このページは別記事で描いたVaundyの『偉生人』という曲をモチーフにした、私の妄想ストーリーのプロポーズ篇ですφ(・ω・`)
元記事を読んでいない方は、元記事からご覧になっていただければ幸いです。ρ(._.*)ρ
それでは「偉生人 プロポーズ篇」(´っ・ω・)っすた~と
『偉生人』~プロポーズ篇~
第一章:少し先の未来
あれから、少しだけ時間が経った。
“少しだけ”という言葉では足りないくらいに、
いろんなことが変わっていた。
季節が一つ巡って、
街の色がゆっくり変わって、
空気の温度が少しだけ柔らかくなった頃。
でも、自分の中では、
それ以上の変化が起きていた。
朝、目が覚める。
前は、起きる理由がなかった。
ただ目が覚めて、
ただ時間が流れて、
気づけば夜になっているだけだった。
でも今は違う。
目が覚めた瞬間、
「今日もやるか」と思える。
それは特別なことじゃない。
でも、
“やろうと思える自分”がいることが、
何より大きかった。
カーテンを開ける。
光が差し込む。
その光を、
ちゃんと“朝”として受け取れる。
前は、ただ眩しいだけだったのに。
机に向かう。
ノートを開く。
ペンを持つ。
わからない。
でも、止まらない。
「……違うな」
小さく呟いて、また書き直す。
その繰り返し。
でも、それがちゃんと
“前に進んでいる”とわかる。
前の自分は、
“できない”を否定していた。
今の自分は、
“できない”を前提にしている。
その違いは、想像以上に大きかった。
ふと、手が止まる。
ペン先が紙に触れたまま、
思考だけが少し遠くに行く。
(……なんで、ここまで来れたんだろうな)
答えは、すぐに浮かぶ。
あの日。
全部が終わったと思った日。
何もできなくなって、
何もしたくなくなって、
それでも、完全には終われなかった日。
そして――
あの再会。
栞奈の顔が、静かに浮かぶ。
何かをしてくれたわけじゃない。
正しいことを言ってくれたわけでもない。
でも。
“そこにいた”。
逃げずに。
押しつけずに。
ただ、隣に。
それだけだった。
でも、それがなかったら、
今の自分はここにいない。
それだけは、はっきりしている。
「……借りっぱなしだな」
小さく笑う。
返さないといけないとは思っていない。
でも、このままじゃ終われないとも思っていた。
“もらったものを、どう使うか”。
それが、今の自分の中で
一番大きなテーマだった。
立ち上がる。
窓の外を見る。
夕方に差し掛かる空。
オレンジと青が溶け合う、
あの曖昧な時間。
あのときと同じ景色。
でも、見え方はまったく違う。
あのときは、遠かった。
手の届かない場所みたいに感じていた。
でも今は違う。
ちゃんと、
“ここから続いている空”に見える。
それだけで、少しだけ安心できた。
スマホに手を伸ばす。
画面に表示される名前。
「栞奈」
その二文字だけで、
少しだけ呼吸が整う。
不思議な感覚だった。
何かしてくれるわけじゃないのに、
ただいるだけで、
自分がちゃんと“戻ってくる”。
(……そろそろか)
自然と、そう思う。
理由は説明できない。
でも、
“今なら言える”という確信だけがあった。
昔みたいに、勢いじゃない。
逃げ場でもない。
依存でもない。
ちゃんと、自分で立った上で。
それでも、隣にいてほしいと思えた。
それが、答えだった。
「……よし」
小さく呟いて、歩き出す。
あの場所へ。
“終わりかけた自分”が、
“もう一度始まった場所”へ。
第二章:選んだ場所
歩きながら、少しだけ息を整える。
特別なことをするつもりはなかった。
夜景の見える場所も、
予約のいる店も、
頭には浮かばなかった。
“そういう形じゃない”と思ったからだ。
この気持ちは、
演出で伝えるものじゃない。
積み重ねてきた時間と、
変わってきた自分と、
ここまで続いてきた流れの中でしか、意味を持たない。
だから。
気づけば足は、
あの道へ向かっていた。
あの帰り道。
初めて、ちゃんと本音を出した場所。
栞奈が、
“逃げなくていい”空気をくれた場所。
自分が、
“もう一回やってみよう”と口にできた場所。
すべての始まりが、そこにある。
(結局、ここなんだな)
小さく笑う。
遠くに行く必要なんてなかった。
特別な場所なんて、いらなかった。
最初から、
全部ここにあった。
街灯が、ひとつ、またひとつと灯っていく。
昼と夜の境目。
あのときと同じ時間。
でも。
今の自分は、あのときとは違う。
止まっていない。
逃げていない。
ちゃんと、
“続きの上に立っている”。
それだけで、十分だった。
ポケットの中で、スマホが震える。
取り出して画面を見る。
「着いた」
短いメッセージ。
それだけ。
余計な言葉は、何もない。
思わず、少しだけ笑う。
(相変わらずだな)
でも、それがいいと思った。
飾らないところも、
余白のあるところも、
全部、変わっていない。
視線を上げる。
少し先。
街灯の下に、栞奈が立っている。
あのときと、同じ場所。
同じ距離。
でも。
見え方は、まったく違った。
「待った?」
近づきながら、声をかける。
「いや、今来たとこ」
いつも通りの返事。
いつも通りの距離感。
それだけで、
少しだけ緊張がほどける。
並んで歩き出す。
何気ない会話。
今日あったこと。
最近のこと。
どうでもいい話。
どれも特別じゃない。
でも、その“普通”が、
やけに大事に感じる。
(これでいいんだよな)
ふと、思う。
特別な瞬間じゃなくていい。
こうやって、
隣にいられる時間。
それだけでよかった。
しばらく歩く。
言葉が途切れる。
沈黙が落ちる。
でも、気まずくはなかった。
むしろ、その静けさが、
少しだけ背中を押してくる。
(……ここだな)
自然と、足が止まる。
あのときと同じ場所。
少しだけ暗くて、
少しだけ静かで、
でも、ちゃんと灯りが届く場所。
振り向く。
栞奈も、足を止める。
視線が合う。
逃げていない。
あのときと同じようで、
でも、少しだけ違う。
“待っている”視線。
(ああ)
胸の奥で、何かが整う。
この人は、
ちゃんと向き合ってくれる。
だから、自分も逃げなくていい。
「今日さ」
声を出す。
少しだけ、喉が乾く。
でも、言葉は止まらない。
「ちょっと、いい?」
確認するように言う。
逃げ道を残すためじゃない。
“今から話す”と、ちゃんと伝えるために。
栞奈が、静かに頷く。
それだけで、覚悟が決まる。
(ここまで来たら、もういい)
うまく言おうとしなくていい。
かっこつけなくていい。
今の自分のまま、
そのまま伝えればいい。
それで届かなかったら、
それまでだ。
でも。
届く気がした。
ここまで来れた自分と、
ここまで一緒に来てくれたこの人なら。
一度、息を吸う。
夜の空気が、胸に入る。
そして――
言葉を、選ばずに出す。
第三章:言葉にする理由
一度、息を吸う。
夜の空気が、少しだけ冷たい。
胸の奥まで、ゆっくりと入ってくる。
その感覚が、
少しだけ気持ちを整えてくれる。
「俺さ」
言葉が出る。
止まらない。
昔みたいに、
途中で濁すことも、
逃げることもない。
「まだ全然途中でさ」
正直に言う。
飾らない。
今の自分を、そのまま置く。
「足りないし、
うまくいかないこともあるし」
一つずつ、確かめるように言葉にする。
それは、弱さの告白じゃない。
ただの事実だった。
その事実を、
ちゃんと受け入れられていることが、
少しだけ嬉しかった。
「でも」
言葉を、続ける。
ここからが、本当に言いたいことだった。
「それでも、やめないでやっていこうと思ってる」
声は静かだった。
でも、芯があった。
逃げていない。
それだけは、はっきりしていた。
視線を上げる。
栞奈が、まっすぐ見ている。
その視線に、揺れはない。
ただ、
“ちゃんと聞いている”という強さだけがある。
「前さ」
少しだけ、笑う。
自嘲でもなく、
照れでもなく、
ただ過去を受け入れた笑い。
「俺、一回ダメになったじゃん」
その言葉を、軽く言えるようになったことが、
何よりの変化だった。
あのときは、
思い出すだけで苦しかった。
でも今は違う。
“通ってきた場所”として、
ちゃんと扱えている。
「正直さ」
少しだけ視線を落とす。
でも、逃げない。
「終わったと思ってた」
自分も。
未来も。
あのときは、
何も見えなかった。
「でも」
ゆっくりと顔を上げる。
「戻れた」
短く言う。
それ以上でも、それ以下でもない。
ただ、それが残った。
少しだけ、間が空く。
その沈黙が、
言葉をしっかりとそこに置いてくれる。
「そのときさ」
声が、少しだけ柔らかくなる。
「隣にいたの、栞奈だった」
視線は外さない。
ごまかさない。
それは、
感謝でもなく、
美化でもなく、
ただの事実だった。
でも、
一番大きな事実だった。
「何かしてくれたわけじゃない」
正直に言う。
でも、それが本質だった。
「でも」
言葉を探す。
少しだけ、時間がかかる。
でも、その時間も含めて、今の自分だった。
「ちゃんと、そこにいた」
それだけ。
でも、それが全部だった。
あのときの自分に必要だったのは、
正しい言葉でも、
救いでもなくて、
“逃げなくていい場所”だった。
それをくれたのが、この人だった。
「だからさ」
一歩、近づく。
距離が、少しだけ縮まる。
心臓が、少し強く鳴る。
でも、怖くはなかった。
ちゃんとここにいる感覚だけがあった。
「一人でもやれると思う」
正直に言う。
もう、前みたいに、
誰かがいないと立てない状態じゃない。
ちゃんと、自分で立てる。
それは、わかっている。
「でも」
そのあとに続く言葉こそが、
本当の理由だった。
「それでも、隣にいてほしいと思った」
声は、少しだけ静かになる。
でも、揺れていない。
「いないとダメだからじゃない」
はっきりと言う。
依存じゃない。
逃げでもない。
「一緒に進みたいと思ったから」
それが、今の自分の答えだった。
沈黙が落ちる。
でも、怖くなかった。
逃げていないから。
全部、ちゃんと出し切ったから。
(ああ、これでいい)
心の中で、静かに思う。
うまく言えたかどうかじゃない。
“ちゃんと本音で言えたかどうか”。
それが、一番大事だった。
そして今、それはできた。
だから――
あとは、委ねるだけ。
視線を外さない。
待つ。
逃げずに。
その時間すら、
ちゃんと受け入れる。
それが、今の自分だった。
最終章:それでも、隣を選ぶ
沈黙が落ちる。
夜の空気が、少しだけ冷たい。
でも、その冷たさが、
意識をはっきりさせてくれる。
何も言わない時間。
でも、その中にあるものは、空白じゃない。
これまでの時間。
歩いてきた道。
交わしてきた言葉。
全部が、この一瞬に重なっている。
栞奈は、すぐには答えなかった。
視線を少しだけ落として、
何かを確かめるように、静かに息を吐く。
その仕草を見て、思う。
(ちゃんと考えてる)
逃げていない。
ごまかしていない。
それだけで、十分だった。
“すぐに答えが出ないこと”が、
不安じゃなくなっている自分に気づく。
昔だったら、
ここで怖くなっていた。
沈黙に耐えられず、
何かを言ってしまっていた。
でも今は違う。
“待てる”。
それが、一番大きな変化だった。
やがて、栞奈が顔を上げる。
視線が合う。
あのときと同じ。
でも、少しだけ違う。
“決めた人の目”をしている。
「……さ」
静かに、言葉が始まる。
「ずっと思ってたんだよね」
少しだけ笑う。
懐かしさと、
少しの照れと、
いろんな感情が混ざった笑い方。
「この人、絶対どっかで落ちるなって」
思わず、苦笑する。
否定できない。
むしろ、納得してしまう。
「で、実際落ちて」
少しだけ間を置く。
「でも、ちゃんと戻ってきた」
その言葉が、胸の奥に静かに届く。
評価でも、褒めでもない。
ただ、“見ていた人の言葉”。
それが、一番重かった。
「正直さ」
声が、少しだけ柔らかくなる。
「嬉しかったよ」
その一言に、息が止まる。
(ああ)
やっと届いた気がした。
「ちゃんと、自分で戻ってきたなって思った」
ゆっくりと、言葉が重なっていく。
「前みたいに無理してる感じじゃなくてさ」
「ちゃんと悩んで、ちゃんと進んでる感じ」
それは、
一番欲しかった言葉だった。
“変わったこと”を、
ちゃんと見てくれている人の言葉。
それが、どれだけ大きいか、
今ならわかる。
「だから」
一歩、近づく。
距離が、自然と縮まる。
「さっきの答えなんだけど」
少しだけ、呼吸が速くなる。
でも、目は逸らさない。
逃げない。
「いいと思う」
シンプルな言葉。
でも、その中にある意味は深かった。
「一緒に進むっていうの」
「完成してからじゃなくてさ」
少しだけ笑う。
「途中のままでいいっていうの」
あのときと同じ言葉。
でも今は、“選択”としての言葉。
「私も、そっちがいい」
はっきりと。
迷いなく。
その一言で、
胸の奥の何かがほどけていく。
(ああ)
やっと、同じ場所に立てた。
そう思えた。
「だから」
少しだけ、照れたように笑って。
「よろしく」
それだけだった。
でも、それが一番自然だった。
ふと、手が触れる。
今度は、どちらからでもなく。
自然に、重なる。
離さない。
でも、強く握りすぎない。
ちょうどいい力。
ちょうどいい距離。
それが、今の2人だった。
夜風が、静かに吹く。
街の灯りが、ゆっくりと広がっていく。
未来は、まだ全部は見えない。
でも。
少し先くらいなら、ちゃんと見える。
その先に、この人がいることも、
なんとなくわかる。
「……ああ、もう疲れたな」
思わず、同じ言葉が出る。
でも、その意味は違う。
逃げじゃない。
ただの本音。
栞奈が、少しだけ笑う。
「でしょ」
その返しに、また少し笑う。
「でも」
自然に、言葉が続く。
「まだやれる」
強がりじゃない。
確信でもない。
ただ、“そう思える状態”。
それで、十分だった。
隣を見る。
栞奈がいる。
それだけで、もう大丈夫だと思えた。
特別じゃなくていい。
完璧じゃなくていい。
足りないままでいい。
それでも――
隣を選び続けること。
それが、この2人の答えだった。
「――もう、笑っていこうぜ」
小さく呟く。
それは、
過去の自分への言葉であり、
今の自分への言葉であり、
これからの2人への約束だった。
~完~
他にも『Vaundy』の名曲を紹介しておりますので併せてご覧くださいρ(._.*)ρ







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