『おもかげ-self cover-』Vaundy。”妄想ストーリー(彼女側視点)”

Vaundy

このページは別記事で描いたVaundyの『おもかげ-self cover-』という曲をモチーフにした、私の妄想ストーリーの彼女側の視点ですφ(・ω・`)

元記事を読んでいない方は、元記事からご覧になっていただければ幸いです。ρ(._.*)ρ

それでは「おもかげ(彼女側視点)」(´っ・ω・)っすた~と

『おもかげ(彼女側視点)』

第一章:見えすぎる世界

最初に違和感を覚えたのは、いつだっただろう。

はっきりしたきっかけは、思い出せない。

でも、気づいたら——
“みんなと同じように見えていない”ことだけは、わかっていた。


小学生の頃。

クラスで誰かが泣いた。

先生が優しく声をかけて、
周りの子たちも「大丈夫?」と寄っていく。

その光景は、どこにでもあるものだった。

でも、私には違って見えた。

泣いている子の中にある“悲しみ”よりも、
それを見ている周りの子の“戸惑い”や“距離感”のほうが、強く入ってきた。

優しさの中に混ざる、ほんの少しの面倒くささ。
どう接していいかわからない、不安。
早く終わってほしいという気持ち。


それが、全部わかってしまった。


その瞬間、何かがずれた。

「大丈夫?」という言葉が、
ただの言葉にしか見えなくなった。

そこにあるはずの“純粋な優しさ”を、
信じきれなくなった。


それでも、そのときはまだ軽かった。

気のせいかもしれない、で済ませられたから。


でも、年齢を重ねるにつれて、
その“ズレ”はどんどん鮮明になっていった。


中学生になる頃には、はっきり理解していた。

私は、人の“奥”を見てしまう。

言葉より先に、感情が入ってくる。


「楽しいね」

そう言いながら笑っている子の中に、
ほんの少しの退屈が混ざっているのがわかる。

「大丈夫だよ」

そう言っている友達の中に、
誰にも言えない不安が渦巻いているのが見える。


それは、便利でもなんでもなかった。

むしろ——

逃げ場がなかった。


会話をしていても、
言葉に集中できない。

その奥にあるものが、先に入ってきてしまうから。


教室にいるだけで疲れるようになった。

誰かの苛立ち。
誰かの焦り。
誰かの諦め。

それが空気みたいに混ざって、
ずっと流れ込んでくる。


家に帰ると、何もしたくなくなる。

音も、光も、言葉も、全部が多すぎる。

ただ、静かな場所で、何も考えずにいたかった。


それでも、完全には止まらない。

思い出してしまう。

今日見たもの。
感じたもの。


“見えてしまったもの”は、消えない。


高校に入る頃には、ひとつの結論にたどり着いた。

——全部、受け取るのは無理だ。


それから、私は変わった。

正確には、“変えた”。


人との距離を取るようになった。

深く関わらない。
踏み込まない。
踏み込ませない。


話しかけられたら、普通に返す。

笑うべきときには、笑う。

でも、それ以上はしない。


必要以上に近づかないことで、
流れ込んでくるものを減らす。


最初は、罪悪感があった。

冷たい人間になった気がして。


でも、それでもいいと思った。

壊れるよりは、ずっといい。


それでも——

完全には防げなかった。


どれだけ距離を取っても、
見えるものは見える。


だから私は、もう一つの方法を覚えた。


——“流す”。


受け取らないまま、通り過ぎさせる。

意味を考えない。
感情を拾わない。

ただ、“ある”と認識して、手放す。


最初は難しかった。

つい拾ってしまう。

つい考えてしまう。


でも、何度も繰り返すうちに、
少しずつできるようになった。


電車の中。

人の感情が流れてくる。

でも、それを掴まない。

ただ、通り過ぎるのを待つ。


それだけで、世界は少し静かになった。


“全部見えてしまう世界”は変わらない。

でも、“全部背負う必要はない”と知った。


その頃には、もう慣れていた。

人と少し距離を置くことにも。

深く関わらないことにも。


気づけば、楽になっていた。

前よりも、ずっと。


でも。

ひとつだけ、消えなかったものがある。


——孤独。


誰かと話していても、
どこかで“外側”にいる感覚。


本当に見えているものを、共有できない。

説明しても、伝わらない。

伝わらないから、言わない。


その繰り返し。


夜、一人でいるとき。

ふと、思う。


——同じ人、いないのかな。


同じように見えて、
同じように苦しんで、
同じように距離を取っている人。


そんな人がいたら、
少しは楽になるのかもしれない。


でも、そんな都合のいい存在はいない。

そう思っていた。


だから私は、今日も“流す”。

見えるものを、
感じるものを、

全部そのまま、流していく。


それが、自分の生き方だと決めていた。


このときまでは、まだ知らなかった。


“同じ人”が、すぐ近くにいることを。

そして、その人の人生に、
ほんの少しだけ関わることになることを。

第二章:同じ人

その日も、いつもと同じ帰り道だった。

人の流れに紛れて、駅へ向かう。

特別なことは何もない。

ただ、“流して”いるだけの時間。


人の感情は、今日も見えていた。

疲れ。
焦り。
諦め。

それらをひとつひとつ掴まずに、
ただ通り過ぎさせる。


慣れた作業だった。

もう苦しくはない。

——はずだった。


ふと、違和感が混ざる。

いつもと同じ流れの中に、
ひとつだけ“引っかかるもの”があった。


最初は、視界の端だった。

人混みの中で、
ほんの少しだけ“浮いている”存在。


足を止めるほどじゃない。

でも、無視できるほどでもない。


視線を向ける。

そこにいたのは、ひとりの男性だった。

特別目立つわけじゃない。

服装も、歩き方も、
周りと同じように見える。


でも——

中身が、違った。


一瞬でわかった。


この人、全部受け取ってる。


人の感情が流れ込んできているのに、
それを“流せていない”。

全部、そのまま抱えている。


それが、はっきり見えた。


歩き方が、少しだけ重い。

視線が、どこにも定まっていない。

でも、無理やり“普通”を装っている。


——ああ。


懐かしい感覚だった。


昔の自分と、同じ。


見えすぎて、
でもどうしていいかわからなくて、
全部抱え込んでいた頃の自分。


胸の奥が、少しだけざわつく。


本来なら、通り過ぎるべきだった。

関わらない。

それが、自分のルール。


でも。

その日は、足が止まった。


理由は、すぐにわかった。


見ていられなかった。


ただ、それだけだった。


彼は、気づいていない。

自分がどれだけ消耗しているか。


いや、気づいているのかもしれない。

でも、どうしようもなくて、
見えないふりをしている。


その“無理している感じ”が、
やけに刺さった。


——このままだと、潰れる。


そう思った瞬間、
もう決まっていた。


声をかけるかどうかじゃない。


“かけてしまう”。


その一択だった。


「ねえ」


呼びかけた瞬間、
少しだけ後悔がよぎる。


——やめればよかった。


関わったら、終わりが必要になる。

それはわかっていた。


でも、もう遅い。


彼が振り返る。


その目を見た瞬間、確信する。


やっぱり、同じだ。


表面は普通なのに、
奥にあるものが隠しきれていない。


それでも必死に隠そうとしている。


「前から思ってたんだけどさ」

言葉を選ぶ。

強すぎてもダメ。
遠すぎても届かない。


「見えないふり、してるでしょ」


その言葉を投げたとき、
彼の空気がわずかに揺れた。


一瞬でわかる。


当たっている。


でも、彼は否定した。


それでいい。


無理に認めさせる必要はない。


大事なのは、“気づかせること”じゃない。


“止めること”。


これ以上、抱え込ませないこと。


「見てるだけじゃ、しんどくない?」


あえて柔らかく言う。

責めないように。


彼は、何も言い返せなかった。


その反応で、十分だった。


全部、わかっている。

でも、どうにもできていない。


その状態。


昔の自分と、同じ。


少しだけ、距離を詰める。

でも、近づきすぎない。


その“間”が大事だった。


踏み込みすぎれば、壊れる。

離れすぎれば、届かない。


「全部、受け取らなくていいよ」


その言葉は、
昔の自分に向けて言いたかった言葉でもあった。


彼は、少しだけ揺れた。


その揺れを見て、思う。


——大丈夫。

届いてる。


それだけで、十分だった。


名前は聞かない。

聞いてしまったら、
関係が“現実”になってしまう。


現実になれば、終わり方が難しくなる。


だから、この距離のままでいい。


“通りすがり”。


それが、この関係の最適な形だった。


一緒に歩く。

会話は少ない。


でも、彼の中の流れが、
少しずつ変わっていくのがわかる。


抱え込んでいたものが、
少しだけ緩んでいく。


それを見て、
ほんの少しだけ安心する。


同時に、わかってしまう。


——長くはいられない。


これは、“通過点”。


彼が変わるまでの、短い時間。


それ以上でも、それ以下でもない。


夕焼けが、少しずつ色を変えていく。


その中で、彼の横顔を見る。


少しだけ、柔らかくなっている。


——よかった。


小さく、そう思う。


でも同時に、胸の奥が少しだけ痛んだ。


——もうすぐ、終わる。


それでもいいと、最初から決めていたはずなのに。


ほんの少しだけ、
“惜しい”と思ってしまった。


その感情を、すぐに流す。


掴まない。


それが、自分のやり方だから。

第三章:触れない距離

それから、彼と会う回数は自然と増えた。

約束はしていない。

時間も決めていない。

それでも、同じ場所に行けば、いる。

いなければ、その日はそれだけ。


それくらいの距離が、ちょうどよかった。


「今日も疲れてるね」

いつものように声をかける。

彼はいつも通り、「別に」と返す。


そのやり取りが、少しだけ心地よくなっている自分に気づく。


——よくないな。

そう思う。


心地よさは、距離を狂わせる。

距離が狂えば、終わり方が変わる。


だから、気づかないふりをする。


彼は、少しずつ変わっていった。

最初に会ったときよりも、
明らかに“軽く”なっている。


人の感情は、相変わらず見えているはずなのに。

それでも、前ほど引きずられていない。


「全部、受け取らなくていい」

あの日言った言葉を、
ちゃんと自分の中で使い始めている。


それがわかる。

見える。


——早いな。

少しだけ、そう思った。


嬉しいはずだった。

彼が楽になることは、
最初から望んでいたことだから。


でも。

同時に、別の感情も浮かんでくる。


——もうすぐ終わる。


その事実が、はっきりと見え始めていた。


彼の歩き方が変わる。

視線の置き方が変わる。

人との距離の取り方が変わる。


それらはすべて、“自分がいなくてもいい状態”に向かっている証拠だった。


ある日、彼が聞いてきた。

「なんで、話しかけてきたの」


少しだけ、考える。

本当の理由は簡単だった。


見ていられなかったから。


でも、それだけじゃない。


同じだったから。


それも、事実だった。


「見てられなかったから」

そう答える。


彼は少しだけ、強く返してきた。

「余計なお世話」


その言葉に、ほんの少しだけ安心する。


——大丈夫。

まだ依存していない。


もし、ここで優しく受け取られていたら。

きっと、距離はもっと近くなっていた。


それは、避けなければいけない。


だから、このくらいの反発がちょうどいい。


彼と並んで歩く。

会話は少ない。


でも、沈黙が重くない。


それは、危険だった。


人は、言葉よりも“空気”で近づく。


その空気が、少しずつ“当たり前”になっている。


それが、一番危ない。


「同じだったから」

そう言ったとき、彼が反応した。


その瞬間、少しだけ後悔する。


——言いすぎた。


自分のことを、あまり見せすぎるべきじゃない。


でも、引き返すことはしない。


少しだけ“謎”が残るくらいでいい。


それ以上は、いらない。


夕焼けの中、彼の横顔を見る。


最初に見たときよりも、
少しだけ柔らかくなっている。


あのときの“張りつめた感じ”が、薄れている。


——よかった。


それが、すべてだった。


それ以上を望んではいけない。


それ以上を望んだ瞬間、この関係は壊れる。


わかっているのに。


少しだけ、思ってしまう。


——もし、普通に出会っていたら。


名前を聞いて、
連絡先を交換して、
休日に会って、

そんな“普通の関係”になっていたら。


どうなっていただろう。


その想像が浮かんだ瞬間、
すぐに流す。


掴まない。


それは、自分のルール。


でも、完全には消えなかった。


帰り際。

彼との距離が、ほんの少しだけ近づいた。


触れそうで、触れない。


その距離。


一歩踏み出せば、触れられる。


でも、踏み出さない。


踏み出せば、戻れなくなるから。


「無理に変わらなくていいよ」

そう言ったとき、
少しだけ声が揺れた気がした。


自分でも気づかないくらいの、わずかな揺れ。


彼は気づいていない。


それでいい。


その言葉は、本心だった。


変わる必要はない。

ただ、受け取り方を知ればいい。


それを、彼はもう掴み始めている。


だから。


もうすぐ終わる。


その確信が、静かに胸に落ちる。


帰り道の終わり。

彼と別れる。


「またね」


その言葉を聞いたとき、
ほんの少しだけ、胸が締め付けられる。


——“また”は、ない。


そうわかっているのに。


何も言わない。


言ってしまったら、
すべてが変わってしまうから。


彼の背中を見る。


少しだけ軽くなった歩き方。


それを見て、思う。


——もう大丈夫。


そして同時に。


——もう、いなくてもいい。


その二つの感情が、
同じ重さで胸に残る。


それを、静かに流す。


掴まない。


それが、自分の選んだやり方だから。

第四章:消える決断の瞬間

その日は、最初からわかっていた。

——今日で終わりにする。

理由は、ひとつしかなかった。

彼が、もう大丈夫だから。


朝、目が覚めたとき。

いつもと同じ部屋。
同じ光。
同じ静けさ。

でも、胸の奥だけが少し違っていた。


終わりを決めた日の静けさ。


何かを失う前の感覚に、よく似ていた。


顔を洗う。

鏡を見る。

そこにいる自分は、いつも通りだった。

でも、ほんの少しだけ、表情が柔らかい。


——関わりすぎたな。


小さく、そう思う。


最初は、ただ“通過点”のつもりだった。

必要なことだけ伝えて、
それが終われば離れる。


それだけの関係。


でも、気づけば。


彼と歩く時間が、
少しだけ“特別”になっていた。


それに気づいた時点で、
もう本当は、終わらなきゃいけなかった。


でも、少しだけ伸ばしてしまった。


理由は、簡単だった。


まだ一緒にいたかった。


その気持ちを認めた瞬間、
少しだけ苦しくなる。


——ダメだな。


そう思って、すぐに流す。


掴まない。


それが、自分のルールだから。


夕方。

あの道へ向かう。


歩きながら、彼のことを考える。


最初に見たときの、あの重さ。

全部を抱え込んでいたあの感じ。


今はもう、違う。


流せるようになっている。

距離を取れるようになっている。


“自分で選べる状態”になっている。


それがわかるからこそ、
今日で終わりにする。


もし、ここで続けてしまったら。


彼は、私に慣れてしまう。


私がいる状態を、
“前提”にしてしまう。


それは、違う。


彼が持つべきものは、
“私”じゃない。


“自分の中にあるもの”だ。


それを、ちゃんと残すために。


私は、いなくならなきゃいけない。


あの場所に着く。

彼は、まだ来ていない。


少しだけ安心する。


最後の顔を見たら、
きっと迷う。


だから、その前に決めておく。


会ったとしても、
今日で終わりにする。


でも。


もし会わなかったら。


それは、それでいい。


その方が、きっと綺麗に残る。


“おもかげ”として。


少しだけ時間をずらして歩く。


彼とすれ違わないように。


見つけてしまわないように。


それでも、心のどこかで思ってしまう。


——もし、会えたら。


その考えを、すぐに流す。


掴まない。


でも、完全には消えない。


足を止める。

少しだけ、振り返る。


遠くに、人の流れが見える。


その中に、彼がいるかもしれない。


でも、確認しない。


それが、自分の選択だから。


小さく息を吐く。


胸の奥に、わずかな痛みが残る。


でも、それは悪いものじゃない。


必要な痛み。


“ちゃんと関わった証拠”。


「……大丈夫」


小さく呟く。


彼に向けてなのか、
自分に向けてなのか、

もうわからない。


でも、その言葉は、確かだった。


彼はもう、ひとりで歩ける。


私はもう、いなくていい。


それでいい。


それが、この関係の完成。


歩き出す。

彼とは逆方向に。


もう、振り返らない。


振り返ったら、
きっと戻ってしまうから。


夕焼けが、少しずつ色を失っていく。


その中で、思う。


もし、普通に出会っていたら。


そんな未来は、最初から存在しない。


だから、この形でいい。


“触れないまま残る関係”。


それが、一番壊れない。


一番、綺麗に残る。


胸の奥に、静かな温度が残る。


消えないもの。


見えないまま、残るもの。


それを抱えたまま、歩いていく。


——流れに任せる。


その言葉を、今度は自分に向けて使う。


そして、静かに姿を消す。


誰にも気づかれないまま。


でも、確かに“残る形”で。

~完~

数年後の再会(Ifルート)も書いてみましたのでもしよろしければ読んでみてくださいρ(._.*)ρ

冒頭にも書きましたが、彼側の視点ストーリを読んでいないようでしたら読んでみてくださいρ(._.*)ρ

また、他にも『Vaundy』の名曲を紹介しておりますので併せてご覧くださいρ(._.*)ρ

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