本日ご紹介するのは、『Vaundy(バウンディ)』のナンバーから
『そんなbitterな話』
【作詞・作曲:Vaundy】
歌詞全文はこちらのリンクから→https://www.uta-net.com/song/334585/
Vaundyの「そんなbitterな話」は、2023年3月13日に配信リリースされた楽曲で、ABEMAの恋愛番組「花束とオオカミちゃんには騙されない」の主題歌として書き下ろされた。ほろ苦い恋心を歌った本作は、MVに板垣李光人と伊藤万理華が出演し、話題を呼んだ。
この曲は“甘さと苦さが共存する恋の記憶”をテーマにした曲です。
一言で言うと
「終わった恋が、消えずに“味”として残り続ける話」
ここから、歌詞を深く分解していきます。
① 冒頭:思い出は“消えないまま残る”
思い出すようなmidnight
苦い思い出もblueも
僕ら離れても案外
隠し持ってるVaundy「そんなbitterな話」作詞・作曲:Vaundy
夜になると勝手に思い出す
- 楽しかった記憶も、苦い記憶も両方ある
- 別れても完全には消えない
ポイントは「隠し持ってる」
これはつまり
忘れてるフリをしてるだけで、実はずっと持ってるということ。
② 「案外うまくやってた」=ズレた関係
言い合ったよね good night
そんな退屈なflowも
僕らここまで案外
うまくやってたよねVaundy「そんなbitterな話」作詞・作曲:Vaundy
ここはかなりリアル。
- 何気ない日常
- 少しの言い合い
- でも“それなりに続いてた関係”
ここでの“案外”が重要
これは
完璧じゃないけど、壊れるほどでもない中途半端な関係
③ 「出会わなきゃよかった」=一瞬の本音
こんなことじゃあ
出会わなきゃよかったなVaundy「そんなbitterな話」作詞・作曲:Vaundy
これは本気じゃない。
苦しさがピークに達したときに出る“逃げの言葉”
- 本当は好き
- でもうまくいかない
- だから“なかったことにしたい”
「思ってないけど思いたくなる」感情
④ ラブコメの皮肉:運命っぽいのに続かない
ラブコメみたいなくだりで
間違えて運命の誰かに会って
恋しちゃうような甘みだがVaundy「そんなbitterな話」作詞・作曲:Vaundy
ここはかなり核心。
- 出会いは偶然(=ラブコメ的)
- 一見“運命っぽい”
- ちゃんと恋もした
でも——
「間違えて運命」
つまり
運命“みたい”だっただけで、本当の運命じゃなかった
⑤ サビ:ほろ苦さの正体
ほろ苦い、そう苦い
僕たちの望む愛やらの出口は
消えることも 見えることも
忘れることもできぬようにVaundy「そんなbitterな話」作詞・作曲:Vaundy
ここがこの曲の核心。
■ポイント①:出口
恋は終わっている(=出口にいる)
でも
- 消えない
- 見えない(形はない)
- 忘れられない
つまり
“存在しないのに残っている状態”
■ポイント②:「ほろ苦い」
- 甘いだけ → すぐ忘れる
- 苦いだけ → 嫌になる
でも
甘さ+苦さ=長く残る
⑥ 中盤:恋は“火傷する飲み物”
愛おしいのさ
それはもちろんhot and black
颯爽と火傷しなVaundy「そんなbitterな話」作詞・作曲:Vaundy
ここは比喩が美しい。
- hot → 熱い恋
- black → 苦い現実
つまり
「熱くて苦い=火傷する恋」
⑦ 「近くても隠してた」=最大の原因
僕ら近くても案外
隠し持ってたよねVaundy「そんなbitterな話」作詞・作曲:Vaundy
ここが“別れの原因”。
- 距離は近い
- でも本音は言わない
つまり
物理的な距離と、心の距離がズレていた
⑧ 後半:苦さが“癖になる”
苦すぎるから
癖になった、その苦味はVaundy「そんなbitterな話」作詞・作曲:Vaundy
ここが一番リアルで深い。
普通なら
- 苦い → 嫌いになる
でもこの曲は逆
苦いからこそ、忘れられない
⑨ ラスト:だから愛おしい
消えることも 見えることも
忘れることもできぬゆえに
愛おしいのさVaundy「そんなbitterな話」作詞・作曲:Vaundy
ここが答え。
普通は
- 消えない → つらい
- 忘れられない → 苦しい
でもこの曲は違う
**「だからこそ愛おしい」**
■まとめ
この曲が言っていること
恋は「成功か失敗」じゃない
終わっても、消えないならそれでいい
むしろ
“消えない恋こそが、本物の恋”
以上私なりの歌詞解釈でした♪
続きまして、この曲を聴いて膨れ上がった私の妄想ストーリ(歌詞解釈)をチラッとお見せいたします
|ω・)チラッ
『そんなbitterな話』
第一章:midnightに浮かぶ記憶
午前0時を回った街は、昼とはまるで別の顔をしている。
昼間は騒がしかったはずの交差点も、今は信号の電子音だけが規則正しく鳴っていて、
その音がやけに耳につく。
コンビニの白い光が、夜の中で浮いている。
まるでそこだけ現実で、それ以外は全部、夢の中みたいだった。
ポケットの中でスマホが少し冷たい。
取り出して、意味もなく画面をつける。
通知は、何もない。
わかっているのに、
それでも指は、いつもの場所をなぞってしまう。
——トーク画面。
開いた瞬間、時間が巻き戻る。
スクロールすれば、そこにはまだ“二人”がいる。
どうでもいい会話。
「今日さ」「それでさ」って続く、なんでもないやり取り。
スタンプで終わる夜。
くだらない冗談で笑ってた時間。
その全部が、今もそこに残っている。
「……消せばいいのに」
小さく呟く。
でも、指は動かない。
消す、っていうのは、
ただデータを消すことじゃない。
あの時間を、“なかったこと”にするみたいで。
それが、どうしてもできない。
一番下までスクロールすると、最後のやり取りが出てくる。
——「おやすみ」
たった一言。
たった一言なのに、やけに重い。
あのときは、ただの“いつも通り”の終わりだった。
明日もまた話すつもりで、
特別な意味なんてなかったはずなのに。
それが、最後になった。
「……こんな終わり方、あるかよ」
苦笑が漏れる。
もっとちゃんとした別れ方もあったはずだ。
ちゃんと話して、ちゃんと区切りをつけて。
でも現実は、そんな綺麗にはいかない。
日常の延長みたいに、
気づいたら終わっている。
それが、一番厄介だった。
スマホを閉じて、空を見上げる。
雲が薄くかかっていて、星はほとんど見えない。
中途半端な空。
あの日の帰り道も、こんな空だった気がする。
思い出すのは、いつもmidnight。
昼間は、うまく紛らわせることができる。
仕事をして、誰かと話して、音楽を流して。
でも夜になると、全部が静かになって、
代わりに“思い出”が音を立て始める。
笑っていた時間も、
少し気まずくなった帰り道も、
どうでもいいことで言い合った夜も。
全部、同じ温度で蘇ってくる。
楽しかったはずなのに、
どこかで苦くて、
でも確かに温かかった。
その感覚が、いちばん厄介だ。
完全に嫌いになれたら、楽なのに。
「……ほんと、中途半端だよな」
壁にもたれかかりながら、呟く。
好きだった。
それは間違いない。
でも、うまくいかなかった。
それも、事実だ。
その“どっちも本当”っていう状態が、
心の中にずっと残り続ける。
まるで、飲みかけのコーヒーみたいに。
冷めてしまっても、
捨てるにはまだ何かが残っていて、
かといって、飲み干すにはもう遅い。
口に残るのは、甘さじゃなくて苦味。
でもその苦味が、
なぜかずっと離れない。
コンビニの自動ドアが開く音がして、現実に戻る。
誰かが入っていくのを横目で見ながら、
ゆっくりと立ち上がる。
「……帰るか」
そう言って歩き出した瞬間、
ふと、思う。
もし今、偶然ここで会ったら。
あの頃みたいに、
何事もなかったみたいに話せるんだろうか。
それとも、
何も言えずにすれ違うだけなんだろうか。
答えは、わからない。
でもきっと、どっちにしても——
少しだけ、苦い。
夜風が吹いて、頬に触れる。
その冷たさが、やけにリアルで。
「あぁ、終わったんだな」
やっと、少しだけ実感が湧く。
それでも、完全には終わらない。
思い出は、消えないから。
見えなくても、
触れられなくても、
忘れようとしても。
ふとした瞬間に、また浮かんでくる。
——midnightに。
静かな街の中、ひとりで歩きながら、
俺はまた、あの時間を反芻していた。
甘くて、苦くて、
どうしようもなく愛おしい、
そんな記憶を。
第二章:隠していたもの
「俺たち、わりとうまくやってたよな」
別れた日の帰り道。
駅までの短い道のりで、何気なく口から出た言葉だった。
街灯が等間隔に並ぶ道。
その下を、並んで歩いているはずなのに、どこか距離があった。
隣にいるのに、少し遠い。そんな感覚。
彼女は少しだけ間を置いて、「うん、案外ね」って笑った。
その“案外”って言葉が、妙に引っかかった。
肯定しているのに、どこか曖昧で。納得しているようで、していないような響き。
「案外うまくやってた」
それはつまり、“完璧じゃなかった”ってことだ。
でも、そのときはそれ以上踏み込めなかった。
踏み込んだら、何かが壊れそうで。
思い返せば、最初からそうだった。
俺たちは、わりと“いい関係”だったと思う。
大きな喧嘩も少なかったし、会えば自然と会話が続いたし、沈黙すら、そこまで気まずくなかった。
一緒にいて、楽だった。
でもそれは、“無理してなかった”んじゃなくて、“無理を見せてなかった”だけだったのかもしれない。
「大丈夫?」
彼女はよくそう聞いてきた。
仕事で疲れてるときとか、少し元気がないときとか。
そのたびに俺は、「うん、大丈夫」って答えていた。
本当は、大丈夫じゃない日もあった。
余裕がなくて、誰にも会いたくない日もあった。
でも、それを言ったら、“重い”って思われる気がして、“面倒くさい”って思われる気がして。
だから、飲み込んだ。
「大丈夫」って言えば、その場は穏やかに流れるから。
彼女も、同じだったのかもしれない。
ある日の帰り道。
「最近さ、ちょっと忙しくて」
そう言った彼女は、少しだけ疲れた顔をしていた。
「そっか、大変だな」
俺はそれだけ返した。
それ以上、聞かなかった。
聞いていいのか分からなかったし、踏み込むことで、逆に負担になるかもしれないと思ったから。
でも本当は、“話してほしい”って思ってた。
弱いところも、見せてほしいって。
でもそれを言う勇気もなくて。
結局、お互いに、“優しさっぽい距離”を保ったまま、大事な部分には触れないでいた。
近くにいるのに、遠い。
その違和感は、少しずつ積もっていった。
最初は気づかないくらい小さなズレ。
でも、それは確実に広がっていく。
例えば、会う頻度。
前は毎週のように会っていたのに、気づけば、少しずつ間が空くようになっていた。
理由はちゃんとある。仕事だったり、予定だったり。
でもそれ以上に、“会いたい”っていう気持ちを、どこかで抑えていた気がする。
「忙しいよね」って言葉で、自分の気持ちをごまかしていた。
ある夜、ふと彼女が言った。
「ねえ、最近さ」
少しだけ言いづらそうに。
「なんか、前より話してない気がする」
その言葉に、一瞬詰まった。図星だったから。
でもすぐに、「そんなことないだろ」って、軽く返してしまった。
否定することで、その空気を終わらせようとした。
本当は、気づいていたのに。ちゃんと向き合えばよかったのに。
「そっか」
彼女はそれ以上何も言わなかった。
でも、その“そっか”は、最初に聞いた“案外ね”と同じ響きをしていた。
納得しているようで、していない。受け入れているようで、諦めている。そんな声。
帰り道の会話は、どこかぎこちなかった。
いつもなら続くはずの話題も、すぐに途切れる。
沈黙が、やけに長く感じる。
その沈黙を埋める言葉を、お互いに探しているのが分かる。
でも、見つからない。
いや、正確には——見つけようとしていないのかもしれない。
「俺たちさ」
言いかけて、やめた。
何を言おうとしていたのか、自分でも分からない。
ただ、“このままじゃいけない”っていう感覚だけがあった。
でも、その先の言葉が出てこない。どうすればいいのか、分からない。
結局、そのまま駅に着いてしまった。
改札の前で立ち止まる。
「じゃあね」
彼女が言う。
「うん、また」
そう返す。
その“また”が、もう来ないかもしれないって、どこかで分かっていた。
お互いに、隠していた。
本音も、弱さも、本当は言いたかったことも。
傷つけないように、壊さないように、大事にしようとして。
でもその結果、一番大事な部分を、触れないままにしてしまった。
「うまくやってたよな」
その言葉の意味を、今なら分かる。
うまくやっていたんじゃない。
“うまくやっているように見せていただけ”だった。
夜のホームに立ちながら、思う。
もし、あのとき。もう少しだけ、踏み込めていたら。
もう少しだけ、本音を出せていたら。
何か変わっていたのかもしれない。
でも、それはもう確かめられない。
電車がホームに滑り込んでくる。
風が吹いて、髪が揺れる。
その風の中で、ふと思う。
近くにいたはずなのに、一番遠いところにいたのかもしれない。
俺たちは。
お互いの、心の中に対して
第三章:ラブコメみたいな出会い
出会いは、驚くほどあっけなかった。
運命なんて言葉を使うには、あまりにも軽くて、あまりにも偶然すぎた。
友達に呼ばれて行った飲み会。
正直、あまり気乗りはしていなかった。
知らない人ばかりで、適当に時間を潰して帰ろうと思っていた。
店の中は、少しだけ騒がしくて、照明はやけに暗い。
テーブルの上には、まだ手をつけていない料理と、ぬるくなりかけたドリンク。
その中で、彼女は向かいの席に座っていた。
最初は、特に印象に残るようなこともなかった。
ただ、何度か目が合って、そのたびに少しだけ気まずくて、軽く逸らして。
それだけだった。
でも、会話の流れで、たまたま同じ話題になった。
「それ、俺も好き」
その一言がきっかけだった。
音楽の話。映画の話。どうでもいい趣味の話。
共通点なんて、大したものじゃない。
でも、その“少しの共通”が、妙に嬉しかった。
気づけば、周りの声はほとんど聞こえなくなっていた。
会話は、自然と続いていた。
無理に広げる必要もなくて、気を使って笑う必要もなくて、ただ、その場の流れに乗っていれば、会話が途切れなかった。
「こういうの、珍しいよね」
彼女が言った。
「何が?」
「初対面なのに、こんな普通に話せるの」
少しだけ笑いながら。
「確かに」
そう返しながら、内心では少し驚いていた。
初対面なのに、変に気を張らなくていい相手。
それって、意外と少ない。
その時点で、もう少しだけ特別だった。
店を出た後、夜風が少し冷たかった。
みんなで駅に向かって歩く帰り道。
何人かで固まって歩いているのに、なぜか自然と、彼女の隣にいた。
会話の続きみたいに、また話し始める。
さっきの続き。さっきの笑い。さっきの空気。
それがそのまま、外に持ち出されたみたいだった。
「ねえ」
彼女がふと、少しだけ前を向いたまま言った。
「こういうのってさ」
「うん?」
「運命とか言うのかな」
冗談っぽく笑いながら。
少しだけ間があって、俺は笑って返した。
「ラブコメの見すぎじゃない?」
軽く流すように。
でも、本当は。ほんの少しだけ、そう思った。
こうやって偶然が重なって、たまたま隣にいて、たまたま話が合って。
それが全部繋がっている気がして。
意味なんてないはずなのに、意味があるように感じてしまう。
そんな瞬間だった。
そのあと、連絡先を交換した。
特別な流れでもなくて、自然な流れで。
「またね」って言って、別れた。
その“またね”は、ちゃんと来るものだと思っていた。
最初のやり取りは、なんでもないものだった。
「今日はありがとう」「こちらこそ」
それだけの会話。
でも、そのあとも、少しずつ続いていく。
一日一回だったのが、気づけば何往復もするようになって。
内容は、ほんとにどうでもいいことばかりだった。
今日あったこと。見たもの。聞いた話。
でも、それが楽しかった。
“話したい”と思える相手がいることが、こんなに自然で、こんなに心地いいものだとは思わなかった。
会う回数も、増えていった。
最初はみんなで。そのうち、二人で。
特別なことはしていない。
ただご飯を食べて、少し歩いて、話して、笑って。
それだけ。
でも、その“それだけ”が、やけに満たされていた。
帰り道。
改札の前で立ち止まる時間が、少しずつ長くなる。
「じゃあね」「うん、また」
そのやり取りが、少しずつ名残惜しくなっていく。
「なんかさ」
ある日、彼女が言った。
「こういうの、ちょっと恥ずかしいね」
「何が?」
「普通すぎて」
笑いながら。
「ドラマみたいな展開とか、全然ないじゃん」
確かにそうだった。
劇的な出来事も、強い衝撃もない。
ただ、ゆっくりと距離が縮まっていくだけ。
でも、それが逆にリアルで。
「まあ、ラブコメじゃないしな」
そう言うと、彼女は少しだけ笑った。
そのときの俺たちは、この関係がどうなるかなんて、深く考えていなかった。
ただ、この時間が続けばいいと思っていた。
この空気が、ずっと続けばいいと。
でも今思えば、その時点でもう、“物語”として見ていたのかもしれない。
恋を。
現実じゃなくて、どこかドラマみたいなものとして。
だから、気づかなかった。
この“自然さ”が、この“心地よさ”が、いつか、すれ違いの原因になるなんて。
あのときの出会いは、確かに甘かった。
でもその甘さは、あとからゆっくりと、苦味に変わっていくことになる。
それをまだ、俺たちは知らなかった。
第四章:火傷みたいな恋
付き合い始めてから、時間の流れは少しだけ速くなった気がした。
会う理由を探す必要もなくなって、連絡も自然と増えて、気づけば“当たり前”の中に彼女がいた。
「今何してる?」「もう帰る?」
そんな何気ない一言が、日常に溶け込んでいく。
それが、心地よかった。
最初の頃は、全部が楽しかった。
どこに行っても新鮮で、何をしても笑えて。
同じ景色でも、隣に彼女がいるだけで違って見えた。
カフェの窓際、夜の帰り道、コンビニの前で立ち止まる時間。
全部が、少しだけ特別だった。
手を繋ぐタイミングも、ぎこちなかった。
触れていいのか迷って、少しだけ間があって、それでもそっと指先が重なる。
その瞬間、言葉よりも先に、何かが伝わる気がした。
たぶんあの頃は、ちゃんと“好き”だった。
でも、好きだからこそ、少しずつ変わっていくものもあった。
期待、という形で。
最初は「会えるだけでいい」だったはずなのに、
いつの間にか「もっと話したい」「もっと知ってほしい」に変わっていく。
それは自然なことだったし、間違っていないはずなのに、
その分だけ、ズレも生まれていった。
「なんで返信遅いの?」
軽く聞いたつもりだった。
責めるつもりなんてなかった。
でも彼女は少しだけ黙ってから、「ごめん、仕事だった」と言った。
その“ごめん”に、少しだけ距離を感じた。
「いや、別にいいんだけど」
そう返したけど、本当はよくなかった。
少しだけ寂しかったし、少しだけ不安だった。
でも、それをそのまま言葉にするのは、怖かった。
重くなるのが、怖かった。
彼女も同じだったのかもしれない。
ある日、会ったときに少しだけ元気がなかった。
「どうした?」と聞くと、「なんでもない」と笑った。
でも、その笑顔は少しだけ無理をしているように見えた。
「ほんとに?」
もう一歩踏み込めばよかったのに、
結局それ以上は聞かなかった。
“無理に聞くのも違うかな”なんて、都合のいい理由をつけて。
お互いに、気づいていた。
でも、触れなかった。
それが、少しずつ積み重なっていく。
会っているのに、どこか噛み合わない日が増えていく。
話しているのに、ちゃんと届いていない感じ。
笑っているのに、少しだけズレている温度。
「ねえ」
ある日、彼女が少しだけ真剣な顔で言った。
「ちゃんと話したいことあるんだけど」
その言葉に、心臓が少しだけ跳ねる。
分かっていた。
これは、軽い話じゃない。
「うん」
そう返したけど、内心では少しだけ構えていた。
「最近さ」
彼女は言葉を選びながら続ける。
「なんか、前と違う気がする」
その一言で、全部を言われた気がした。
分かっていたことを、ちゃんと“言葉”にされた。
「……そうかな」
とぼけるように返す。
認めたくなかった。
認めたら、壊れてしまいそうで。
「違う?」
彼女の声は、静かだった。
責めるわけでもなく、ただ確認するみたいに。
でもその静けさが、逆に重かった。
「いや、別に……普通じゃない?」
自分でも曖昧な返しだと思った。
でも、それ以上の言葉が出てこなかった。
本当は、“普通じゃない”って分かっていたのに。
彼女は少しだけ視線を落として、「そっか」と言った。
その“そっか”が、これまでで一番遠く聞こえた。
そこで、本当は止めるべきだった。
ちゃんと向き合うべきだった。
でも、そのまま流してしまった。
怖かったから。
壊れるのが怖くて、
今の関係を失うのが怖くて、
結局、何も変えられなかった。
その代わりに、少しずつ壊れていった。
会話の温度が下がっていく。
連絡の頻度が減っていく。
会っても、どこか気を使うようになる。
前は自然だったものが、全部“意識しないとできないこと”になっていく。
まるで、熱すぎるコーヒーみたいだった。
最初は、その熱さが心地よくて、
むしろその温度が好きだったのに。
飲み方を間違えれば、火傷する。
それでも無理に飲もうとして、
結局、口の中に残るのは苦味だけになる。
「好きなのに、なんでだろうね」
ふと、彼女が呟いたことがあった。
そのときはうまく返せなかった。
今なら分かる。
好きだから、難しかったんだ。
近づきすぎて、
求めすぎて、
でも素直になれなくて。
その全部が絡み合って、
どうにもできなくなっていた。
気づいたときには、もう遅かった。
火傷みたいな恋だった。
触れた瞬間は温かくて、
でもそのあと、じんわりと痛みが残る。
そしてその痛みは、しばらく消えない。
第五章:別れの味
別れ話は、思っていたよりも静かだった。
もっと感情的になると思っていたし、もっと言い合うと思っていた。
でも実際は、拍子抜けするくらい淡々としていた。
よく行っていたカフェの奥の席。
何度も来たはずの場所なのに、その日はやけに居心地が悪かった。
テーブルの上には、ほとんど手をつけていないコーヒー。
湯気はもう消えていて、ただ黒い液体が静かに揺れている。
向かいに座る彼女も、同じようにカップに触れていなかった。
何かを待っているような、でも何も始めたくないような空気。
沈黙が続く。
重たいというより、逃げ場のない静けさ。
「……なんかさ」
先に口を開いたのは、彼女だった。
小さく息を吐くように。
「うん」
短く返す。
それだけで、心臓が少し速くなる。
「好きなんだけど」
その言葉に、一瞬だけ安心しかける。
でも続く言葉で、それはすぐに崩れた。
「うまくいかないよね」
静かな声だった。
責めるでもなく、諦めるでもなく、ただ事実を置くみたいに。
その一言で、全部が繋がった気がした。
今までの違和感も、ズレも、
言葉にしなかった感情も。
全部。
「……そうだな」
やっと出た言葉は、それだけだった。
もっと何か言えたはずなのに、
それ以上が出てこない。
否定もできないし、肯定もしたくない。
ただ、その言葉の中間に立っている感じだった。
彼女は少しだけ笑った。
寂しさを隠すみたいな、弱い笑い方だった。
「なんでだろうね」
その問いには、答えられなかった。
理由なんて、きっといくつもある。
でもどれも決定的じゃなくて、
どれも“少しずつ”だった。
その“少しずつ”が積み重なって、
ここまで来てしまった。
「俺たちさ」
言いかけて、言葉を探す。
でも、うまくまとまらない。
「うまくやろうとしすぎたのかもな」
やっと絞り出した言葉だった。
本音を隠して、
空気を壊さないようにして、
優しくしようとして。
でもその全部が、逆に距離を作っていた。
彼女は少しだけ頷いた。
「うん、たぶんね」
それ以上は何も言わなかった。
その“たぶん”が、妙にリアルだった。
確信じゃないけど、否定もできない。
そんな曖昧な答え。
しばらく、また沈黙が続く。
店内のBGMが、やけに大きく聞こえる。
周りの人たちは普通に話していて、笑っていて、
このテーブルだけが、少しだけ違う時間にいるみたいだった。
「さ」
彼女がカップに手をかけながら言う。
「もう、いいよね」
その言葉の意味を、すぐに理解する。
終わりにしよう、ってこと。
でもその言い方は、どこか優しかった。
突き放すんじゃなくて、そっと置くみたいに。
「……うん」
頷くことしかできなかった。
引き止めようと思えば、できたのかもしれない。
「まだやり直せる」とか、
「ちゃんと話そう」とか。
でも、そのどれもが嘘になる気がした。
もう、同じことを繰り返すだけだと、
どこかで分かっていたから。
「出会わなきゃよかったな」
ふと、頭の中に浮かぶ。
でもそれを口にすることはなかった。
そんなこと、思っていない。
思っていないけど、
そう言いたくなるくらい、少しだけ苦しかった。
彼女は席を立つ前に、少しだけこちらを見た。
「ありがとう」
その一言に、いろんな意味が詰まっている気がした。
楽しかった時間も、
うまくいかなかった時間も、
全部ひっくるめての「ありがとう」。
「……こちらこそ」
それが精一杯だった。
店を出ると、外は少しだけ風が強かった。
昼間よりも、少し冷たい空気。
並んで歩く。
でも、もう“隣にいる意味”は変わっていた。
恋人としてじゃなくて、
ただ、同じ方向に歩いているだけの二人。
駅までの道が、やけに短く感じる。
「じゃあね」
改札の前で、彼女が言う。
「うん」
それだけ返す。
いつもと同じ言葉なのに、
もう続きはない。
彼女は振り返らずに改札を通っていった。
その背中が、人混みの中に消えていく。
追いかけることは、できなかった。
できなかったんじゃなくて、
しなかった。
それが、答えだった。
ひとりになった改札前で、しばらく立ち尽くす。
胸の中に残っているのは、強い痛みじゃない。
じんわりと広がる、鈍い感覚。
甘くもないし、完全に苦いわけでもない。
ただ、後に残る味。
「……ほんと、bitterだな」
小さく呟く。
この恋は、間違いだったのかもしれないし、
そうじゃなかったのかもしれない。
でもひとつだけ確かなのは——
簡単に忘れられるような味じゃない、ということだった。
第六章:癖になる苦味
別れてからの日常は、驚くほど“普通”に続いていった。
朝起きて、仕事に行って、誰かと話して、夜になって帰る。
何も変わっていないようで、でも確実に何かが抜け落ちている。
最初の数日は、どこか現実感がなかった。
まだ連絡が来るような気がして、ふとした瞬間にスマホを見てしまう。
通知がないことに、少しだけ安心して、少しだけ落ち込む。
「……もう来るわけないか」
分かっているのに、どこかで期待してしまう。
習慣っていうのは、厄介だ。
毎日のように続いていたやり取り。“おはよう”も、“おやすみ”も、特別な言葉じゃなかったはずなのに。
なくなった途端に、その穴がやけに目立つ。
仕事中は、まだいい。
忙しさに紛れて、考える余裕がないから。
でも、帰り道。特に、夜。
ふとした瞬間に、思い出す。
あの道。あの会話。あの沈黙。
同じ景色なのに、隣にいたはずの人だけがいない。
それだけで、世界の輪郭が少し変わる。
コンビニの前で立ち止まる。
何度も一緒に来た場所。
「これ買う?」とか、「いらないって言ったじゃん」とか、どうでもいいやり取りをしていた記憶が浮かぶ。
その記憶が、妙にリアルで。
「……ほんと、残るな」
小さく呟く。
楽しかった記憶だけなら、まだいい。
でも一緒に、うまくいかなかった瞬間も蘇る。
言いかけてやめた言葉。気づいていたのに、触れなかった違和感。あのときの“そっか”。
全部が、同じ温度で戻ってくる。
時間が経てば、薄れると思っていた。
でも実際は、少し違った。
薄れるんじゃなくて、“馴染んでいく”感じだった。
最初は違和感だったものが、だんだんと日常の一部になる。
思い出しても、前みたいに大きく揺れない。
でも、完全には消えない。
むしろ、奥の方に静かに残り続ける。
ある日、友達に言われた。
「まだ引きずってんの?」
軽い調子で。
「いや、別に」
反射的にそう答える。
本当は、どうなんだろうと思う。
引きずっている、というより。残っている。そんな感じだった。
甘い恋だったかと言われれば、たぶん違う。
最初はそうだったかもしれないけど、最後までずっと甘かったわけじゃない。
むしろ、苦かった。
でも、その苦さがあるからこそ、やけに記憶に残る。
「癖になる味ってやつか」
ふと、そんな言葉が浮かぶ。
最初は苦くて、もういいやって思うのに。
気づけばまた思い出している。
夜、部屋の電気を消して、ベッドに横になる。
静かになると、余計に思考が動く。
「もしさ」
ありえない前提の話を、頭の中で始めてしまう。
もし、あのとき。
もう少し素直だったら。もう少し踏み込めていたら。もう少し、ちゃんと話せていたら。
違う未来があったのかもしれない。
でも、その“もし”は、どこまでいっても想像でしかない。
現実は変わらない。
それでも思う。
あの時間は、無駄だったのか。
答えは、たぶん違う。
うまくいかなかったし、苦い思いもたくさんした。
でも、それだけじゃなかった。
ちゃんと笑っていたし、ちゃんと好きだった。
その事実まで否定することはできない。
「……めんどくさいな」
小さく笑う。
忘れられたら楽なのに。嫌いになれたら、もっと楽なのに。
どっちもできない。
中途半端に残っているから、余計に厄介だ。
でも、その中途半端さこそが、この恋の“形”なんだと思う。
甘すぎず、苦すぎず、でも確実に、舌に残る味。
消そうとしても消えないし、完全に見えなくなることもない。
スマホを手に取る。
連絡先は、まだ消していない。
消す理由も、残す理由も、はっきりしないまま。
画面を閉じる。
「……まあ、いいか」
無理に結論を出す必要はない。このままでもいい。
窓の外を見ると、夜は静かに続いている。
あの頃と同じ夜なのに、もう隣には誰もいない。
それでも、確かに残っている。
この胸の中に。
ほろ苦くて、少しだけ癖になる、そんな記憶が。
第七章:消えない未来
時間が経てば、全部どうでもよくなると思っていた。
思い出も、感情も、少しずつ薄れて、やがて何も残らなくなると。
でも実際は、そんな単純なものじゃなかった。
忘れる、というより。形を変えて、残り続ける。
日常の中に溶け込んで、ふとした瞬間にだけ顔を出す。
それが、一番厄介だった。
駅のホームで電車を待ちながら、ぼんやりと線路を見つめる。
同じ時間、同じ場所。前にも、ここに立っていた記憶がある。
隣に、彼女がいた。
他愛もない話をして、電車が来るまでの数分を、なんとなく共有していた。
その時間が、今になって妙に鮮明に浮かぶ。
「……変なの」
思わず小さく呟く。
忘れようとしているわけでもないのに、勝手に思い出してしまう。
しかも、嫌な記憶だけじゃない。
むしろ、何気ない瞬間ばかりが残る。
もし、あのとき。
考えても意味のない“もし”が、また頭をよぎる。
もし、あの夜ちゃんと話していたら。もし、あの違和感をそのままにしなかったら。もし、もう少し素直だったら。
その全部を並べてみても、結局たどり着くのは同じ場所かもしれない。
それでも考えてしまう。“別の未来”があった可能性を。
「後悔してる?」
ふと、以前誰かに聞かれたことを思い出す。
そのときは、うまく答えられなかった。
後悔している部分も、確かにある。もっとこうすればよかった、という思いもある。
でも、それだけじゃない。
「あの時間がなければよかったか」と言われたら、それは違うと思う。
むしろ逆で。
あの時間があったからこそ、今の自分が少しだけ分かるようになった気がする。
人を好きになること。近づくこと。期待すること。
そして、すれ違うこと。
全部、実際に経験してみて初めて分かるものだった。
頭で分かっているつもりでも、実際に感じるのとは全然違う。
あの恋は、その全部を教えてくれた。
電車がホームに入ってくる。
風が強く吹いて、髪が揺れる。
一瞬だけ、あのときの光景と重なる。
隣にいたはずの人が、もういない。
それでも、思い出だけは同じ場所に残っている。
それが、不思議だった。
ドアが開いて、車内に入る。
空いている席に座りながら、ぼんやりと窓の外を見る。
流れていく景色。
どこかで見たことがあるようで、でも確実に違う。
あの頃と同じ場所なのに、もう同じ意味を持っていない。
「未来ってさ」
ふと、彼女が言っていたことを思い出す。
「思ってたより、ちゃんとしてないよね」
そのときは、笑って聞き流していた。
でも今なら、少し分かる気がする。
未来は、綺麗に繋がっているわけじゃない。思い通りに進むわけでもない。
むしろ、途切れて、ズレて、予想していなかった形になる。
俺たちの未来も、そうだった。
続くと思っていた関係は終わって、想像していた形にはならなかった。
でも、その“ズレた未来”の中にも、ちゃんと意味はあった。
無駄じゃなかったと思える何かが、確かに残っている。
「……まあ、こんなもんか」
小さく呟く。
完全に納得しているわけじゃない。
でも、受け入れ始めている自分がいる。
あの恋は、終わった。でも、消えたわけじゃない。
見えなくなっただけで、ちゃんと中に残っている。
ほろ苦い、という言葉がしっくりくる。
甘さだけでもなく、苦さだけでもない。
その両方が混ざっているからこそ、忘れられない味になる。
電車が次の駅に止まる。
ドアが開いて、人が入れ替わる。
その流れをぼんやり見ながら、思う。
もしまた、どこかで会うことがあったら。
そのときは、どんな顔をするんだろう。
普通に話せるのか、少し気まずくなるのか、それとも、何も感じないのか。
答えは分からない。
でもひとつだけ、言えることがある。
あの恋は、ちゃんと“あった”ということ。
そして、それはこれから先も、完全に消えることはないということ。
窓に映る自分の顔を見ながら、ふと思う。
少しだけ、大人になったのかもしれない。
ほんの少しだけ。
あの、ほろ苦い時間の分だけ。
第八章:そんなbitterな話
夜の街は、相変わらず同じ顔をしている。
明るすぎるコンビニの光も、等間隔に並ぶ街灯も、どこか無機質なまま変わらない。
変わったのは、自分のほうだけだった。
あの頃と同じ道を歩いているのに、感じ方が違う。
同じ景色なのに、もう同じ意味を持っていない。
隣にいたはずの人がいないだけで、こんなにも変わるものなのかと思う。
ポケットからスマホを取り出す。
特に理由はない。ただの癖みたいなものだ。
画面をつけて、少しだけ迷って、トーク一覧を開く。
まだ、残っている。
消していないのか、消せていないのか。
その違いは、自分でもよく分からない。
スクロールすれば、そこにはまだ“二人”がいる。
笑っている言葉も、少しだけぶつかった言葉も、全部そのまま残っている。
時間だけが、そこに取り残されているみたいだった。
「……ほんと、しつこいな」
自分に向けて、小さく呟く。
忘れたつもりでいても、こうやって簡単に引き戻される。
完全に切り離すことなんて、できない。
画面を閉じて、空を見上げる。
今日は少しだけ星が見える。
あの頃も、こんな夜があった気がする。
何気なく空を見上げて、どうでもいい話をして、それでもどこか満たされていた時間。
「……悪くなかったよな」
自然と、そんな言葉が出る。
全部がうまくいっていたわけじゃない。
むしろ、うまくいかなかったことのほうが多い。
でも、それでも。
あの時間が“無駄だった”とは思えない。
恋って、もっと分かりやすいものだと思っていた。
好きになって、うまくいって、ちゃんと続いていくものだと。
でも現実は違った。
好きでも、続かないことがある。
大事にしていても、すれ違うことがある。
その不器用さごと、全部ひっくるめて、“恋”だったのかもしれない。
「出会わなきゃよかったな」
あのとき、言いかけた言葉を思い出す。
でも今なら、はっきり分かる。
それは違う。
出会わなければよかったなんて、そんなふうには思えない。
むしろ、出会ってしまったからこそ、この感情も、この記憶も、生まれた。
ほろ苦い、という言葉が一番近い。
甘さもあった。でも同じくらい、苦さもあった。
そのどちらかだけだったら、ここまで残っていなかったと思う。
両方あったから、消えない。
ふと、思う。
もしまた、どこかで会うことがあったら。
無理に話す必要もないし、何かを取り戻そうとする必要もない。
ただ、少しだけ笑えたら、それでいい。
「ああ、そんなこともあったな」って。
それくらいの距離で、いられたらいい。
風が少しだけ強く吹く。
夜の空気が、頬を撫でる。
冷たいのに、どこか心地いい。
「……これでいいか」
小さく、そう呟く。
完全に忘れる必要もない。
無理に切り離す必要もない。
このまま、持っていけばいい。
少しだけ苦くて、でも確かにあたたかい記憶として。
歩き出す。
特に目的地はないけど、それでも足は前に進む。
過去は、後ろに残るものじゃない。
こうやって、一緒に持って進んでいくものなんだと思う。
消えることも、見えることも、忘れることもできない。
だからこそ、意味がある。
だからこそ、愛おしい。
「……まあ、そんなbitterな話だな」
誰に聞かせるでもなく、そう呟く。
その言葉は、少しだけ軽くて、でもどこか、ちゃんと重みがあった。
夜の街の中に、その声は溶けていく。
そしてまた、静かに日常が続いていく。
~完~
他にも『Vaundy』の名曲を紹介しておりますので併せてご覧くださいρ(._.*)ρ





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