本日ご紹介するのは、『Vaundy(バウンディ)』のナンバーから
『しわあわせ』【作詞・作曲:Vaundy】
歌詞全文はこちらのリンクから→https://www.uta-net.com/song/300775/
「しわあわせ」は、2021年4月11日に配信限定シングルとしてリリースされた楽曲で、首都医校・大阪医専・名古屋医専の2021年度 TVCMソング、ジャックスの2023年 ブランドCMソング、そして映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』の主題歌として採用されている。
以下に歌詞の意味を詳細に解説します。(´っ・ω・)っすた~と
この曲は、一見するとラブソングですが、その本質は「人生の終わりを知っているからこそ、今この瞬間を愛する」という、生と時間をテーマにした楽曲**です。
タイトルの**「しわあわせ」**は、
- 幸せ(しあわせ)
- 皺(しわ)を合わせる
- 手のひらを合わせる
- 人生を重ねる
という複数の意味を持つ、Vaundyらしい言葉遊びになっています。
ここでは歌詞を一節ずつ詳しく解説していきます。
タイトル「しわあわせ」
まず、この曲で最も重要なのがタイトルです。
普通なら「幸せ」と書くところを、
「しわあわせ」
と表現しています。
「しわ」は、
- 手のしわ
- 顔のしわ
- 年齢を重ねてできるしわ
を意味しています。
つまり、
「一緒に歳を重ねることそのものが幸せ」
という考え方なのです。
若さや美しさではなく、
何十年も一緒に笑って、
泣いて、
支え合って、
最後には同じだけしわが増えている。
それこそが本当の幸せだと言っています。
「僕の時価総額400円の心臓と」
これは非常に印象的な歌詞です。
普通、人間の命は値段では測れません。
それなのに、
主人公は
「自分の心臓は400円程度の価値しかない」
と言っています。
これは
- 自己肯定感の低さ
- 自分には価値がないと思っている
- 自分を安く見積もってしまう人間
を表しています。
社会に出ると、
収入
肩書き
能力
結果
で自分を評価してしまう人は少なくありません。
主人公もその一人です。
「絵に描いたような君の綺麗な心臓を」
対照的に、
君は純粋です。
綺麗な心。
優しい心。
透明な心。
主人公は、
そんな君を理想の存在として見ています。
つまり
自分=価値の低い存在
君=価値のある存在
という対比になっています。
「合わせてできたしわの数が 僕達の未来の価値だ」
ここがこの曲最大のメッセージです。
普通なら
未来の価値は
- お金
- 家
- 地位
- 子ども
- 成功
で測られそうです。
でもVaundyは違います。
二人が
笑い
泣き
喧嘩し
許し合い
生きて
年を重ね
できた
“しわ”
こそが未来の価値だと言います。
つまり
人生は成果ではなく、一緒に過ごした時間で価値が決まる。
ということです。
「残された時間が少ないのなら」
ここから歌詞は少し重くなります。
この曲には
“死”
を連想させる表現が何度も出てきます。
残された時間。
崩れていく時間。
つまり
人生には終わりがある。
だからこそ、
今この時間を大切にしようと言っています。
「零さないようにあわせて」
ここも非常に美しい表現です。
零れるものは
時間
涙
思い出
命
全部です。
だから
手を合わせて
心を合わせて
歩幅を合わせて
一秒も無駄にしないように
一緒に生きよう。
そんな意味になります。
「変わらない 変われないよ」
恋愛では、
人は必ず変わります。
見た目も。
環境も。
価値観も。
でも、
好きという気持ちだけは変わらない。
変われない。
それほど深い愛情を表しています。
「しっかり握っている」
握っているのは
もちろん手です。
しかし、
本当に握っているのは
人生そのものです。
君を離さない。
時間を離さない。
思い出を離さない。
という意味にも聞こえます。
「僕の一生分なり続けている心拍」
心拍とは
生きている証。
一生鳴り続ける鼓動です。
主人公は
自分の鼓動と
君の鼓動を
“合わせる”
と言います。
これは
人生を共有すること。
同じ時間を生きること。
を表しています。
「合わせてできた波の数だけ」
鼓動は波形になります。
心電図も波です。
海も波です。
人生も波があります。
嬉しい日。
悲しい日。
全部合わせて、
二人は揺らめいてきた。
人生そのものを波として描いています。
「重なるひび」
ここは最も解釈が分かれる部分です。
「ひび」は
日々
でもあり、
罅(ひび=ひび割れ)
でもあります。
つまり
毎日を重ねること。
そして、
心に傷ができること。
どちらも表しています。
人生には
喧嘩もある。
病気もある。
別れもある。
その全部を
二人で重ねていく。
「流るるひび」
時間は流れます。
思い出も流れます。
悲しみも流れます。
楽しかったことも、
いつか忘れてしまう。
人間の記憶は永遠ではありません。
「思い出すこともなくなってしまうんだろ」
これがこの曲最大の切なさです。
どんなに幸せでも、
何十年後には
今日笑ったことすら
思い出せなくなるかもしれない。
認知症なのかもしれない。
老いなのかもしれない。
あるいは死なのかもしれない。
だから今を生きよう。
というメッセージになります。
「そんな しわあわせで」
ここでタイトル回収です。
全部忘れてしまっても、
手にはしわが残ります。
顔には笑いじわが残ります。
それは
人生を一緒に歩いた証。
だから
しわ=幸せ
になるのです。
「君の見てる方へと」
恋愛では
相手の景色を見ることが大切です。
君の夢。
君の未来。
君の世界。
そこへ一緒に歩いていく。
“僕について来て”
ではありません。
“君の見ている方向へ”
なのです。
この優しさがVaundyらしい表現です。
「やるせない夢が覚めた頃に また、しわをあわせて」
夢は終わります。
青春も終わります。
恋も落ち着きます。
若さも終わります。
それでも、
また手を合わせよう。
また笑おう。
また一緒に年を取ろう。
という、
人生そのものへのプロポーズのような一節です。
この曲全体が伝えたいこと
この曲は、「永遠の愛」を歌っているようでいて、実際には**「永遠ではないからこそ尊い愛」**を描いています。
若さや美しさ、成功やお金ではなく、二人が同じ時間を生き、手をつなぎ、笑い、涙を流しながら刻んだ「しわ」こそが人生の財産だという考え方です。
歌詞の中では何度も「合わせる」という言葉が登場します。
- 心臓を合わせる
- 心拍を合わせる
- 手を合わせる
- 時間を合わせる
- 歩幅を合わせる
- しわを合わせる
「合わせる」という行為は、相手に自分を無理に合わせるという意味ではありません。
互いを受け入れながら、一緒に生きること。
それがこの曲の本当のテーマです。
だから最後には、「幸せになろう」ではなく、「また、しわをあわせて」と締めくくられます。
「また手を重ねよう。」
「また人生を重ねよう。」
「また笑いじわを増やそう。」
そんな静かで温かな願いが、この一言には込められています。
だから「しわあわせ」は、恋愛だけを描いた曲ではなく、人生をともに歩むことの尊さを、優しく繊細に歌い上げたラブソングだと言えるでしょう。
以上私なりの歌詞の意味考察でした。
続きまして、この曲を聴いて膨れ上がった私の妄想ストーリ(歌詞解釈)をチラッとお見せいたします
|ω・)チラッ
『しわあわせ』

第一章 四百円の心臓

「またサービス残業?」
コンビニから出てきた同僚が苦笑いした。
「うん。」
春樹は笑った。
笑ったつもりだった。
二十七歳。
広告会社勤務。
朝七時に家を出て、終電で帰る。
部屋には寝に帰るだけ。
恋人もいない。
趣味もない。
夢もない。
毎日心臓だけが動いている。
ある日、昼休みにネットニュースを眺めていた。
「人工心臓の研究費、一個数百万円」
その記事を見ながら春樹は独り言を漏らした。
「俺の心臓なんて……四百円くらいだろ。」
誰にも必要とされない。
替えの利く人間。
自分には価値なんてない。
そう思っていた。
その日の帰り道。
駅前の小さな花屋の前で、一人の女性が困っていた。
風で花束が全部道路へ散ってしまったのだ。
赤いガーベラ。
白いカスミソウ。
青いデルフィニウム。
春樹は何も考えず走った。
車が来る前に花を拾う。
「ありがとうございます!」
その女性は、満開の桜みたいに笑った。
「助かりました。」
その笑顔を見た瞬間。
春樹は初めて、自分の心臓が大きく鳴る音を聞いた。
彼女の名前は
美波(みなみ)。
花屋で働く二十五歳だった。
翌日。
また同じ時間。
春樹は無意識に花屋の前を歩いていた。
「あ。」
美波が気づく。
「昨日はありがとうございました。」
「いや…たまたま。」
「お礼。」
そう言って渡されたのは一本の白いマーガレット。
「え?」
「花って、もらうと少しだけ元気になります。」
春樹は照れくさく笑った。
人生で初めて花を受け取った。
部屋に帰る。
ペットボトルを切って花瓶代わりにする。
たった一本。
それだけなのに。
殺風景だった部屋が少しだけ明るく見えた。
それから毎週。
仕事帰りに花屋へ寄るようになった。
「今日はどんな花がおすすめ?」
「今日は向日葵です。」
「まだ夏じゃないのに?」
「だからです。」
美波は笑う。
「季節を少し先取りすると、毎日が楽しみになるんです。」
春樹にはその発想がなかった。
仕事。
寝る。
起きる。
その繰り返ししか知らなかった。
美波は世界の見え方を少しずつ変えていく。
ある休日。
二人は植物園へ出かけた。
バラ園。
温室。
睡蓮の池。
美波は花を見るたび立ち止まる。
「この花ね。」
「うん。」
「枯れるから綺麗なんだよ。」
春樹は首をかしげた。
「ずっと咲いてた方がいいじゃん。」
「違うの。」
美波は小さく笑った。
「終わりがあるから、今日を大事にできる。」
その言葉は胸の奥へ静かに沈んだ。
夕方。
公園のベンチ。
沈む夕日。
二人並んで缶コーヒーを飲んでいた。
美波が突然聞く。
「春樹さん。」
「ん?」
「自分のこと好き?」
春樹は苦笑した。
「全然。」
「どうして?」
「価値ないから。」
少し沈黙。
美波は春樹の左胸を軽く指でつついた。
「ここ。」
「え?」
「今日も一日頑張って動いてた。」
「……」
「そんな心臓が価値ないわけない。」
春樹は何も言えなかった。
「値段なんて誰が決めるの?」
「……。」
「私はね。」
彼女は少し照れながら笑った。
「春樹さんの心臓、世界一高いと思う。」
その瞬間。
胸の奥で何かが音を立てて崩れた。
ずっと積み上げてきた自己否定が、
春の雪みたいに静かに溶けていった。
帰り道。
歩幅を合わせながら歩く。
駅前の横断歩道。
信号が点滅する。
「急ごう!」
美波が手を伸ばした。
春樹は反射的にその手を握る。
細くて、
少し冷たくて、
でも確かに温かい手だった。
ほんの数秒。
信号を渡るだけの時間。
それだけなのに、
春樹は胸の鼓動が止まらなかった。
手を離したあとも、
その温もりだけは、いつまでも掌に残っていた。
そして春樹は、初めて思う。
「もし、この人と年を重ねられるなら。」
笑った数だけ、
泣いた数だけ、
二人の顔に刻まれる”しわ”は、
きっと幸せの証になるのだろう。
そんな未来を、
少しだけ信じてみたくなった。
第二章 心拍の重なる音

春が終わり、街は少しずつ初夏の匂いへ変わっていった。
花屋の店先にはマーガレットが姿を消し、代わりに紫陽花が並び始める。
雨の日が増えた。
それでも春樹は仕事帰りに必ず花屋へ立ち寄った。
店のドアを開けると、鈴の音が鳴る。
「いらっしゃい……あ。」
美波が笑う。
「今日も来た。」
「今日も来た。」
二人は同時に笑ってしまう。
それだけで一日の疲れが半分ほど消えてしまう気がした。
ある雨の日。
店は暇だった。
「閉店まであと三十分か。」
春樹が呟く。
美波は店の奥から二つの紙コップを持ってきた。
「コーヒー飲む?」
「いいの?」
「うん。」
二人は店先の椅子に腰掛ける。
ガラス越しに雨粒が流れていく。
「雨って嫌い?」
美波が聞く。
「昔は嫌いだった。」
「今は?」
「今は……。」
春樹は窓の外を見る。
「ここに来る理由になるから。」
美波は吹き出した。
「それ、ずるい。」
頬を赤くしながら笑う顔が、春樹には眩しかった。
六月。
休日。
二人は海へ出かけた。
観光地ではない、小さな港町。
波は穏やかで、人も少ない。
堤防に並んで座る。
潮風が心地いい。
「聞こえる?」
美波が目を閉じる。
「何が?」
「波。」
春樹も耳を澄ませる。
ザァ……
ザァ……
「人の心臓もね。」
美波が静かに言う。
「ずっと波みたいなんだって。」
「波?」
「嬉しいと速くなって、悲しいと静かになる。」
春樹は胸に手を当てた。
確かに、美波の隣では鼓動が少し速い。
「今も?」
「うん。」
「どうして?」
美波は照れくさそうに笑った。
「春樹さんの隣だから。」
その一言で、春樹の鼓動はさらに速くなった。
「ほら。」
美波は笑う。
「今、同じ速さになった。」
二人は顔を見合わせる。
まるで本当に心拍が重なったようだった。
その帰り道。
古びた写真館を見つけた。
店先には
『夫婦写真、記念撮影』
という看板。
「入ってみる?」
美波が言う。
「いやいや。」
「恋人でも撮れるって。」
結局、二人は並んで写真を撮った。
ぎこちなく笑う春樹。
自然に笑う美波。
数日後。
出来上がった写真を受け取る。
「わ。」
春樹は驚いた。
写真の二人は、本当に幸せそうだった。
「私、この写真好き。」
美波は宝物を見るように言った。
「歳を取ってからも見たいな。」
「……。」
「しわだらけになって。」
春樹は笑う。
「その頃には俺、もっとおじいちゃんだぞ。」
「私もおばあちゃん。」
「想像つかないな。」
「きっと。」
美波は春樹の手を握った。
「今よりもっと笑ってる。」
七月。
会社で健康診断があった。
翌週。
美波は病院へ向かっていた。
半年前から受けていた精密検査の日だった。
診察室。
医師は静かにカルテを閉じる。
「美波さん。」
「はい。」
「病気が進行しています。」
言葉が止まる。
「心筋症です。」
「……。」
「薬では抑えられなくなっています。」
静かな診察室。
時計の秒針だけが響く。
「あと……どれくらいですか。」
医師は少し間を置いた。
「個人差はありますが……数年です。」
世界の音が消えた。
美波は泣かなかった。
ただ、小さく頷いた。
その夜。
春樹は花屋へ向かった。
「こんばんは。」
いつも通りの笑顔。
でも、どこか少しだけ疲れて見えた。
「今日ね。」
美波はヒマワリを一本持ち上げる。
「元気が出る花なんだって。」
「そうなんだ。」
「だから春樹さんに。」
「ありがとう。」
春樹は受け取った。
その手が少し冷たいことには気付かなかった。
美波は胸の奥で思う。
この人には、まだ言えない。
“残された時間が少ない”なんて。
“未来が少し短い”なんて。
だから今日も笑う。
いつも通りに。
その笑顔の裏で、
静かに胸を押さえながら。
そして帰り道、一人になった美波は夜空を見上げ、小さく呟いた。
「お願い……。」
「この人と過ごす時間だけは、どうか零れていきませんように。」
その願いは、夏の夜風に乗って静かに空へ消えていった。
第三章 零れないように

八月。
蝉の声が街中に響いていた。
花屋の前には色鮮やかな向日葵が並び、強い日差しを浴びて空へ向かって咲いている。
「夏祭り、一緒に行かない?」
閉店後、美波が少し照れながら言った。
春樹は思わず笑う。
「もちろん。」
その一言だけで、美波の表情はぱっと明るくなった。
祭り当日。
美波は淡い水色の浴衣を着て待っていた。
髪をひとつにまとめ、小さな白い朝顔の髪飾りをつけている。
「待った?」
「いや。」
春樹は一瞬、言葉を失った。
「……似合ってる。」
その一言で、美波は少しだけ頬を染める。
「ありがとう。」
二人は並んで屋台を歩く。
焼きそば。
たこ焼き。
りんご飴。
金魚すくい。
どこへ行っても笑い声が絶えなかった。
「春樹さん!」
射的屋の前で美波が子どものようにはしゃぐ。
「勝負しよ!」
結果は、美波が三個。
春樹は一個。
「勝った!」
景品でもらった小さなクマのぬいぐるみを、美波は大事そうに抱えた。
「これ、名前つけようかな。」
「名前?」
「うん。」
少し考えて、
「”はる”にする。」
「え?」
「春樹さんが取ってくれたから。」
「俺、一個しか倒してないけど。」
「その一個がこれだったんだもん。」
春樹は照れ隠しに笑った。
夜。
川辺で花火が始まる。
ドン──
大輪の花が夜空に咲く。
「綺麗……。」
美波は花火を見上げたまま呟く。
その横顔を春樹は見つめていた。
花火よりも美波の笑顔の方が綺麗だと思ってしまう。
「ねぇ。」
「ん?」
「来年も来ようね。」
「もちろん。」
「再来年も。」
「うん。」
「十年後も。」
「当たり前だ。」
その言葉を聞いた美波は、小さく笑った。
でも、その瞳は少しだけ揺れていた。
突然だった。
ドン、と大きな花火が上がった直後。
美波の手からりんご飴が落ちた。
「美波?」
顔色が真っ白だった。
呼吸が浅い。
その場に崩れ落ちる。
「美波!」
春樹は慌てて抱き起こした。
「大丈夫……。」
そう言う声は震えていた。
救急車のサイレンが夏祭りの音を切り裂く。
病院。
診察室の外。
春樹は何時間も椅子に座っていた。
やっと医師が現れる。
「ご家族ですか?」
「……いえ。」
「では、ご本人から聞いてください。」
その言葉に違和感を覚えた。
病室。
美波は笑っていた。
「ごめんね。」
「何があった?」
沈黙。
長い沈黙。
そして、美波は静かに言った。
「私ね。」
胸に手を当てる。
「心臓が少しだけ壊れてるの。」
春樹は言葉を失った。
「前から?」
「うん。」
「いつから?」
「高校生の頃。」
「……。」
「治らない。」
部屋の時計だけが時を刻む。
「あと何年かも分からない。」
その言葉が胸に突き刺さった。
春樹は病室を飛び出した。
廊下を歩く。
息が苦しい。
頭が真っ白になる。
エレベーターの前で立ち止まり、
拳を強く握った。
「なんで……。」
どうして。
どうして美波なんだ。
どうして優しい人ばかり苦しまなきゃいけない。
涙が止まらない。
その夜。
病院の屋上で一人泣いた。
初めて声を上げて泣いた。
翌朝。
病室のドアを開ける。
美波は窓から朝日を見ていた。
「おはよう。」
まるで昨日のことが嘘だったかのように笑う。
春樹は何も言わず近づいた。
そして、
そっと右手を差し出す。
美波もゆっくり手を重ねる。
春樹はその手を両手で包み込んだ。
「離さない。」
「……。」
「絶対に。」
美波は涙をこらえながら笑う。
「ありがとう。」
「時間が少ないなら。」
春樹は涙を流しながら続けた。
「その時間を世界一幸せにする。」
「……。」
「一年でも。」
「十年でも。」
「一日でも。」
「全部、笑おう。」
美波の涙が一粒、春樹の手の甲に落ちた。
「そんなこと言われたら……。」
笑いながら泣く。
「もっと生きたくなるじゃん。」
春樹は頷いた。
「生きよう。」
「二人で。」
病室の窓から朝日が差し込む。
二人の重なった手を、やさしく照らしていた。
その手には、まだしわはほとんどなかった。
それでも春樹は願う。
いつか、この手にたくさんのしわが刻まれる未来が来ますように。
そう信じながら、二人はもう一度、強く手を握り合った。
第四章 やりたいことノート

病院を退院した翌日。
春樹は仕事へ向かった。
しかし、パソコンを開いても画面が頭に入らない。
企画書を書いていても、美波の笑顔ばかり浮かぶ。
“あと何年か分からない”
その言葉が耳から離れなかった。
昼休み。
春樹は屋上へ上がる。
夏の空はどこまでも青かった。
ポケットからスマートフォンを取り出す。
美波から一通のメッセージが届いていた。
『今日も空がきれいだよ。』
写真には、大きな入道雲が写っている。
その一言だけで、春樹は少しだけ笑えた。
その日の夜。
春樹は花屋へ向かった。
店は閉まっていた。
裏口から美波が顔を出す。
「どうしたの?」
春樹は一冊のノートを差し出した。
表紙には何も書いていない。
真っ白なノート。
「交換日記?」
美波が笑う。
「違う。」
春樹は首を振る。
「やりたいことノート。」
「え?」
「残された時間なんて考えない。」
ページを開く。
一ページ目に大きく書かれていた。
“二人でやりたいこと100個”
美波は目を丸くした。
「百個も?」
「足りないくらい。」
「無理だよ。」
「全部やる。」
春樹は真っ直ぐ言った。
「一個ずつ。」
最初に書いたのは、
朝日を見に行く。
翌朝四時。
まだ薄暗い海岸。
誰もいない砂浜。
波だけが静かに打ち寄せていた。
水平線からゆっくり太陽が顔を出す。
オレンジ色の光が海を照らした。
「綺麗。」
美波は小さく呟く。
春樹はその横顔を見つめていた。
「朝日より見てるじゃん。」
「見てる。」
「なんで?」
「朝日は毎日昇るけど。」
少し照れながら言う。
「美波と見る今日の朝日は、一回しかない。」
美波は何も言えなかった。
涙がこぼれそうになる。
二つ目。
大きな向日葵畑へ行く。
一面黄色。
青空との境界が分からないほど広い。
「すごい!」
美波は子どものように走り出した。
「待って!」
春樹も追いかける。
向日葵の迷路。
風が吹く。
花が揺れる。
笑い声が広がる。
「写真撮ろ!」
二人は自撮りをした。
変顔もした。
何枚も撮った。
「見せて。」
「やだ。」
「なんで?」
「全部笑いすぎ。」
「それがいいじゃん。」
その日だけで百枚以上写真を撮った。
三つ目。
流れ星を見る。
山の展望台。
夜中。
毛布を並べて寝転ぶ。
「寒い?」
「少し。」
春樹は自分の上着をかける。
星が降るような空。
「お願い事した?」
「うん。」
「何?」
「秘密。」
「教えてよ。」
「じゃあ春樹さんは?」
春樹は少しだけ笑った。
「同じ。」
「え?」
「美波が長生きしますように。」
その瞬間。
美波の涙が止まらなくなった。
「そんな願い事……。」
「毎日する。」
「叶わないかもしれない。」
「それでもする。」
「……。」
「一万回でも。」
美波は泣きながら笑った。
秋になる頃。
ノートは半分ほど埋まっていた。
・紅葉を見に行く。
・栗ご飯を作る。
・動物園でペンギンを見る。
・夜景を見る。
・温泉旅行。
・一緒にケーキを焼く。
・雪だるまを作る。
・初日の出を見る。
ページをめくるたび、
写真やチケットが貼られていく。
レシートまで残していた。
「こんなの貼る?」
「思い出だから。」
春樹は笑う。
「百年後には全部宝物。」
「百年後?」
「俺らはいないけど。」
「ふふ。」
「誰かが見たら笑うかな。」
美波は静かに首を振る。
「笑わないよ。」
ノートを優しく撫でる。
「これ全部。」
「私たちが生きた証。」
ある夜。
美波は眠った春樹の横顔を見つめていた。
疲れ果ててソファで寝てしまったのだ。
仕事を終え、
毎日病院へ来て、
休日は一緒に出かける。
無理をしていることくらい分かっていた。
美波はそっと春樹の右手を握る。
働き続けて少し硬くなった手。
少しだけ乾燥した指先。
その掌に、自分の掌を重ねる。
「少しだけ……。」
小さく笑う。
「しわ、増えたね。」
春樹は目を覚ます。
「ん?」
「見て。」
二人は掌を並べた。
「まだ若いから全然ないよ。」
春樹が笑う。
「でも。」
美波は優しく言う。
「今日まで笑った分だけ。」
「少し増えた気がする。」
春樹はその言葉を聞いて、美波の手を包み込む。
「もっと増やそう。」
「うん。」
「おじいちゃん、おばあちゃんになるまで。」
美波は少しだけ黙った。
そして、春樹の肩にもたれながら、小さく答えた。
「……なれたら、いいな。」
その声には、願いと祈りが混ざっていた。
窓の外では、秋風に揺れる木々の葉が、静かに音を立てていた。
二人は何も話さず、ただ手を重ねる。
その温もりだけで、お互いの鼓動が確かに伝わっていた。
そして、ノートの最後の白いページには、まだ何も書かれていなかった。
そこに書かれる「最後の願い」が、二人の未来を大きく変えることになるとは、このときの二人はまだ知らなかった。
第五章 未来の価値

十月。
風が少し冷たくなった。
街路樹は赤や黄色に色づき始め、季節は静かに秋へと変わっていく。
春樹と美波の「やりたいことノート」は、九十二個まで埋まっていた。
ページをめくるたび、笑顔があった。
失敗もあった。
泣いた日もあった。
その全部が、二人だけの宝物になっていた。
ある日。
美波はノートを開きながら言った。
「最後の八個は、特別なものにしたい。」
「例えば?」
「一番最後は……秘密。」
そう言っていたずらっぽく笑う。
「秘密?」
「うん。」
「教えて。」
「だめ。」
春樹は肩をすくめた。
「じゃあ、それまで全部叶えよう。」
「うん。」
九十三個目。
手料理を食べてもらう。
美波は朝からキッチンに立っていた。
エプロン姿で悪戦苦闘する。
「わっ!」
卵を落とす。
「焦げた!」
ハンバーグは少し黒くなり、
味噌汁は少し薄かった。
春樹は一口食べる。
「どう?」
不安そうな顔。
「世界一おいしい。」
「絶対うそ。」
「本当。」
「焦げてるよ?」
「焦げも思い出。」
その言葉に、美波は笑いながら泣いた。
九十六個目。
二人でアルバムを作る。
リビングいっぱいに写真を広げる。
向日葵畑。
海。
夏祭り。
水族館。
動物園。
夜景。
雪。
病院の屋上。
何気ないコンビニ帰りの写真まである。
「こんなの撮ってた?」
「隠し撮り。」
「ひどい。」
「でも好き。」
美波は一枚の写真を見つめた。
初めて花屋で撮った写真。
まだ付き合う前。
二人とも少し距離がある。
「この頃の春樹さん。」
「うん。」
「全然笑ってない。」
春樹も笑う。
「今は?」
「笑いすぎ。」
「誰のせい?」
「私。」
二人は声を出して笑った。
その夜だった。
突然、美波が胸を押さえた。
「っ……!」
息が苦しい。
春樹はすぐに抱き支える。
「美波!」
呼吸が乱れる。
顔色が青い。
救急車。
病院。
何度目か分からない白い天井。
医師は静かに話した。
「病気は確実に進んでいます。」
春樹は黙って聞いていた。
「心臓移植という方法もあります。」
「……。」
「ただ。」
医師は言葉を選ぶ。
「提供される保証はありません。」
長い順番待ち。
いつ来るか分からない連絡。
時間との勝負。
それが現実だった。
病室。
美波は窓の外を見ていた。
「怖い?」
春樹が聞く。
「ううん。」
少し笑う。
「怖いのはね。」
「?」
「死ぬことじゃない。」
春樹は息を呑む。
「春樹さんを一人にしちゃうこと。」
その一言で胸が締め付けられる。
春樹はベッドの横へ座った。
「一人になんかならない。」
「……。」
「何年でも待つ。」
「……。」
「だから。」
春樹はポケットから小さな箱を取り出した。
美波は驚く。
「え……?」
震える手で箱を開く。
中には、小さな指輪が入っていた。
高価なものではない。
給料を少しずつ貯めて買った、シンプルな銀色の指輪。
春樹は深く息を吸う。
「本当はもっと格好いい場所で言うつもりだった。」
少し笑う。
「夜景とか。」
「海とか。」
「桜の下とか。」
「でも。」
涙が溢れる。
「今じゃないと後悔する気がした。」
美波も泣いていた。
春樹はゆっくり言葉を続ける。
「美波。」
「はい。」
「俺と結婚してください。」
病室は静まり返る。
心電図だけが静かに音を刻んでいた。
美波は泣きながら何度も頷く。
「……はい。」
「お願いします。」
春樹は指輪を左手の薬指にはめる。
少しだけ細くなった指。
それでもぴったりだった。
「似合う?」
美波が笑う。
春樹は涙を拭きながら答えた。
「世界で一番。」
病室の窓から夕日が差し込む。
二人は手を繋いだ。
左手には新しい指輪。
そして、その手には少しだけ増えた”しわ”。
美波はそのしわを指でなぞりながら、小さく笑った。
「増えたね。」
春樹も笑う。
「まだ足りない。」
「もっと増やそう。」
「うん。」
「おじいちゃんとおばあちゃんみたいに。」
美波は静かに頷いた。
その願いが叶うかは、誰にも分からない。
それでも二人は未来を信じることをやめなかった。
指輪よりも強く。
言葉よりも深く。
二人の手は、しっかりと結ばれていた。
第六章 残された時間

十一月。
窓の外では、木枯らしが街路樹の葉を運んでいた。
春樹は病室のソファで目を覚ます。
時計は午前五時半。
いつものように毛布を畳み、美波が起きる前に売店で温かいココアを二つ買ってくる。
それが二人の日課になっていた。
「おはよう。」
「おはよう。」
湯気の立つ紙コップを両手で包みながら、美波は微笑む。
「この時間、好き。」
「俺も。」
病室なのに、不思議とここは家のように感じられた。
結婚式は挙げられなかった。
体力がもたないからだ。
それでも二人は、市役所へ婚姻届を提出した。
付き添ってくれたのは花屋の店長と、春樹の会社の先輩。
役所を出ると、美波は照れくさそうに笑った。
「今日から奥さんだ。」
「そうだね。」
「実感ない?」
「ある。」
春樹は照れながら答える。
「世界一幸せ。」
その言葉だけで、美波は泣いてしまった。
数日後。
春樹は花屋を貸し切った。
店長にも協力してもらい、小さな結婚式を準備していた。
店いっぱいに白いカスミソウ。
壁には二人が撮ってきた写真。
向日葵畑。
海。
夏祭り。
雪景色。
やりたいことノートの思い出が、花と一緒に飾られていた。
「びっくりした?」
春樹が尋ねる。
美波は何も言えず、何度も頷いた。
店長が笑う。
「花嫁さん、泣きすぎですよ。」
「だって……。」
涙が止まらない。
春樹は一輪の白いマーガレットを差し出した。
二人が初めて出会った日に、美波がくれた花だった。
「始まりの日の花だから。」
美波は震える手で受け取る。
「ありがとう。」
たった四人だけの結婚式。
豪華なドレスも、大きな教会もない。
それでも、その笑顔は誰よりも幸せだった。
冬。
病気は少しずつ進んでいた。
階段は登れない。
少し歩くだけで息が切れる。
酸素を吸う日も増えた。
それでも美波は笑う。
「今日ね。」
病室でノートを開く。
「九十九個目。」
春樹が覗き込む。
そこには、
『毎日笑う。』
とだけ書かれていた。
「これなら毎日叶うね。」
「うん。」
「百個目は?」
美波は首を振る。
「まだ秘密。」
十二月。
雪が降った。
病院の屋上は真っ白だった。
「寒い?」
「少し。」
春樹はマフラーを美波に巻いてあげる。
二人は並んで雪を見た。
「ねぇ。」
美波が空を見上げる。
「もし私が先にいなくなっても。」
「その話はしない。」
春樹は遮る。
「聞いて。」
優しい声だった。
「春樹さんは笑って。」
「……。」
「花を買って。」
「……。」
「朝日を見て。」
「……。」
「ちゃんとご飯食べて。」
春樹は首を振る。
「無理だ。」
「お願い。」
涙が頬を伝う。
「私ね。」
空から落ちる雪を見つめながら言う。
「春樹さんが笑ってる未来が、一番見たい。」
春樹は声にならなかった。
ただ、美波の手を強く握った。
「約束して。」
「……。」
「お願い。」
長い沈黙のあと。
春樹は小さく頷いた。
「約束する。」
その夜。
病室。
美波は眠っていた。
春樹は一人で「やりたいことノート」を開く。
最後のページ。
百個目。
そこには、美波の字で書かれていた。
『おじいちゃんとおばあちゃんになって、手のしわを数える。』
春樹の視界が滲んだ。
ぽたり、と涙がページに落ちる。
叶えたい。
何よりも叶えたい願いだった。
だが、その願いがどれほど尊いものなのかを、春樹は誰よりも知っていた。
病室に響く心電図の音。
規則正しく鳴るその音を聞きながら、春樹は眠る美波の手をそっと包む。
「絶対に叶えよう。」
その言葉は、美波には届かなかった。
けれど、その温もりだけは確かに伝わっていた。
窓の外では、静かに雪が降り続いていた。
それはまるで、二人の時間を優しく包み込むようだった。
最終章 しわあわせ

一月。
空気は澄み切り、朝の吐息は白く染まっていた。
病室の窓から、初日の出が見えた。
「見えた。」
美波が小さく呟く。
「今年も一緒に見られたね。」
春樹は隣で微笑んだ。
「うん。」
それだけで十分だった。
もう何かを望みすぎることはやめた。
一日。
一時間。
一分。
隣にいられる時間、そのすべてが奇跡だった。
その日の午後。
病院へ一本の電話が入った。
看護師が慌ただしく病室へ駆け込む。
「美波さん。」
「はい?」
「ドナーが見つかりました。」
時間が止まる。
春樹と美波は顔を見合わせた。
移植手術。
待ち続けた希望。
けれど、それは同時に大きな命を失った誰かがいるという現実でもあった。
美波は静かに目を閉じる。
「その人の分まで、生きます。」
涙を流しながら深く頭を下げた。
数日後。
手術室の前。
「行ってきます。」
美波は笑った。
「行ってらっしゃい。」
春樹は精一杯笑顔を作る。
震える手を握る。
「また手を繋ごう。」
「うん。」
「いっぱいしわを増やそう。」
「約束。」
二人は指切りをした。
扉が閉まる。
春樹は一人、廊下に残された。
時計の針だけが進んでいく。
一時間。
三時間。
五時間。
祈ることしかできなかった。
「ご家族の方。」
医師が現れる。
春樹は立ち上がった。
「手術は成功しました。」
その言葉を聞いた瞬間、
力が抜け、その場に座り込んだ。
声にならない涙が溢れる。
「ありがとうございました……。」
何度も頭を下げた。
その涙は、悲しみではなく、
生きられる未来への涙だった。
春。
病院の中庭。
桜が咲いていた。
まだ長く歩くことはできない。
それでも美波はゆっくり歩いた。
春樹が隣で支える。
「風、気持ちいい。」
「うん。」
新しい心臓は静かに鼓動を刻んでいた。
その音を聞くたびに、美波は命の重さを感じていた。
「この心臓ね。」
胸に手を当てる。
「私だけのものじゃない。」
春樹は静かに頷く。
「だから毎日大切に生きる。」
退院して一年。
花屋は以前より賑わっていた。
春樹は会社を辞め、
美波と一緒に花屋を手伝うようになっていた。
「いらっしゃいませ。」
二人の笑顔につられて、お客さんも笑う。
ある日、小さな女の子が転んだ。
泣きながら立ち上がれない。
美波はしゃがみ込み、一輪のマーガレットを渡した。
「大丈夫。」
女の子は泣き止んで笑った。
春樹はその姿を見ながら思う。
あの日、花を拾った自分も、
きっと同じように救われていたのだと。
十年後。
春。
店の前には色とりどりの花が並んでいる。
美波の髪には少しだけ白いものが混じり始めた。
春樹の目尻には細かな皺が増えていた。
閉店後。
二人は縁側に座る。
湯飲みから立つ湯気。
夕焼け空。
「見て。」
美波が笑う。
「また増えた。」
手のひらを差し出す。
春樹も重ねる。
若い頃にはなかった皺が、
少しずつ刻まれていた。
「増えたね。」
「うん。」
「全部、一緒に笑った数だ。」
春樹はゆっくり答える。
「泣いた数でもある。」
「そうだね。」
美波は優しく微笑んだ。
「でも、その全部が幸せ。」
二人は手を重ねたまま、
静かに夕日を眺める。
それからさらに歳月が流れた。
花屋には孫ほどの年齢の子どもたちが遊びに来るようになった。
「おじいちゃん、おばあちゃん。」
「どうしてそんなに仲良しなの?」
二人は顔を見合わせて笑う。
春樹はそっと美波の手を握った。
「この皺、一つ一つに思い出があるんだ。」
美波は続ける。
「嬉しかった日も、苦しかった日も、全部一緒に生きてきた証なの。」
夕暮れの店先。
二人の重なった手には、たくさんの皺が刻まれていた。
それは歳を取った証ではない。
幾度も手を取り合い、
何度も笑い、
何度も涙を流し、
それでも離さなかった証。
春樹は静かに呟く。
「昔、自分の心臓は四百円の価値しかないと思ってた。」
美波は首を横に振る。
「違うよ。」
「あなたの心臓は、私の人生を幸せにした。」
春樹は照れ笑いを浮かべる。
「じゃあ、この皺は。」
美波は春樹の手をぎゅっと握った。
「私たちの未来の価値。」
春風が花びらを運んでいく。
二人は笑い合った。
その笑顔には、たくさんの皺があった。
けれど、それは世界で一番美しい”しわあわせ”だった。
~完~
最後まで読んでくれてありがとう(*^-^*)

他にも『Vaundy』の名曲を紹介しておりますので併せてご覧くださいρ(._.*)ρ





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