした、私の妄想ストーリーの二人の未来編ですφ(・ω・`)

元記事を読んでいない方は、元記事からご覧になっていただければ幸いです。ρ(._.*)ρ

それでは「灯火 二人の未来編」(´っ・ω・)っすた~と

『灯火(二人の未来編)』

第一章:少しだけ増えた光

ステージに立つ前、ふと足が止まった。

カーテンの隙間から、客席を見る。

暗がりの中に、人影が並んでいる。

「……増えたな」

小さく呟く。

前は——

数えるまでもなかった。

十人もいない客席。
スマホを見ている人。
こっちを見ていない視線。

“そこにいるのに、いない”みたいな空気。

あのときの光景は、まだはっきり覚えている。

それと比べると——

今は、違う。

多くはない。

満員でもない。

でも——

“見ている目”がある。

ちゃんと、こっちを向いている。

それだけで、空気が変わる。

「……どうしたの」

後ろから、月菜の声。

振り返ると、いつも通りの顔で立っている。

特別な表情じゃない。

でも——

その“変わらなさ”が、少しだけ安心をくれる。

「いや、ちょっと」

言葉を探す。

でも、うまく出てこない。

「なんか……違うなって」

曖昧な言い方。

でも、月菜はすぐに分かる。

「ああ」

軽く頷く。

「増えたね」

それだけ。

余計なことは言わない。

でも、その一言で十分だった。

ステージに出る直前の空気。

少しだけ重い。

でも——

嫌じゃない。

昔は、この空気が怖かった。

逃げたくなるような、圧みたいなもの。

でも今は——

「……悪くないな」

小さく呟く。

むしろ、この感覚があるから立てる。

そんな気がしていた。

「行くよ」

月菜が言う。

その声で、現実に戻る。

「ああ」

短く返す。

深呼吸をひとつ。

肺に冷たい空気が入る。

心臓が、少しだけ強く鳴る。

でも——

震えはない。

ライトが当たる。

ステージに出る。

視界が、一瞬白くなる。

そのあと、ゆっくりと景色が戻ってくる。

客席。

人の顔。

少しだけ緊張した表情。
楽しみにしているような目。

全部が、はっきり見える。

あの頃は——

見えなかった。

見えていても、“見ようとしてなかった”。

怖かったから。

届いてないのが分かるのが、怖かったから。

でも今は——

「……見えるな」

小さく呟く。

良くも悪くも、全部見える。

でも、それでいい。

逃げる理由にはならない。

ギターを構える。

指が、自然と動く。

ジャラン——

一音目が鳴る。

その瞬間、空気が少しだけ変わる。

分かる。

音が、前に出ている。

前よりも、確実に。

届いているかどうかは分からない。

でも——

“届けようとしている音”になっている。

それが、全部だった。

月菜が隣で弾く。

リズムが重なる。

少しだけズレる。

でも——

すぐに合う。

その感覚が、心地いい。

「ああ……」

心の中で、小さく息を吐く。

戻ってきた。

いや——

ここまで来た。

あの何もなかった場所から。

見えないまま、歩き続けて。

何度も止まりかけて。

それでも、やめなかった。

その積み重ねが、今ここにある。

歌い出す。

声が出る。

震えない。

完璧じゃない。

でも——

逃げてない。

その一音一音に、ちゃんと意味がある。

観客の表情が、少しだけ動く。

ほんのわずか。

でも——

確かに反応がある。

「……届いてる?」

一瞬、そう思う。

でも、すぐに考えるのをやめる。

そこじゃない。

届いたかどうかじゃない。

今、ここで鳴らしていること。

それだけでいい。

サビに入る。

声を上げる。

前よりも、少しだけ強く。

前よりも、少しだけ遠くへ。

ジャラン——

音が、広がる。

あの頃よりも、少しだけ。

でも確実に。

演奏が終わる。

一瞬の静寂。

そのあと——

拍手。

前よりも、はっきりした音。

大きいわけじゃない。

でも——

ちゃんと“返ってくる音”。

「……ああ」

小さく、息を吐く。

ステージの上で、少しだけ視線を落とす。

床の上に、光が落ちている。

その中に、自分の影がある。

昔は、この影すら曖昧だった気がする。

でも今は——

「ちゃんと、いるな」

そう思えた。

ステージを降りる。

裏に戻る。

少しだけ静かになる。

月菜が隣で笑う。

「ね」

短く、それだけ。

「……ああ」

頷く。

それ以上は言わない。

言葉にすると、軽くなる気がしたから。

でも——

分かっている。

あの頃と比べて、何が変わったのか。

全部じゃない。

未来も、正解も、まだ見えない。

でも——

“進んでいる実感”だけは、確かにある。

それがあれば、十分だった。

ふと、思う。

もし、あのときやめていたら。

もし、あのまま見ないふりを続けていたら。

この景色は、なかった。

この音も。

この時間も。

全部。

「……来たな」

小さく呟く。

到達じゃない。

ゴールでもない。

でも——

“ここまで来た”という実感。

その一歩目が、確かにここにあった。

そして——

まだ続いていく。

この先も。

見えないままで。

でも、灯りを持ったまま。

第二章:うまくいかない日

スタジオの中は、いつもより静かだった。

音は出ている。

ギターも、ドラムも、ちゃんと鳴っている。

でも——

「……なんか違うな」

手を止める。

弦の振動が、少しだけ遅れて消える。

その余韻すら、どこか噛み合っていない気がした。

「うん、違うね」

月菜が、あっさりと言う。

即答だった。

迷いも、遠慮もない。

それが逆に、少しだけ救いだった。

「どこがだろうな」

ギターを軽く弾く。

ジャラン——

音は悪くない。

むしろ、前よりずっと整っている。

リズムも安定してるし、ミスも減った。

なのに——

「……なんでこんな薄いんだろ」

ぽつりと呟く。

音が“届いてない”感じ。

いや、違う。

“乗ってない”。

何かが。

前はもっと、ぐちゃぐちゃだった。

でも——

あの頃の方が、“何かがあった”。

不安とか、焦りとか、勢いとか。

そういうものが、そのまま音になっていた。

今は——

整っている分、逆に空っぽに感じる。

「上手くなったのに、つまんないってやつ?」

月菜が、少しだけ笑う。

「……それだ」

苦笑する。

まさに、その通りだった。

「なんかさ」

椅子に腰を落とす。

ギターを膝に置いたまま、天井を見る。

「前の方が良かった気がするんだよな」

その言葉に、自分でも少しだけ違和感を覚える。

成長しているはずなのに。

前よりできることは増えているのに。

それでも——

満足できない。

「それはさ」

月菜が、少しだけ考えてから言う。

「“前の方が良かった”んじゃなくて」

ゆっくりと、言葉を選ぶ。

「“今のやり方が合ってない”だけじゃない?」

その言葉に、少しだけ視線を戻す。

「……どういう意味だよ」

「そのまま」

肩をすくめる。

「ちゃんとやろうとしすぎてる」

その指摘は、痛かった。

図星だったから。

「……まぁ、そうかもな」

無意識に、整えようとしている。

ズレないように。
ミスしないように。
評価されるように。

そうやって作った音は——

確かに綺麗だった。

でも、それだけだった。

「別に悪いことじゃないけどさ」

月菜が続ける。

「それだけだと、面白くはならないよね」

その言葉に、少しだけ息を吐く。

分かっている。

でも——

「どうすりゃいいんだよ」

正直な言葉が出る。

「適当にやると、崩れるし」

「ちゃんとやると、つまんないし」

その間が、見えない。

どこを取ればいいのか、分からない。

「……まぁね」

月菜が、小さく頷く。

「その状態、ちょっといいかもね」

「は?」

思わず、聞き返す。

「なんでだよ」

「だってさ」

少しだけ笑う。

「迷ってるってことは、まだ探してるってことでしょ」

その言葉に、少しだけ黙る。

確かに——

何も感じてなかった頃は、こんな風に悩むことすらなかった。

「……まぁ、そうか」

小さく頷く。

完全に止まってるわけじゃない。

むしろ——

動いているからこそ、ぶつかっている。

「ねぇ」

月菜が、ギターを軽く弾く。

ジャラン——

少しだけラフな音。

さっきまでより、崩れている。

でも——

どこか、芯がある。

「もう一回やろ」

その一言が、やけに自然だった。

「……今の状態で?」

「うん」

迷いなく頷く。

「そのままでいいから」

その言葉に、少しだけ考える。

整えない。

まとめない。

そのまま。

「……分かった」

ギターを構える。

指を置く。

少しだけ深呼吸。

そして——

弾く。

ジャラン——

さっきより、少しだけ荒い音。

でも——

どこか近い。

自分の中に。

月菜の音が重なる。

リズムが、少しズレる。

でも——

止まらない。

続ける。

ジャラン、ジャラン——

音が、ぶつかる。

でも、そのぶつかりが嫌じゃない。

むしろ——

「ああ……」

小さく息を吐く。

これだ。

探してたのは。

綺麗じゃなくていい。

正確じゃなくていい。

ただ——

“ここにある音”。

それが欲しかった。

演奏が終わる。

少しだけ荒い空気が残る。

でも——

さっきより、ずっといい。

「……今の」

「うん」

月菜が頷く。

「こっちの方が好き」

その言葉に、少しだけ笑う。

「俺もだ」

正直に答える。

やっと、少しだけ見えた気がした。

答えじゃない。

でも——

“方向”。

「……難しいな」

小さく呟く。

「うん」

月菜が、軽く笑う。

「でも、それでいいんじゃない?」

その言葉に、少しだけ頷く。

完璧じゃなくていい。

迷ってもいい。

それでも——

続けていれば、どこかに繋がる。

その感覚だけは、もう分かっていた。

スタジオの空気が、少しだけ変わる。

さっきまでの“止まってる感じ”が、消えている。

まだ不完全。

でも——

確実に動いている。

その実感だけで、十分だった。

第三章:選ばれなかった夜

結果が出る前の時間は、やけに長く感じた。

スマホの画面を、何度も見返す。

更新されていないページ。

分かっている。

見たところで、変わらない。

それでも——

「……まだか」

小さく呟く。

指先が、少しだけ冷たい。

心臓の音が、いつもより近い。

「そんな見ても変わらないでしょ」

隣で、月菜が言う。

ソファに座って、ギターを軽く触っている。

その様子は、いつも通りだった。

「……分かってる」

短く返す。

でも、目は画面から離れない。

今回は、少し違う。

今までのライブとは違う。

もっと大きな場所。
もっと多くの人の前でやれるチャンス。

「……通りたいな」

ぽつりと漏れる。

願いに近い言葉。

月菜は、何も言わない。

ただ、軽く弦を弾く。

ジャラン——

その音が、やけに落ち着く。

ピコン——

通知音。

画面が、変わる。

一瞬、時間が止まる。

指が、少しだけ震える。

タップする。

文章が表示される。

目で追う。

そして——

「……ああ」

それだけだった。

通っていなかった。

選ばれなかった。

理由は書いていない。

ただ、結果だけ。

「……そっか」

画面を閉じる。

頭の中が、一瞬だけ真っ白になる。

悔しいのか。

悲しいのか。

分からない。

でも——

「……まぁ、そうだよな」

小さく息を吐く。

予想していなかったわけじゃない。

むしろ、どこかで分かっていた。

簡単にはいかない。

そんな都合よく、上に行けるわけじゃない。

「どうする?」

月菜が聞く。

いつも通りの声。

変わらないトーン。

それが、逆に現実をはっきりさせる。

どうする。

やめるか。

続けるか。

その選択。

「……どうするって」

少しだけ笑う。

「やるだろ」

答えは、もう出ていた。

考えるまでもない。

「だよね」

月菜が、小さく笑う。

その表情を見て、少しだけ思う。

ああ——

試されてたんだなって。

結果じゃない。

“その後”。

ここで何を選ぶか。

そこが全部。

「悔しいな」

素直に言う。

今回は、ちゃんと悔しかった。

何も感じなかった頃とは違う。

「うん」

月菜が頷く。

「それでいいと思う」

その言葉に、少しだけ安心する。

悔しいって思える。

それだけで、進んでる証拠。

「……でもさ」

ソファに座る。

スマホをポケットにしまう。

「前みたいに、全部崩れる感じじゃないな」

正直な感覚だった。

昔だったら——

きっと、ここで止まっていた。

「向いてないのかも」とか、
「やっぱ無理だな」とか。

そうやって、理由をつけてやめていた。

でも今は——

「まぁ、まだダメか」

それだけで済んでいる。

終わりじゃない。

ただの“途中”。

その違いが、大きかった。

「ねぇ」

月菜が、ギターを鳴らす。

ジャラン——

「やる?」

その一言が、やけに自然だった。

「……今から?」

「うん」

即答。

迷いがない。

「こういうときにやるの、結構好きなんだよね」

少しだけ笑う。

その理由は、言わなくても分かる。

「……そうだな」

ギターを手に取る。

指を置く。

少しだけ、力が入る。

でも——

それでいい。

ジャラン——

音を鳴らす。

さっきより、少しだけ強い。

悔しさが、そのまま乗っている。

月菜の音が重なる。

リズムが合う。

音がぶつかる。

でも——

止まらない。

続ける。

ジャラン、ジャラン——

音が、前に出る。

さっきより、確実に。

「……ああ」

小さく息を吐く。

これだ。

選ばれなかったこと。

悔しかったこと。

全部、音に変わる。

それでいい。

それがいい。

演奏が終わる。

少しだけ荒い空気。

でも——

嫌じゃない。

むしろ、心地いい。

「……まだいけるな」

小さく呟く。

月菜が、少しだけ笑う。

「でしょ」

それだけ。

でも、その一言で十分だった。

選ばれなかった夜。

でも——

終わりじゃない。

むしろ——

「……始まってるな」

そう思えた。

見えない未来。

分からないまま。

それでも——

進める。

その理由が、ちゃんとある。

胸の奥に。

小さな灯りみたいに。

第四章:それぞれの未来

帰り道は、少しだけ冷たかった。

季節が変わり始めている。

風が、少しだけ鋭くなっている。

コツ、コツ。

足音が、夜に響く。

並んで歩く。

あの頃と同じ距離。

でも——

少しだけ、違う。

何も言わなくても、分かることが増えた。

言葉が、必要なくなった部分。

それが、心地よかった。

「ねぇ」

月菜が、ふいに口を開く。

いつもと同じトーン。

でも——

少しだけ、間があった。

「……ん?」

軽く返す。

「もしさ」

言葉を選ぶように、ゆっくり続ける。

「売れなかったらどうする?」

その問いは、軽くなかった。

でも、重すぎる言い方でもなかった。

ただ、そこに置かれた感じ。

“選択肢”として。

一瞬、足が止まりそうになる。

でも——

止まらない。

そのまま歩きながら、考える。

昔だったら、怖くて答えられなかった質問。

でも今は——

逃げる必要はない。

「……別に」

肩をすくめる。

少しだけ空を見上げる。

何も見えない。

星も、月も、雲の向こう。

でも——

それでいい。

「それでもやるだけだろ」

言葉にすると、やけにあっさりしていた。

でも——

中身は、軽くなかった。

本音だった。

結果が出るかどうかなんて、分からない。

成功する保証なんて、どこにもない。

でも——

それと、“やるかどうか”は別だ。

その感覚が、もう分かっていた。

月菜が、少しだけ黙る。

そして——

「そっか」

小さく頷く。

その表情は、いつもより少しだけ柔らかかった。

「私はね」

少しだけ間を置く。

その間に、風が通る。

「どこまで行けるか、見てみたい」

その言葉は、シンプルだった。

でも——

すごく深かった。

成功したい、とも。

売れたい、とも。

言っていない。

ただ——

“どこまで行けるか”。

その先を、見たい。

「……それってさ」

少しだけ笑う。

「終わりないやつじゃん」

「うん」

即答だった。

「終わりなくていい」

その言葉に、少しだけ息を吐く。

ああ——

やっぱり同じだ。

ゴールを決めてない。

正解も、用意してない。

ただ——

進んでいくこと自体が、意味になっている。

「……一緒だな」

小さく呟く。

月菜が、ちらっとこっちを見る。

「何が?」

「考えてること」

それだけ言う。

それで伝わる。

「そっか」

少しだけ笑う。

それ以上は聞かない。

分かってるから。

しばらく、沈黙。

でも——

嫌じゃない。

むしろ、落ち着く。

コツ、コツ。

足音が、重なる。

あの頃と同じ。

でも——

中身が違う。

何も見えてなかった頃。

ただ流れていた時間。

それとは違う。

今は——

見えてないまま、選んでいる。

その違いが、大きかった。

「……なぁ」

ふと、口を開く。

「もしさ」

言葉を探す。

少しだけ迷う。

「途中で、ダメになったらどうする?」

その問いは、自分でも意外だった。

少しだけ不安が混ざっている。

でも——

聞きたかった。

月菜が、少しだけ考える。

すぐには答えない。

その時間が、妙にリアルだった。

そして——

「そのときは、そのときでしょ」

そう言った。

軽く。

でも——

逃げていない。

「やめるかもしれないし、続けるかもしれない」

肩をすくめる。

「でも」

少しだけ、こっちを見る。

「今やめる理由にはならないよね」

その言葉に、少しだけ笑う。

確かに。

未来のことを理由に、今を止めるのは違う。

「……そうだな」

頷く。

それでいい。

全部決めなくていい。

全部分からなくていい。

ただ——

今、やるかどうか。

それだけ。

風が、少しだけ強く吹く。

前髪が揺れる。

少しだけ寒い。

でも——

嫌じゃない。

「ね」

月菜が、小さく言う。

「このまま行こ」

シンプルな言葉。

でも——

それで十分だった。

どこまで行けるかなんて、分からない。

でも——

行けるところまで行く。

それでいい。

コツ、コツ。

足音が、夜に響く。

見えない未来。

分からないまま。

それでも——

進む理由は、もうある。

胸の中に。

小さな灯りとして。

最終章:どこまでも続いていく

ライブの帰り道。

少しだけ遅い時間。

街の音が、静かに落ちていく。

コツ、コツ。

足音だけが、はっきりと残る。

並んで歩く。

あの頃と同じ距離。

でも——

同じじゃない。

確実に、何かが積み重なっている。

「ねぇ」

月菜が、ふいに口を開く。

その声に、少しだけ懐かしさを感じる。

「……ん?」

軽く返す。

「最初の頃さ」

少しだけ笑う。

「ほんとに何も見えてなかったよね」

その言葉に、思わず笑う。

「今も見えてないけどな」

そう返すと、月菜も笑う。

「確かに」

短い会話。

でも、それで十分だった。

沈黙が続く。

でも——

気まずさはない。

むしろ、落ち着く。

コツ、コツ。

足音が、リズムを刻む。

あの頃と同じ音。

でも——

中身が違う。

「でもさ」

月菜が、少しだけ前を見る。

「前よりは、怖くないでしょ」

その言葉に、少しだけ考える。

見えない未来。

分からないまま進むこと。

それは、何も変わっていない。

でも——

「ああ」

頷く。

「全然怖くない」

それは、本当だった。

見えないこと自体は、変わらない。

でも——

“見えないまま進める”ことを、知った。

それが、全部だった。

「なんでだと思う?」

月菜が、少しだけ振り返る。

試すような目。

でも、どこか優しい。

少しだけ考える。

そして——

「……灯りがあるからだろ」

自然と出た言葉だった。

自分でも、少しだけ驚く。

でも——

しっくりくる。

「見えないけど」

続ける。

「少し先くらいは、照らしてる」

全部は見えない。

でも、一歩分は見える。

それで、十分だった。

月菜が、少しだけ笑う。

「正解」

その一言に、少しだけ息を吐く。

ああ——

やっぱりそうなんだ。

間違ってない。

ここまで来た道も。

これから進む道も。

「ねぇ」

月菜が、少しだけ真面目な声になる。

「もしさ」

その言葉に、少しだけ意識が向く。

「この先、何も変わらなかったとしても」

少しだけ間を置く。

「それでも、進む?」

その問いは、静かだった。

でも——

深かった。

一瞬、考える。

未来。

変わらない景色。

成功しない可能性。

全部、頭をよぎる。

でも——

すぐに、答えは出た。

「……進むだろ」

迷いはなかった。

「ここまで来たしな」

それだけじゃない。

理由は、ちゃんとある。

「止まる理由がない」

それが、一番大きかった。

月菜が、少しだけ黙る。

そして——

小さく頷く。

「そっか」

その一言に、すべてが含まれている気がした。

それ以上は、何もいらない。

コツ、コツ。

足音が、また重なる。

夜の道。

街灯が、足元を照らしている。

その先は、暗い。

でも——

怖くない。

「……なぁ」

ふと、口を開く。

「どこまで行けると思う?」

少しだけ笑いながら聞く。

答えがない質問。

でも、聞きたくなった。

月菜が、少しだけ考える。

そして——

「分かんない」

即答。

でも——

その顔は、前を向いている。

「でも」

少しだけ、声を柔らかくする。

「分かんないから、いいんじゃない?」

その言葉に、少しだけ笑う。

ああ——

本当にそうだ。

全部分かってたら、面白くない。

見えないから、進める。

分からないから、選べる。

それが、この先も続いていく。

「じゃあさ」

小さく言う。

「行けるとこまで行くか」

「うん」

月菜が頷く。

それだけで、決まる。

どこまで行くかなんて、分からない。

成功するかも、分からない。

でも——

灯りはある。

小さくて、揺れていて、不確かで。

それでも——

確かに、ここにある。

それを持って、進む。

一歩ずつ。

何度でも。

何度でも。

コツ、コツ。

足音が、夜に溶けていく。

見えない未来。

終わりのない道。

それでも——

止まらない。

止まる理由がないから。

進む理由が、あるから。

胸の中に。

小さな灯火として。

どこまでも。

どこまでも。

~完~

また、他にも『Vaundy』の名曲を紹介しておりますので併せてご覧くださいρ(._.*)ρ

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