『常熱』Vaundy。”妄想ストーリー(現実再会編)”

Vaundy

このページは別記事で描いたVaundyの『常熱』という曲をモチーフにした、私の妄想ストーリーの現実再会編ですφ(・ω・`)

元記事を読んでいない方は、元記事からご覧になっていただければ幸いです。ρ(._.*)ρ

それでは「常熱(現実再会編)」(´っ・ω・)っすた~と

常熱(現実再会編)

第一章:温度の残り方

目が覚めた瞬間、違和感があった。


静かすぎる。


いや、音はある。

カーテンの隙間から差し込む朝の光。
遠くで鳴る車の音。
隣の部屋から微かに聞こえる生活音。


全部、ちゃんと存在している。


でも。


「……軽い」


世界が、軽い。



布団の中で、ゆっくりと目を閉じる。


もう一度、確かめるように。



「……何だこれ」



胸の奥が、空いている。


ぽっかりと、何かが抜け落ちたみたいに。



ドクン。



鼓動が鳴る。


でも、その音が妙に“遠い”。



前は、もっと近かった気がする。


もっと、うるさいくらいに。



「……」


何かを思い出しそうになる。


でも。



指の隙間から、水がこぼれるみたいに。


全部、逃げていく。



「……夢、か」



そう言い聞かせる。


でも、その言葉が妙に空虚に響く。



夢なら、こんなに“感覚”は残らない。



起き上がる。


足を床につける。


冷たい。



その冷たさに、少しだけ安心する。



「……ちゃんと現実か」



そう思ったはずなのに。



「……いや」



違う。



“現実すぎる”。



整いすぎている。



時計を見る。


7時12分。



キッチンに行く。


水を飲む。



テレビをつける。


ニュースが流れている。



全部、いつも通り。



でも。



「……同じだな」



昨日と、同じ流れ。


一秒のズレもなく、同じように進んでいる気がする。



既視感。


でも、それだけじゃない。



“繰り返したことがある感覚”。



「……」



頭の奥が、少しだけ軋む。



思い出そうとすると、
どこかで“制限”がかかる。



それ以上、踏み込めない。



「……なんだよ」



小さく舌打ちする。



気持ち悪い。



でも同時に。



「……落ち着くな」



そう思ってしまう。



この均一さ。


この揃いすぎた日常。



どこかで、“安心している”。



それが、余計に気持ち悪い。



電車に乗る。


いつもの位置。


いつもの時間。



人が流れ込む。


整然とした動き。



「……」



その中で、少しだけ違和感を探す。



誰かがズレていないか。


何かがおかしくないか。



でも。



何も見つからない。



完璧すぎる。



「……なんで探してんだよ」



自分で自分にツッコミを入れる。



普通なら、気にする必要なんてない。



でも。



「……足りないんだよな」



ぼそっと、呟く。



何が足りないのかは、わからない。



でも確実に。



“何かがあった”。



そして、それは今、ここにない。



昼休み。


外に出る。



空を見上げる。



青い。


ただ、それだけの空。



でも。



「……薄くないな」



以前と違うことに気づく。



前は、全部が“薄く”見えていた。



でも今は違う。



ちゃんと、色がある。


ちゃんと、現実として感じる。



なのに。



「……なんでだよ」



足りない。



満たされていない。



何かを知っている体が、
それを求めている。



でも。



頭が、それを拒否している。



思い出すな、と。



「……」



深く息を吐く。



そのとき。



ドクン。



鼓動が、一瞬だけ強くなる。



「……っ」



思わず胸に手を当てる。



今のは。



明らかに、“いつもと違う”。



一拍だけ。


強く。


深く。



まるで。



何かに“呼ばれた”みたいに。



「……どこだよ」



小さく呟く。



行き先なんて、決めていないはずなのに。



体が、動く。



自然に。


迷いなく。



「……はは」



乾いた笑いが漏れる。



「またかよ」



この感覚。



“選ばされている”。



でも。



嫌じゃない。



むしろ。



「……行くか」



小さく、呟く。



理由は、ない。



でも。



“そこに何かがある”って、わかっている。



歩き出す。



足が向かう先は。



夕焼けの匂いがする方角。



波の音が、微かに混ざる方向。



そして。



まだ見ていないはずなのに。



「……いるんだろ」



確信だけがある。



“誰かが、待っている”。



それが誰なのか。



まだ、思い出せないまま。

第二章:再会の温度

海が見えた瞬間、足が止まった。


夕焼け。


水平線が、赤く滲んでいる。


風が、少しだけ強い。


波の音が、一定のリズムで響いている。


「……」


知っている景色だ。


来たことがある。


いや。


“何度も来ている”。



「……なんでだよ」


小さく、呟く。



記憶はない。


でも、体が覚えている。


この場所に立つ“感覚”を。



ドクン。



鼓動が、少しだけ強くなる。



それは、不安じゃない。



“予感”。



何かが起きる。


ここで。



「……」


ゆっくりと、視線を動かす。



人影は、少ない。


夕方のこの時間、
この場所にいる人間は限られている。



でも。



「……いるな」



わかる。



理由は、ない。



でも確信だけがある。



“あの人だ”。



視線の先。



風に揺れる髪。



夕焼けの中で、
ひとり立っている影。



その姿を見た瞬間。



ドクンッ。



鼓動が、大きく跳ねた。



「……あ」



言葉が、漏れる。



名前が、出そうになる。



でも。



出てこない。



「……誰だよ」



わからない。



なのに。



“知っている”。



その矛盾が、頭の中でぶつかる。



彼女が、ゆっくりと振り返る。



視線が、合う。



その瞬間。



世界が、少しだけ静かになる。



風の音が遠のく。


波の音が薄れる。



残るのは。



鼓動。



ドクン。



彼女も、少しだけ目を見開いている。



同じ反応。



同じ違和感。



「……」



数秒の沈黙。



長いのか、短いのかもわからない時間。



そして。



彼女が、先に口を開いた。



「……なんか」



その言葉が出た瞬間。



胸の奥が、強く反応する。



「変な感じするね」



その一言。



聞いたことがある。



どこで?



思い出せない。



でも。



確実に、“知っている”。



「……ああ」



気づけば、返していた。



「はじめてじゃない気がする」



その言葉を口にした瞬間。



自分でも驚く。



根拠なんて、ない。



でも。



それ以外の言葉が、出てこなかった。



彼女は、少しだけ息を飲む。



でも、すぐに。



「……だよね」



小さく、微笑む。



その笑顔に。



強烈な既視感が走る。



「……」



頭の奥が、ざわつく。



何かが、引っかかっている。



でも。



それ以上は、出てこない。



「……名前、聞いていい?」



彼女が、少しだけ躊躇いながら言う。



その仕草すら。



どこかで見たことがある。



「遼」



自然に、答える。



今回は、詰まらない。



まるで。



“何度も言ってきたみたいに”。



「……葵」



彼女も、同じように答える。



その名前。



胸の奥が、じんわりと熱くなる。



ドクン。



さっきよりも、少しだけ強い鼓動。



でも。



暴走しない。



以前のように、飲み込まれない。



ただ。



“確かにそこにある”。



「……」



少しだけ、距離を詰める。



でも、触れない。



触れたら、何かが壊れる気がした。



「……来ると思ってた」



ふと、口から漏れる。



自分でも、驚く。



「え?」



葵が、少しだけ目を見開く。



「……いや」



すぐに、言い直す。



「なんでもない」



でも。



本当は、わかっている。



“ここに来れば、会える”って。



理由もなく。



根拠もなく。



ただ、確信だけがある。



「……ねぇ」



葵が、少しだけ真剣な声で言う。



「前にも会ってたとしたら」



その言葉に。



一瞬だけ、時間が止まる。



“前にも”。



その言葉が、妙に重く響く。



思い出せない。



でも。



否定できない。



「……それでもいいよ」



すぐに、答えていた。



「今、ここにいるなら」



それが、全部だ。



過去がどうとか。


記憶がどうとか。



どうでもいい。



目の前にいる、この人が。



ちゃんと、存在しているなら。



「……そっか」



葵が、小さく笑う。



その笑顔が。



今度は、ちゃんと“現実”として届く。



前みたいに、飲み込まれない。



でも。



消えない。



「……」



そのまま、隣に立つ。



夕焼けを、同じ方向から見る。



何も言わない。



でも。



それでいいと思えた。



ドクン。



鼓動が、少しだけ強くなる。



でも今度は。



怖くない。



「……これか」



小さく、呟く。



「常熱って」



その言葉に、葵が少しだけ反応する。



でも、何も言わない。



ただ、同じ景色を見続ける。



それが。



“今の正解”だった。

第三章:触れる直前

それから、何度か会うようになった。


偶然みたいに。


でも。


「……また会ったな」


遼が、少しだけ笑う。



「ほんとだね」


葵も、同じように返す。



待ち合わせはしていない。


連絡先も知らない。



それでも。



同じ時間に、同じ場所に来る。



「……おかしいよな」


遼が、空を見ながら呟く。



「うん」


葵も、否定しない。



おかしい。


でも。



「……別に、いいけど」



その一言で、全部が許される。



理由なんて、いらない。



“会えること”が、すべてだから。



夕焼けの下。


並んで座る。



少しだけ距離を空けて。



近すぎない。


遠すぎない。



絶妙な距離。



「……ねぇ」


葵が、小さく呼ぶ。



「なに?」



「遼ってさ」


少しだけ、迷うように。



「どこまで覚えてる?」



その問いに。



一瞬だけ、空気が変わる。



「……何の話だよ」



軽く流そうとする。


でも。



逃げきれない。



わかっている。



この問いの意味を。



「……夢、みたいなのはある」



ぽつりと、こぼす。



葵の視線が、少しだけ揺れる。



「……どんな?」



遼は、少しだけ考える。



「……海」



「夕焼け」



「あと……」



そこで、言葉が止まる。



何かが、引っかかる。



「……誰かがいた気がする」



その瞬間。



葵の鼓動が、一瞬だけ強くなる。



ドクン。



「……そっか」



それだけ言って、視線を外す。



全部は思い出していない。



でも。



“断片”は、確実に残っている。



それが、少しだけ怖い。



「……なぁ」



遼が、少しだけ真剣な声で言う。



「葵ってさ」



一瞬、間が空く。



「どっかで会ってる?」



その問い。



何度も聞いた言葉。



何度も、答えなかった言葉。



でも、今回は。



「……どうだろうね」



少しだけ、笑ってごまかす。



正解は言わない。



言った瞬間、崩れるから。



「……だよな」



遼も、それ以上は追わない。



でも。



“納得していない顔”。



それでいい。



完全に思い出す必要はない。



“感じていればいい”。



それが、この世界のバランスだから。



風が、少しだけ強くなる。



葵の髪が揺れる。



その瞬間。



遼の手が、ほんの少しだけ動く。



無意識に。



触れそうになる。



その距離。



あと、数センチ。



ドクン。



鼓動が、急に強くなる。



「……っ」



遼の呼吸が、わずかに乱れる。



同時に。



視界の奥に、何かが走る。



フラッシュ。



夕焼け。


海。


触れる感覚。



“これが、常熱だよ”



「……っ、なんだよ今」



思わず、手を引く。



心臓が、異常に速い。



ドクン、ドクン、ドクン。



さっきまでの“安定した鼓動”じゃない。



一瞬だけ。



“あっち側”の熱が、戻ってきた。



「……大丈夫?」



葵が、静かに聞く。



でも。



内心では、わかっている。



今のは。



“境界に触れた”。



「……なんか」



遼が、少しだけ笑う。



「やばいな、これ」



その言い方。



懐かしい。



でも。



同時に、違う。



以前は。



そのまま、落ちていった。



“常熱”に。



でも今は。



「……やめとくか」



自分で、引いた。



その選択に。



葵は、少しだけ驚く。



「……えらいね」



ぽつりと、呟く。



「なんだよそれ」



遼が、少しだけ笑う。



「いや」



葵も、少しだけ笑う。



「ちゃんと戻ってきたなって思って」



その言葉の意味は。



まだ、全部は伝わっていない。



でも。



それでいい。



「……なぁ」



遼が、少しだけ真剣な声で言う。



「また、会えるよな」



その問い。



今回は、はっきり答える。



「うん」



迷いなく。



「会えるよ」



それは、確信。



ループじゃない。



選び続ける限り、何度でも。



「……そっか」



遼が、少しだけ安心したように笑う。



その笑顔が。



今度は、ちゃんと“残る”。



ドクン。



鼓動が、穏やかに鳴る。



暴走しない。



でも、確かに熱を持っている。



それが。



“今の常熱”。

最終章:選び続ける温度

それから、少しだけ時間が経った。


特別なことは、何も起きていない。


連絡先を交換して。
たまにメッセージをして。
時間が合えば、会う。


それだけ。


どこにでもある関係。


でも。


「……不思議だな」


遼が、ぽつりと呟く。



「なにが?」



「ちゃんと、進んでる気がする」



その言葉に、葵は少しだけ目を細める。



“進んでいる”。



それは、この物語の中で
一番難しかったこと。



同じことを繰り返さない。


戻らない。



ちゃんと、前に進むこと。



「……うん」


小さく、頷く。



「進んでるよ」



それは、確信だった。



ループじゃない。



今は、ちゃんと“積み重なっている”。



夕方。


また、あの海へ来る。



でも今回は。



「……約束、してたな」



“偶然”じゃない。



“選んで来ている”。



それだけで、少しだけ嬉しくなる。



「……遼」



葵が、少しだけ真剣な声で呼ぶ。



「なに?」



一瞬、言葉に迷う。



でも。



「ちゃんと、言っとこうかなって」



その一言で、空気が少し変わる。



風が、止まる。



いや。



そう感じるだけ。



「……なに?」



遼も、少しだけ姿勢を正す。



「私たちさ」



ゆっくり、言葉を選ぶ。



「たぶん、前にも会ってる」



その言葉に。



遼は、驚かない。



ただ、少しだけ考える。



「……やっぱり?」



軽く笑う。



否定しない。



それが、答えだった。



「でも」



葵が、続ける。



「全部思い出さなくていいと思う」



その言葉。



それは、逃げじゃない。



選択だった。



「ああ」



遼も、すぐに頷く。



「なんか、そんな気がしてた」



思い出そうとすれば、できるかもしれない。



もっと深く触れれば。


もっと強く繋がれば。



でも。



「……壊れそうだしな」



遼が、小さく笑う。



その言葉に、葵も少しだけ笑う。



「うん」



それでいい。



全部を知る必要はない。



今、ここにあるものだけでいい。



「……なぁ」



遼が、少しだけ真剣な声で言う。



「これってさ」



一瞬、間が空く。



「好きってことでいいのか?」



その問い。



あまりにも、まっすぐで。



でも。



「……うん」



迷わず、答える。



「それでいいよ」



それが、一番正確だった。



“好き”。



それ以上でも、それ以下でもない。



でも。



それだけで、十分すぎる。



少しだけ、距離が縮まる。



今度は。



触れる。



指先が、そっと重なる。



ドクン。



鼓動が、少しだけ強くなる。



でも。



暴走しない。



飲み込まれない。



ただ。



「……あったかいな」



遼が、小さく呟く。



「うん」



葵も、同じように感じている。



これは、もう。



壊れる熱じゃない。



続いていく温度。



「……ねぇ」



葵が、少しだけ悪戯っぽく笑う。



「次は、どこまで行く?」



その問いに。



遼は、少しだけ考えて。



「ゆっくりでいい」



そう答える。



「ちゃんと、選びながら行く」



その言葉。



それが、この物語の答えだった。



ドクン。



鼓動が、穏やかに重なる。



もう、暴走しない。



でも、消えない。



それが。



“常熱”。



夕焼けの中。


2人は、同じ方向を見る。



過去じゃなく。


未来の方へ。

~完~

他にも『Vaundy』の名曲を紹介しておりますので併せてご覧くださいρ(._.*)ρ

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