『置き手紙』Vaundy。”妄想ストーリー 数年後の再会(Ifルート)”

Vaundy

このページは別記事で描いたVaundyの『置き手紙』という曲をモチーフにした、私の妄想ストーリーの数年後の再会(Ifルート)ですφ(・ω・`)

元記事を読んでいない方は、元記事からご覧になっていただければ幸いです。ρ(._.*)ρ

それでは「置き手紙 数年後の再会(Ifルート)」(´っ・ω・)っすた~と

『置き手紙』~数年後の再会(Ifルート)~

第一章:数年後の街

数年なんて、あっという間だった。

気づけば、あの街からも、あの時間からも、
少しだけ遠い場所にいた。

仕事にも慣れて、
新しい生活にも、それなりに馴染んで。

夜に一人で飲むことも、減った。

――減っただけで、なくなったわけじゃないけど。


久しぶりに、その街に戻ったのは、ただの偶然だった。

出張。

それだけの理由。

特別な意味なんて、なかったはずだった。


駅を出た瞬間、少しだけ息が止まる。

空気の匂い。

街灯の色。

人の流れ。

何もかもが、少しだけ懐かしい。


「……変わってないな」

小さく呟く。

でも、本当は違う。

変わっていないのは街じゃない。

“思い出し方”だ。


歩き出す。

無意識に、あの帰り道を選んでいた。

コンビニ。
交差点。
あの坂道。

全部、覚えている。

忘れたつもりだったのに。


坂の途中で、足が止まる。

理由はわかっている。

この先に、何があるか知っているから。


「……さすがに行かねぇか」

苦笑する。

もう関係ない場所だ。

今さら行っても、何もない。


それでも、足は動かなかった。


――もし、まだ何か残っていたら?

そんなこと、あるわけない。

わかっている。

でも――


そのときだった。


「……あれ」

聞き覚えのある声。


振り向く。


そこに、いた。


変わっていないようで、少しだけ変わった顔。

髪の長さも、雰囲気も、少しだけ違う。

でも――

間違えるはずがない。


「……久しぶり」

彼女が、先に言った。


時間が止まる。


何を言えばいいのか、わからない。

何年も考えていたはずなのに、

いざその瞬間になると、全部消える。


「……ああ」

やっと出たのは、それだけだった。


沈黙。

でも昔みたいな苦しさはない。

ただ、少しだけぎこちない空気。


「元気そうだね」

彼女が言う。

「まぁな」

「そっか」


それだけの会話。

なのに、やけに重い。


少しだけ、笑う。

お互いに。

どこか照れくさいみたいに。


「仕事?」

彼女が聞く。

「ああ、出張」

「そうなんだ」


何でもない会話。

でも、ちゃんと続いている。

昔みたいに、途切れることなく。


「……そっちは?」

少しだけ勇気を出して聞く。

「普通に働いてるよ」

「そっか」


また、少し沈黙。


でも今回は、逃げなかった。


「なぁ」

自分でも驚くくらい、自然に言葉が出た。


彼女が、少しだけ目を上げる。


「……時間、ある?」


ほんの一瞬、間があった。


その一瞬に、いろんな感情が詰まっていた。


「……少しだけなら」

彼女が答える。


その言葉で、

何かが、ほんの少しだけ動いた気がした。

第二章:同じ場所、違う二人

「少しだけなら」

その一言で、止まっていた時間がゆっくり動き出した。


歩き出す。

自然と、あの公園のほうへ向かっていた。

星を見た場所。

何も言えなかった場所。


「懐かしいね」

彼女が小さく言う。

「ああ」

それだけ返す。

でも、前とは違う。

言葉が少なくても、“逃げている感じ”はなかった。


ベンチに座る。

距離は少しだけ空いている。

でも、それでいいと思えた。

無理に埋める必要も、なかった。


空を見上げる。

星は、あの時と同じようにそこにあった。


「……あのさ」

彼女が先に口を開く。

少しだけ驚く。

前は、こういう時、先に言葉を出すのは彼女だった。

でも今は違う。

その言葉の重みが、ちゃんと伝わる。


「うん」

ちゃんと返す。

逃げずに。


「なんか、変わったね」

少し笑いながら言う。

でもその目は、ちゃんと見ていた。


「……そうかもな」

正直に答える。


「前はさ」

彼女が続ける。

「もっと、言わなかったよね」


胸に刺さる。

でも、逸らさない。


「ああ」

「全部、わかってたけど」

「それでも言わなかったよね」


「……わかってたのか」

思わず漏れる。


「うん」

彼女は、あっさりと頷く。


「全部じゃないけど、だいたいは」

「言えないんじゃなくて、言わないんだなって」


少しだけ、笑う。

苦笑いみたいな。


「当たってる」


その一言で、少し空気が変わる。

誤魔化さないこと。

それだけで、こんなに違うんだと思う。


沈黙。

でも今度は、悪いものじゃない。


「……なんで、言わなかったの?」

彼女が聞く。


これは、避けられない質問だった。


少し考える。

でも、逃げない。


「怖かった」


自分でも驚くくらい、すぐに出た。


「何が?」


「変わること」

「壊れること」

「……失うこと」


言葉にすると、妙にシンプルだった。


「でも結局、全部失った」


その一言で、胸の奥が少しだけ軽くなる。

ずっと抱えていたものを、やっと外に出した感じ。


彼女は、少しだけ目を伏せる。


「……うん」

小さく頷く。


「私も、怖かったよ」


意外だった。


「終わらせるのが」


静かに続ける。


「でもね」

「このまま続くほうが、もっと怖かった」


あの時と同じ言葉。

でも今は、ちゃんと意味が入ってくる。


「……知ってる」


少し間を置いて、続ける。


「今ならわかる」


彼女が、少しだけこちらを見る。


「今なら?」


「ちゃんと、向き合わなかったら」

「続けること自体が、壊していくって」


彼女は何も言わない。

でも、ちゃんと聞いている。


「なぁ」


今度は、自分から。


「今、言っていいか」


一瞬だけ、時間が止まる。


彼女の目が、少しだけ揺れる。


でも、逸らさない。


「……うん」


それだけで、十分だった。

第三章:今、言えること

「……うん」

その一言で、逃げ場はなくなった。

でも、不思議と怖くなかった。


夜の空気は、あの時と似ている。

星も、同じように光っている。

でも――

自分は、あの時の自分じゃない。


ゆっくり息を吸う。

吐く。

それだけで、少し落ち着く。


「俺さ」

言葉を探さない。

もう、整えすぎない。


「ずっと、わかってたんだと思う」


彼女が、静かにこちらを見る。


「言わなきゃいけないこと」

「ちゃんと、選ばなきゃいけないこと」


少しだけ、笑う。

自嘲みたいに。


「でも、全部後回しにした」


あの頃の自分が、はっきり見える。


「今じゃなくてもいいって」

「まだ大丈夫だって」

「そのうち、ちゃんとするって」


言葉が、止まらない。


「でもさ」

「“そのうち”なんて、来なかった」


静かな夜に、声だけが落ちていく。


「気づいた時には、もう全部終わってた」


少しだけ間を置く。


「……あの紙、今でも持ってる」


彼女の目が、ほんの少しだけ揺れる。


「『腐りきるまで、別てぬ二人で』」


ゆっくり、言葉にする。


「最初は意味わかんなかった」

「なんでこんなこと書いたのかも」


でも――


「今ならわかる」


彼女は、何も言わない。

ただ、ちゃんと聞いている。


「なれなかった形だろ」


一瞬だけ、彼女の呼吸が止まる。


「ちゃんと向き合って」

「ちゃんと選んで」

「ちゃんと続けていく二人」


「それができなかったから、ああなった」


沈黙。


でも、それは逃げの沈黙じゃない。

“受け止める時間”だった。


「……うん」

彼女が、小さく頷く。


それだけで、十分だった。


ここからが、本当の核心。


「だからさ」


一歩、言葉を踏み出す。


「今、言う」


彼女の目が、まっすぐこっちを見る。


逃げられない。

でも、逃げない。


「好きだ」


静かに、でもはっきりと。


「ちゃんと、好きだ」


喉が震える。

でも止めない。


「前も、好きだった」

「でも、ちゃんと向き合ってなかった」


一歩ずつ、自分をほどいていく。


「今は違う」


「怖いのは変わってない」

「でも、逃げるほうがもっと嫌だ」


少しだけ間を置く。


「だから、今度はちゃんと選ぶ」


彼女の目が、揺れる。


「お前と、ちゃんと向き合いたい」


それは願いじゃない。


“選択”だった。


沈黙。


長い。

でも、不思議と苦しくない。


彼女が、ゆっくり息を吐く。


「……ずるいね」


少し笑いながら言う。


「なんで今なのって思うよ」


「うん」

素直に頷く。


「でも」


彼女の声が、少しだけ真剣になる。


「嬉しいよ」


胸が、少しだけ軽くなる。


でも、終わりじゃない。


彼女は続ける。


「たださ」


ここが、リアルな答え。


「すぐ“元通り”には、なれない」


「……うん」


それは、わかっていた。


「また同じになるの、怖いから」


「うん」


逃げない。


「でも」


少しだけ間を置いて、


「もう一回、ちゃんと向き合うなら」


視線が、まっすぐ重なる。


「今のあなたとなら、いいかもって思ってる」


静かに、でも確かに。


それは“許し”じゃない。


“もう一度、選び直す余地”。


ゆっくり頷く。


「……ありがとう」


それしか言えなかった。


でも、それでよかった。


星が、静かに光っている。


あの時と同じ場所。

でも、もう同じじゃない。


言えなかった言葉は、もうない。


残っているのは、

これからどうするかだけ。


二人は、少しだけ距離を詰める。


でも、触れない。


まだ、その距離でいい。


今度は――

急がずに、でも逃げずに。


ちゃんと、進んでいくために。

第四章:もう一度はじめる距離

それから、すぐに何かが変わったわけじゃない。

むしろ――

何も変わらない日が続いた。


連絡先はそのままだったから、
改めて交換する必要もなかった。

でも、最初の一通はやけに重かった。


「今日はありがとう」

送るだけで、数分悩む。

昔なら、こんなことで迷わなかったのに。


既読がつく。

返信が来るまでの数分が、やけに長い。


「こちらこそ」

それだけ。


短い。

でも、ちゃんと返ってきた。

それだけで、少しだけ安心する。


そこから、ゆっくり始まった。


毎日じゃない。

無理に続けることもしない。

でも、途切れない。


「今日寒いね」
「仕事どう?」
「最近忙しい?」


何でもない会話。

でも、前とは決定的に違うことがあった。


“逃げていない”。


返す言葉を選ぶとき、

前は“当たり障りのない答え”を選んでいた。

でも今は違う。


「ちょっときついけど、なんとかやってる」

「正直、疲れてる」


ちゃんと、自分の状態を言葉にする。

それだけで、こんなにも違うのかと思った。


彼女も同じだった。


「今日はちょっと落ち込んだ」

「なんかうまくいかない日だった」


前よりも、少しだけ素直だった。


それが、心地よかった。


ある日、

「今週、少し時間ある?」

彼女から来た。


一瞬、止まる。

でも今回は、すぐに打つ。


「ある」


それだけでいい。



待ち合わせ。

前と同じ駅。

でも、少しだけ違う時間帯。


先に着いていたのは、彼女だった。


「お待たせ」

「ううん、今来たとこ」


同じ会話。

でも、違う空気。


少しだけ歩く。

沈黙がある。

でも、嫌じゃない。


「……なんかさ」

彼女が言う。


「前より、話しやすい」


少し笑う。


「前は?」


「前は……ちょっと怖かった」


その言葉は、軽くなかった。


「何考えてるかわからなかったから」


胸に、少し刺さる。

でも、逃げない。


「今は?」


「今は、わかる」


少しだけ、安心した顔で言う。


「ちゃんと考えてるんだなって」


それだけで、十分だった。


歩きながら、ふと思う。


前は、“言葉にしない関係”だった。


でも今は違う。


不器用でもいい。

上手くなくてもいい。


“言葉にしようとしている関係”。


それが、こんなにも違う。


公園に着く。

あの場所。


自然と、少しだけ笑う。


「また来たな」


「ね」


ベンチに座る。

前より、ほんの少しだけ近い距離。


でも、触れない。


その距離が、ちょうどよかった。


「さ」

彼女が言う。


「これから、どうする?」


シンプルな問い。


でも、前とは違う。


今回は、ちゃんと答える。


「ゆっくりでいいと思ってる」


「うん」


「急いで戻るんじゃなくて」


「うん」


「ちゃんと、作り直したい」


彼女が、少しだけ目を細める。


「……うん」


それだけで、通じた。



夜空を見上げる。

星は変わらない。


でも、自分たちは変わった。


前は、

言えなかった。


今は、

言える。


それだけで、

未来は少しだけ違って見えた。


隣にいる。

でも、無理に近づかない。


その距離の中に、

ちゃんとした“意味”がある。


これが、

もう一度はじめるということだった。

第五章:触れてしまう距離

その日は、少しだけ空気が違っていた。

理由はわからない。

でも、こういう日はわかる。

何かが、動く日。


仕事終わりに会う約束。

前よりも自然に決まった予定。


「今日、遅くなるかも」

彼女からの連絡。


「待ってる」

すぐに返す。


前なら、こうは言えなかった。

“重いと思われるかも”とか、
“迷惑かもしれない”とか、

余計なことを考えていた。


でも今は違う。


“どう思われるか”じゃなくて、

“どうしたいか”で選ぶ。


それだけで、こんなにも楽だった。


夜。

駅前。

少しだけ人が多い時間。


彼女は、少し遅れて来た。


「ごめん、待った?」

息を少し切らしながら。


「大丈夫」

自然に言える。


ほんの少しだけ、距離が近い。


前よりも。

でも、まだ触れない。


「どこ行く?」


「どこでもいいよ」


少しだけ笑う。


こういう何でもないやり取りが、
ちゃんと“続いている”のが不思議だった。


歩き出す。

人の流れに紛れる。


ふと、彼女の手が近くにあることに気づく。


触れられる距離。


前は、何も考えずに触れていた。


でも今は違う。


一度離れた距離は、簡単には戻らない。


だからこそ――

迷う。


触れていいのか。

まだなのか。


その時だった。


人の流れが少しだけぶつかる。


彼女の体が、軽くこちらに寄る。


「……あ、ごめん」


その瞬間、

無意識に、手が動いた。


彼女の腕を、軽く引く。


ほんの一瞬。


でも、確かに触れた。


時間が、止まる。


彼女も、少しだけ驚いた顔をする。


目が合う。


言葉が出ない。


でも――

離さなかった。


強く握るわけじゃない。

でも、逃げるようにも離さない。


彼女のほうも、動かない。


数秒。

でも、長い時間に感じる。


「……久しぶりだね」

彼女が、少しだけ笑う。


「……ああ」


それだけ。


でも、その一言で、

“戻った”んじゃないことがわかる。


“新しく繋がった”んだ。


ゆっくり、手を離す。


でも、距離は前より近いまま。


歩き出す。


今度は、さっきより自然だった。


無理に近づくわけでもない。

でも、もう逃げない。


店に入る。


席に座る。

向かい合う。


前よりも、ちゃんと目が合う。


「さっきさ」

彼女が言う。


「ちょっとドキッとした」


少しだけ照れながら。


「……俺も」


正直に返す。


隠さない。


それだけで、空気が少し柔らかくなる。


「前はさ」

彼女が続ける。


「当たり前だったのにね」


「……ああ」


当たり前だった距離。

当たり前だった温度。


それを一度失って、

やっとわかる。


どれだけ大事だったか。


でも今は――


“当たり前”じゃない。


“ちゃんと選んでいる距離”。


「ねぇ」

彼女が、少しだけ真剣な顔になる。


「これさ」


一瞬、間を置いて、


「ちゃんと進んでるって思っていい?」


まっすぐな問い。


逃げない。


「思っていい」


はっきり言う。


「今度は、逃げない」


彼女が、少しだけ目を細める。


安心したような、でもまだ完全じゃない表情。


「……うん」


その一言が、すごく重かった。


でも、心地よかった。


夜が少し深くなる。


帰り道。


さっきよりも、自然に近い距離。


触れない。

でも、もう遠くない。


それでいいと思えた。


焦らない。


でも、止まらない。


それが、今の二人だった。

第六章:もう一度、選ぶ

帰り道は、静かだった。

でも、その静けさは前とは違う。

言葉がなくても、不安じゃない。

ただ、考えている時間。


駅に向かう途中。

信号待ちで、足が止まる。


隣に、彼女がいる。

近い。

でも、まだ触れない。


ふと、思う。


ここで、また曖昧に終わることもできる。

前みたいに。


何も言わずに、
「またね」で終わって、


また少しずつ、距離ができていく。


それは、楽だ。

怖くない。


でも――


それは、もう選ばない。


信号が変わる。

歩き出す。


「なぁ」


声をかける。


彼女が、こちらを見る。


「ちゃんと決めたい」


その一言で、空気が変わる。


「……何を?」


わかっているはずの問い。

でも、ちゃんと答える。


「俺たちのこと」


逃げない。


彼女は、少しだけ目を伏せる。


考えている。


「……うん」


ゆっくり、頷く。


そのまま、少し歩く。


「さ」

彼女が言う。


「あなたは、どうしたいの?」


まっすぐな問い。


前なら、曖昧にしていた。


でも今は違う。


立ち止まる。


彼女も止まる。


ちゃんと向き合う。


「一緒にいたい」


シンプルな言葉。

でも、それでいい。


「ちゃんと」


付け足す。


「逃げずに」


それが、今の自分の全部。


彼女の目が、揺れる。


でも、逸らさない。


「……怖くないの?」


小さな声。


「怖いよ」


即答する。


「めちゃくちゃ怖い」


少し笑う。


「また同じになるかもしれないし」

「また壊すかもしれないし」


でも――


「それでも、やる」


はっきり言う。


「今度は逃げないって決めたから」


沈黙。


長い。


でも、待つ。


前みたいに、“答えを急がない”。


彼女が、ゆっくり息を吐く。


「……ずるいね」


少し笑いながら。


「なんで今なのって思うよ」


「うん」


否定しない。


「でも」


彼女の声が、少しだけ柔らかくなる。


「ちゃんと向き合ってくれるなら」


一歩、近づく。


距離が、縮まる。


「私も、ちゃんと向き合う」


それは、許しじゃない。


“同じ選択”。


胸の奥が、少しだけ熱くなる。


「……ありがとう」


それしか言えない。


でも、十分だった。


その瞬間――


彼女の手が、少しだけ動く。


迷いながら、

でも確かに。


そっと、触れる。


指先だけ。


ほんのわずか。


でも――


今までで一番、確かな感触だった。


ぎゅっと握るわけじゃない。


でも、離さない。


彼女のほうも、引かない。


そのまま、少しだけ笑う。


「これさ」


彼女が言う。


「もう一回、始めるってことでいい?」


その言葉に、

少しだけ胸が詰まる。


「うん」


ちゃんと頷く。


「今度は、ちゃんと始める」


夜空を見上げる。


星は変わらない。


でも、自分たちは変わった。


言えなかった言葉は、もうない。


逃げた時間も、もうない。


あるのは――


これから、どうするかだけ。


二人は、ゆっくり歩き出す。


手は、まだ軽く触れているだけ。


でも、それでいい。


強く握る必要なんてない。


ちゃんと選んでいるから。


もう一度。


でも今度は――


同じじゃない二人で。

最終章:それでも一緒にいる理由

季節が、いくつか過ぎた。


最初の頃は、ぎこちなかった。

連絡の頻度も、会う回数も、
どこまでが正解なのか分からなかった。


少し近づいては、迷って。

少し離れては、不安になって。


でも、違っていたのは一つだけ。


逃げなかった。


前みたいに、“なんとなく続く関係”じゃなかった。


ちゃんと話した。

ちゃんとぶつかった。

ちゃんと選んだ。


その積み重ねが、少しずつ形になっていった。


ある日、

「ねぇ」

彼女が、何でもない顔で言う。


「これさ、前より疲れるね」


少し笑う。


「わかる」


「でもさ」


少しだけ間を置いて、


「前より、ちゃんと一緒にいる感じする」


その言葉で、全部報われた気がした。



季節がまた一つ変わる。


部屋に、彼女がいる時間が増えた。


最初は、ただ遊びに来るだけ。

そのうち、泊まるようになって。


気づけば、

歯ブラシが二本になっていた。


それが、やけに現実的で、

少しだけ怖くて、

でも――

嬉しかった。



小さな喧嘩もした。


「なんでちゃんと言わないの」


あの頃と同じことを言われる。


でも今回は違う。


「ごめん」


ちゃんと謝る。


「今、ちゃんと考えてる」


ちゃんと伝える。


それだけで、

終わり方が変わる。



ある夜。


ベランダに出る。


あの頃と同じ場所。

同じ夜。

同じ空。


でも――

隣に、彼女がいる。


「寒いね」


「な」


自然に、距離が近づく。


今はもう、迷わない。


「なぁ」


声をかける。


彼女が、少しだけ振り向く。


「ん?」


少しだけ、間を置く。


昔の癖が、まだ少しだけ残っている。


でも――

止まらない。


「結婚しよう」


シンプルに言う。


言葉を飾らない。


逃げない。


彼女が、止まる。


目を少しだけ見開く。


驚き。


でも――

逃げない。


「……急じゃない?」


少し笑いながら。


「ちゃんと考えてる」


はっきり言う。


「この先も、ずっと一緒にいたい」


「逃げないで」


「ちゃんと、選び続ける」


それが、今の自分の全部だった。


沈黙。


長い。


でも、怖くない。


彼女が、ゆっくり息を吐く。


「……前はさ」


少しだけ、遠くを見る。


「こういうの、言わなかったよね」


「うん」


「だからさ」


少しだけ笑う。


「嬉しい」


胸が、少しだけ熱くなる。


「でも」


彼女が続ける。


「ちゃんと約束して」


真剣な目で、こっちを見る。


「逃げないって」


「言葉にするって」


「ちゃんと、選び続けるって」


一つずつ、確認するように。


「約束する」


迷わず言う。


「今度は、ちゃんとやる」


彼女が、少しだけ笑う。


「……じゃあ、いいよ」


その一言で、

すべてが繋がる。



手を取る。


今度は、迷わない。


しっかりと。


でも、強すぎないように。


ちょうどいい力で。



空を見上げる。


星がある。


変わらない光。


でも――


あの頃とは、もう違う。


言えなかった二人じゃない。


選び続ける二人になった。



『腐りきるまで、別てぬ二人で』


あの言葉は、

もう“なれなかった未来”じゃない。


“これからなっていく未来”になった。



これは、

言えなかった人と、

気づいてしまった人が、


もう一度出会って、

ちゃんと選び直した話。

~完~

他にも『Vaundy』の名曲を紹介しておりますので併せてご覧くださいρ(._.*)ρ

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