『僕にはどうしてわかるんだろう』Vaundy。”人生は、あとからしか理解できない物語”

Vaundy

本日ご紹介するのは、『Vaundy(バウンディ)』のナンバーから

『僕にはどうしてわかるんだろう』【作詞・作曲:Vaundy】

歌詞全文はこちらのリンクから→https://www.uta-net.com/song/372246/

Vaundyの『僕にはどうしてわかるんだろう』は、2025年4月25日に配信限定でリリースされた楽曲で、テレビ朝日系木曜ドラマ『PJ ~航空救難団~』の主題歌として書き下ろされたもの。

この曲の歌詞をざっくり考察します。(´っ・ω・)っすた~と

この曲、かなり“Vaundyらしさの核”に触れている作品です。
結論から言うと――

「なぜ人は、自分の人生の意味を“後から”理解してしまうのか」
「挫折や未熟さすら、自分を作る“作品”だったと気づく物語」

です。

以下、かなり深く分解していきます。


① タイトルの核心

僕にはどうしてわかるんだろう

Vaundy「僕にはどうしてわかるんだろう」作詞・作曲:Vaundy

このフレーズは一見シンプルですが、めちゃくちゃ重要です。

「なぜ今になって理解できるのか?」

「なぜあの時は分からなかったのに?」

つまりこれは
“時間差で訪れる自己理解”への驚き

です。


② 冒頭:プライドを見失う夜

今晩は降りる駅を変え ―

小さなプライドの行方を探した

Vaundy「僕にはどうしてわかるんだろう」作詞・作曲:Vaundy

ここはかなり象徴的。

「駅を変える」=日常からの逸脱

「プライド」=自分を守っていたもの

自分の軸が揺らぎ始めた瞬間

つまりこの曲は、
“何かが壊れ始めた夜”から始まる物語です。


③ 音楽による覚醒

あの聴きなれたリリックで涙を流し出すまで

Vaundy「僕にはどうしてわかるんだろう」作詞・作曲:Vaundy

ここがVaundyらしいポイント。

音楽がトリガーになって本音に気づく

今まで気づけなかった感情が、
歌詞(=他人の言葉)によって引き出される。

つまり

  • 他人の言葉なのに
  • なぜか自分のことのように分かる

→ これがタイトルに繋がる


④ 「僕以上に僕を作っているもの」

僕以上に、僕以前に、僕よりも
僕のことつくってる

Vaundy「僕にはどうしてわかるんだろう」作詞・作曲:Vaundy

ここはこの曲の“哲学の中心”。

これは何か?

過去・経験・記憶

つまり

  • 自分で自分を作ってると思ってるけど
  • 実際は「過去」が自分を形作っている

⑤ モノクロの意味

挫折の日々は色づくため全部モノクロ

Vaundy「僕にはどうしてわかるんだろう」作詞・作曲:Vaundy

この一文、かなり重要。

普通なら

  • モノクロ=つまらない、暗い

でもこの曲では逆。

「未来で色づくための下書き」

つまり

  • 今は意味がないように見える日々も
  • 後から振り返ると色がつく

⑥ 中盤:世界の激変(詩的パート)

時は真夏
荒天と海神
蒼炎際立つ
骨相青に溶け
モノクロは焦シアン蒼白へ

Vaundy「僕にはどうしてわかるんだろう」作詞・作曲:Vaundy

このパート、かなり抽象的で詩的だけど――
実は曲の中で一番“感情が爆発してる場所”です。

『時は真夏』
 感情のピーク・限界状態
 真夏=熱・限界・暴走
 心理的には「もう抑えきれない状態」

 つまり
  感情が頂点に達している瞬間

『荒天と海神』
  内面の嵐+制御不能な力
  荒天=心の混乱・不安・崩壊
  海神=自然の力(=抗えない感情)

 つまり
  自分ではコントロールできない感情に飲まれている状態

『蒼炎際立つ』
  静かだけど激しい感情
  ここがめちゃくちゃ重要
  炎=情熱
  蒼(青)=冷静・孤独・切なさ

 普通の炎じゃなくて“青い炎”なのがポイント
 外に出さないけど、内側で強く燃えている感情(内に溜めてた本音)

『骨相青に溶け』
  自分の輪郭が崩れる
  骨相=人の本質・存在の形
  青に溶ける=境界が消える

 つまり
 「自分が自分じゃなくなる」感覚
  感情に飲まれて “これまでの自分”が崩れていく

『モノクロは焦シアン蒼白へ』
 無感情 → 色の回復(でも不安定)
 ここがこのパートの核心。
 モノクロ=無感情・鈍感・停滞
 シアン(青)=感情の回復(でも冷たい)
 蒼白=まだ不安定・完全じゃない

 つまり
 無感情だった状態に、感情が戻り始める瞬間
 ただし
 まだ“鮮やかな色”ではなく、青白い未完成の色

 この一連の流れは

 ① 感情が限界まで溜まる(真夏)
 ↓
 ② 内面が崩壊する(荒天・海神)
 ↓
 ③ 抑えていた本音が燃え出す(蒼炎)
 ↓
 ④ 自分が崩れる(骨相が溶ける)
 ↓
 ⑤ 無感情→感情へ変化(モノクロ→シアン)

この部分の本質は 「壊れることで、初めて“感じる人間”に戻る瞬間」

⑦ 「走馬灯」というキーワード

全てのことが走馬灯、胸に残っている

Vaundy「僕にはどうしてわかるんだろう」作詞・作曲:Vaundy

ここで時間軸が一気に変わる。

人生を振り返る視点

つまり主人公は

  • 今を生きているのに
  • すでに「回想している」

この感覚がタイトルの答え。

“未来の自分の視点が混ざっている”


⑧ 港=人生の出発点

あの港から光を手繰ってここまで来たんだ

Vaundy「僕にはどうしてわかるんだろう」作詞・作曲:Vaundy

港=スタート地点

人生の始まり・原点

「光を手繰る」=希望を頼りに進む

つまり

自分の人生を自覚し始めた瞬間


⑨ ラストの核心

全ての景色が思い出すためのモノクロ

Vaundy「僕にはどうしてわかるんだろう」作詞・作曲:Vaundy

ここがこの曲の最終答え。

“今”は記憶の素材でしかない

つまり

  • 今の出来事は
  • 後で思い出すために存在している

⑩ この曲の本質(超要約)

この曲はこういう構造です

① 現在(迷い・挫折)

② 音楽・記憶で感情が解放

③ 過去が自分を作っていると気づく

④ モノクロの日々が意味を持つ

⑤ 未来視点で人生を理解する


⑪ Vaundy的テーマとの繋がり

この曲、実は他の楽曲ともかなり繋がります。

共通テーマ

  • 「音楽=自己理解の装置」
  • 「恋愛や人生=作品」
  • 「今は意味がなくても後で意味になる」

つまり

人生そのものが“エッセイ(作品)”


まとめ

この曲を一言でいうと

「人生は後からしか理解できない物語」

そしてタイトルの答えはこれです。

“時間が経ったからわかる”のではなく
“未来の自分が、今の自分に重なっているからわかる”

以上私なりの歌詞解釈でした。歌詞が深いなあ…

続きまして、この曲を聴いて膨れ上がった私の妄想ストーリ(歌詞解釈)をチラッとお見せいたします
|ω・)チラッ

『僕にはどうしてわかるんだろう』

第一章:降りなかった駅と、空っぽの輪郭

電車のドアが開く。

いつもと同じ時間。
いつもと同じ景色。

人が流れるように降りていく。

でも、朝倉湊の足は動かなかった。

(……降りたくない)

理由はない。
でも、確かにそう思った。

一歩踏み出せば、いつも通りの帰り道。
何も変わらない日常。

それが、急に嫌になった。

ドアが閉まる。

警告音。

電車が動き出す。

「あ……」

小さく声が漏れる。

でも、もう遅い。

ホームが後ろへ流れていく。


窓に映る自分の顔。

どこかぼやけて見える。

焦点が合っていないような、そんな感覚。

(……なんなんだよ)

心の中で呟く。


軽音部に入って半年。

ギターは、それなりに弾けるようになった。

でも、それだけだった。

曲は作れない。
人前に立つ勇気もない。
ライブに出る理由もない。

ただ、楽器を持っているだけ。

(やってる“フリ”だな)

そう思った瞬間、胸の奥が少しだけ痛んだ。


次の駅で降りる。

知らない場所。

夕焼けが濃い。

空が、やけに広く見える。

現実なのに、どこか現実じゃない。


歩き出す。

目的もなく。

ただ、足が動く方向へ。


ポケットに手を突っ込む。

何かを探すように。

でも、自分でもわかっている。

探しているのは物じゃない。


(……何か、失くしたな)


それは、形のないもの。

でも、確かにあったはずのもの。


「……プライド、とかか」

口に出してみる。

妙にしっくりきた。


できないのに、できるフリをしていた。
何もしていないのに、やっている気でいた。


それを支えていた“何か”が。

今は、どこにもなかった。


夕焼けの中で、ふと思う。


(俺、空っぽなんじゃないか)


その言葉は、冗談みたいで。

でも、笑えなかった。


第二章:刺さる声と、逃げ場のない違和感

文化祭準備の初日。

体育館の中は、いつもより騒がしかった。

段ボール。
装飾。
笑い声。

非日常の空気が、そこにあった。


その中で、ふと。

歌声が聞こえた。


静かに、でもはっきりと。

空気を切り裂くような声。


思わず、振り返る。


白石陽菜。

ステージの上で、マイクを持っている。

目を閉じて、歌っている。


その声は。

綺麗だった。

でも、それだけじゃなかった。


どこか、不完全で。

どこか、欠けていて。

でも、それが逆にリアルだった。


(……なんだ、これ)


知らない曲のはずなのに。

なぜか、心に引っかかる。


いや。

違う。


(引っかかるんじゃない)


入り込んでくる


歌詞が、音が、声が。

逃げ場をなくすみたいに。

まっすぐ、入ってくる。


「……俺のこと、みたいだ」


気づいた瞬間、心臓が少し跳ねた。


放課後。

帰ろうとした足が止まる。


迷う。

声をかけるか、やめるか。


でも。

気づけば、口が動いていた。


「さっきの歌、良かった」


自分でも驚くくらい、自然な声だった。


陽菜が振り返る。

少しだけ驚いた顔。

それから、柔らかく笑う。


「ありがとう。でも、まだ全然なんだ」


「いや……なんか、刺さった」


言葉が足りない。

でも、それしか言えない。


少しの沈黙。


「……そっか」


彼女は、小さく頷いた。


「わかる人がいてよかった」


その言葉で。

何かが、確かに繋がった。


第三章:何もないと思い込んでいた理由

放課後の教室。

夕焼けが差し込む。

机と椅子が長い影を作る。


陽菜が、窓の近くで歌っている。

声は小さい。

でも、ちゃんと届く。


湊は、少し離れた席でそれを聴いていた。


「ねえ」

歌が止まる。


「湊くんって、曲作らないの?」


少しだけ考える。

でも、答えはすぐに出る。


「無理」


即答だった。


「なんで?」


「俺、何もないし」


そう言った瞬間。

ほんの少しだけ、違和感が走る。


でも、否定しなかった。


それが事実だと思っていた。


陽菜は少しだけ考えて、言う。


「何もない人なんていないよ」


「あるって」


「ないよ」


その言い方は、妙に確信があった。


「だってさ」


彼女は、窓の外を見る。

夕焼けが、目に入る。


「ちゃんと生きてるじゃん」


その言葉は。

すぐには理解できなかった。


でも。


心のどこかに、引っかかった。


(……生きてる、か)


当たり前すぎて、考えたこともなかった。


でも。


(それって、何かあるってことなのか?)


答えは出ない。


でも。


その日から、少しだけ。


“自分を見る視点”が変わり始めていた

第四章:言い訳の輪郭と、逃げる癖

文化祭まで、残り三週間。

教室の空気は、少しずつ変わっていた。

装飾の話。出し物の準備。
クラス全体が、どこか一つの方向を向き始めている。

でも、湊だけは。

その流れの外側にいる気がしていた。


放課後。

軽音部の部室。

ギターの音が響く。

誰かが練習している。

誰かが談笑している。


その中で、湊は壁にもたれていた。

ギターは持っている。

でも、弾いていない。


(……やらなきゃな)

頭ではわかっている。

文化祭でライブをやると決めた。

曲も作ると決めた。


でも。


(何からやればいいんだよ)


コードを並べてみる。

違う。

メロディをつけてみる。

しっくりこない。


「……やっぱ無理だな」


小さく呟く。


その瞬間。

心の奥で、もう一人の自分が言う。


“それ、本当か?”


一瞬、言葉に詰まる。


(いや……無理だろ)


すぐに打ち消す。


でも。


“やってないだけじゃないのか?”


思考が、少しだけ止まる。


(……うるせえな)


逃げるように、ギターを置く。


部室を出る。


廊下の空気が、少し冷たく感じた。


第五章:崩壊の引き金

帰り道。

あの駅で降りる。

もう、理由は考えなくなっていた。


そこに行けば。

何かが起きる気がする。


それだけだった。


夜の街。

人通りは少ない。

街灯の光が、地面を淡く照らしている。


イヤホンをつける。

再生する。


流れてくる音。

何度も聴いた曲。


でも、その日は違った。


最初のフレーズで、止まる。


(……なんだこれ)


歌詞が、逃げ場をなくす。


“まっすぐ来る”


今まで、聞き流していた言葉。

意味なんて考えなかったフレーズ。


それが。


全部、自分に向かってくる。


胸の奥が、ざわつく。


苦しい。


でも。


止められない。


(やめろよ……)


そう思うのに、耳を外せない。


次のフレーズ。


その瞬間。


何かが“開いた”


抑えていたもの。

見ないようにしていたもの。


全部が、一気に流れ込んでくる。


悔しかった日。

できなかったこと。

逃げたこと。


(……ああ)


理解してしまう。


全部、ちゃんとあったんだな


何もないんじゃない。


見てなかっただけだ


涙が、自然に落ちる。


「……なんで今なんだよ」


声が震える。


でも、すぐにわかる。


今しかなかったからだ


逃げきれなくなったから。


ごまかせなくなったから。


第六章:繋がる瞬間(文化祭前夜)

夜の空気が、少しだけ変わる。


さっきまでとは違う静けさ。


頭の中が、整理されていく。


バラバラだった記憶。

感情。

言葉。


それが、一本の線になる。


(……そうか)


ゆっくりと、理解する。


全部、繋がってたんだな


何もないと思っていた日々。

意味がないと思っていた時間。


でも。


全部、ここに来るためのものだった


胸に手を当てる。


ドクン、と音がする。


(……ちゃんと、生きてる)


初めて、そう思えた。


「僕にはどうしてわかるんだろう」


自然に、言葉が出る。


答えは、もうあった。


全部、自分の中にあるからだ


ゆっくりと、息を吐く。


「……やるか」


その一言は。


今までで一番、本物だった


第七章:文化祭ライブ

体育館。

光。

ざわめき。


ステージの袖。

心臓の音が、やけに大きい。


ドクン。

ドクン。


(……逃げたい)


正直な感情。


でも。


(逃げない)


それも、同時にあった。


ステージに出る。

光が、目に刺さる。

観客は見えない。


でも、それでいい。


ギターを構える。


隣には、陽菜。


その存在が。


少しだけ、支えになる。


(……ここまで来たな)


ピックを持つ手に、力が入る。


弦に触れる。


一瞬の静止。


そして。


音が鳴る


その瞬間。


時間が繋がる。


夕焼けの教室。

言い合い。

逃げた夜。


全部が、同時にここにある。


(……これだ)


自然と、体が動く。


音に集中する。


一音、一音。


荒くてもいい。


これは、自分の音だ


歌が入る。


陽菜の声。


強くて、揺れていて。


でも、まっすぐ。


(……変わったな)


そう思う。


自分も。


この人も。


サビ。


音が広がる。


空気が変わる。


観客が、聴いているのがわかる。


(……届いてる)


確信はない。


でも。


“繋がっている感覚”があった


最後の一音。


消える。


静寂。


そして。


拍手。


音が返ってくる。


(……ああ)


思う。


ちゃんと、やったな

第八章:選ばなかった未来

文化祭が終わって、数日。

教室は、何事もなかったかのように元に戻っていた。

机も、黒板も、
昨日までのざわめきが嘘みたいに静かだ。

でも。

(……戻ってないな)

自分の中だけは、明らかに違っていた。


放課後。

人の少なくなった教室。

窓から差し込む夕焼けが、床に長い影を落としている。

湊は、何も置いていない机をぼんやり見ていた。


(あの音……)

思い出す。

最初の一音。
空気が変わった瞬間。
体の奥が開いた感覚。


(……忘れられないな)


それは、強烈すぎた。

今まで感じたことのない“実感”。

「自分がそこにいる」感覚


でも。


(それで、どうする)


頭の中で、別の声がする。


現実。

進路。

将来。


考えないようにしていた言葉が、浮かび上がる。


「ねえ」


声がして、顔を上げる。

陽菜が立っていた。


「最近、静かだね」


「そうか?」


短いやり取り。

でも、その中に全部が含まれている。


少しの沈黙。


「これから、どうするの?」


その一言で。

空気が変わる。


逃げられない質問。


湊は、少しだけ目を逸らす。


(……決めてたはずだろ)


ずっと前から。

文化祭の前から。


「……普通に、進学する」


口に出す。


その瞬間。

胸の奥が、少しだけ重くなる。


陽菜は、少しだけ間を置く。


「音楽は?」


止まる。


頭の中に、全部が流れる。


ステージ。

音。

光。


(やりたいか?)


やりたいに決まってる


でも。


それを選べるかは別だ


現実は、そんなに甘くない。


「……やめる」


言葉が落ちる。


その瞬間。


何かが沈む


重くて、形のないもの。


自分でもわかる。


これは“間違いじゃない”


でも同時に。


“何かを置いていく選択”だ


陽菜は、すぐには何も言わなかった。


ただ、静かに聞いていた。


「現実的にさ」


言葉が続く。


「音楽で食っていくとか無理だろ」

「才能もないし」

「一回ライブやったくらいで変わるわけないし」


止まらない。


自分でもわかっている。


全部、“正しさの形をした逃げ”だ


でも、止められない。


沈黙。


少し長い時間。


「……そっか」


陽菜が言う。


「それも、湊くんの選択だよね」


その一言で。


言葉が詰まる。


“選択”


逃げじゃない。


自分で決めたこと


それが、一番重い。


「……ごめん」


なぜか、そう言っていた。


「なんで?」


「……なんか」


言葉が見つからない。


「もったいない気がして」


本音だった。


自分でも、わかっている。


全部を持っていくことはできない


陽菜は、少しだけ笑う。


「うん。でもさ」


「一回気づいたものって、なくならないよ」


その言葉が、胸に残る。


「どこに行っても、ついてくる」


(……そうかもしれないな)


完全には否定できなかった。


「またやりたくなったら、やればいいじゃん」


軽い言葉。

でも。


逃げ道じゃなくて、“消えないもの”の話だった


夕焼けが、少し濃くなる。


(……これでいい)


そう思う。


でも。


完全には納得していない自分がいる


それを、見ないようにした。


それが、一番楽だった。


第九章:モノクロの時間

数年後。


満員電車。

押し込まれる体。

同じ方向を向いた人たち。


イヤホンはつけている。

でも、何も流れていない。


(……いつから聴かなくなったんだっけ)


思い出せない。


スーツ。

革靴。

会社のIDカード。


(ちゃんとしてるな)


そう思う。


間違ってはいない。


仕事は順調。

上司の評価も悪くない。

ミスも少ない。


“正解”の中にいる


でも。


ある日。


資料を作りながら、ふと思う。


(これ、俺じゃなくてもいいな)


その瞬間。


色が消える


景色が、少し遠くなる。


音が、薄くなる。


感情が、ぼやける。


(……ああ)


思い出す。


この感じ、知ってる


文化祭の前。


“何も感じない自分”


帰り道。


駅。


人の流れ。


全部が、同じに見える。


(……また、これか)


小さく笑う。


でも。


笑えなかった。

第十章:再会と、止まっていた時間の再始動

その日、なぜその駅で降りたのか。

理由は、最後までわからなかった。

仕事帰り。
いつもと同じ時間。
同じ電車。

でも、ドアが開いた瞬間。

(……ここで降りるか)

そう思った。

ただ、それだけだった。


ホームに降りる。

空気が少し違う。

懐かしい、というより。

“忘れていた感覚が戻る”感じ


改札を抜ける。

歩く。

あの道。

あの街灯。


全部、覚えている。


(……変わってないな)


でも。

変わっているのは、自分の方だ。


少し歩いたときだった。


歌声が聞こえた。


足が止まる。


この声を、間違えるはずがない。


振り返る。


白石陽菜。


路上。

マイクもなく、ただ歌っている。


数秒、動けなかった。


(……まじか)


時間が、止まる。


でも、同時に。


時間が一気に“繋がる”


文化祭。

あの夜。

あの選択。


全部が、同時に戻ってくる。


曲が終わる。


小さな拍手。

通り過ぎる人。


その中で、陽菜が顔を上げる。


目が合う。


一瞬の沈黙。


それから。


「……久しぶり」


それだけだった。


でも、それで十分だった。


言葉が、いらなかった。


少し歩いて、ベンチに座る。


コンビニのコーヒー。

少し冷えた夜。


「まだ、やってたんだな」


「うん」


短いやり取り。


「湊くんは?」


少しだけ、間が空く。


「……やってない」


言葉にした瞬間。

胸の奥が、少しだけ沈む。


沈黙。


でも、彼女は言う。


「やめたわけじゃないでしょ?」


その一言で。


時間が止まる


(……なんで)


そう思う。


なんで、そんなことがわかるんだ。


でも。


図星だった


言い訳を探す。


忙しいから。
社会人だから。
現実的じゃないから。


でも。


全部、出てこない。


ただ、わかる。


やめてはいない


ただ、止めていただけだ


帰り道。


何も話さなかった。


でも。


(……戻るな、これ)


そう思った。


第十一章:再起動と、二つの世界のあいだ

部屋。


電気をつける。


見慣れた空間。


机。
ベッド。
そして、部屋の隅。


ギターケース。


(……あったな)


ずっと、そこにあった。


見ないようにしていただけで。


ゆっくりと、近づく。


手をかける。


少しだけ、ためらう。


(今さら、か)


そう思う。


でも。


(今だから、か)


とも思う。


開ける。


弦は少し錆びている。


指で触れる。


軽く弾く。


音が鳴る。


その瞬間。


全部、戻る


文化祭の音。
あの夜の空気。
あの感覚。


(……ああ)


思わず、息が漏れる。


これだ


忘れていたわけじゃない。


“感じないようにしていただけ”だった


椅子に座る。


もう一度、弾く。


コードを鳴らす。


少しだけぎこちない。


でも。


ちゃんと繋がっている


(……やるか)


小さく呟く。


でも、その言葉は。


文化祭前夜と同じ重さだった



それからの日々。


変わらない生活。


朝、会社へ行く。
仕事をする。
帰る。


でも。


夜だけ、違う


ギターを持つ。


少しだけ弾く。


最初は、数分。


それが、少しずつ長くなる。


休日。


曲を作ってみる。


うまくいかない。


でも。


(……前より、わかるな)


なぜ作れなかったのか。


見ていなかったからだ


今は違う。


ちゃんと、自分を見ている



ある日。


陽菜から連絡が来る。


『ライブやるんだけど、来ない?』


少し考える。


でも、すぐに打つ。


『行く』



ライブハウス。


狭い空間。


人の熱気。


ステージの上の陽菜。


(……すごいな)


思う。


続けてきた人の音だ


ブレていない。


迷っていないわけじゃない。


でも。


逃げていない音だった



ライブ後。


「ねえ」


彼女が言う。


「またやらない?」


少しだけ、間が空く。


でも。


もう、迷わなかった。


「……やる」


その一言で。


世界が動き出す

第十二章:回収と、音の中でほどける人生

ステージの上は、思っていたよりも静かだった。

ざわめきはある。
人もいる。
光も強い。

それでも――

(……静かだな)

そう感じた。


ギターを持つ。

指を軽く動かす。

弦の感触。

少し乾いた空気。

ライトの熱。


全部が、はっきりとわかる。


(逃げたい、とは思わないな)


文化祭のときは違った。

怖かった。
震えていた。
逃げたくて仕方なかった。


でも今は。


怖さの質が違う


消えない。

でも、押し潰されない。


それはきっと。


逃げてきた時間があるからだ


(……遠回りしたな)


ふと、思う。


文化祭の後。

あの選択。


「やめる」と言った日。


あのとき。

間違っていたのかと聞かれたら。


(……違うな)


そう思う。


あれも必要だった


あの選択があったから。

あのモノクロがあったから。


今、ここにいる自分がいる



「……行こう」


隣で、陽菜が言う。


あの頃と同じ声。

でも、確実に違う。


時間を通ってきた声。


「……ああ」


短く答える。


それで十分だった。



静寂。


一瞬、世界が止まる。


(……この感じ)


文化祭の前夜。

あの夜と、少し似ている。


でも。


もう、逃げないと決めている



ピックを持つ。


弦に触れる。


ほんの一瞬。


呼吸が止まる。


そして。


音が鳴る



その瞬間。


すべてが、ほどけた。


頭の中にあったもの。

言葉にならなかったもの。

引っかかっていた感情。


全部が、音に変わる。


(……ああ)


理解する。


ずっと、これをやりたかったんだな



音が重なる。


陽菜の声が入る。


まっすぐで。

でも、ただまっすぐじゃない。


迷いも。

痛みも。

時間も。


全部通ってきた声



その声に重ねるように、ギターを鳴らす。


不思議と、力まない。


昔みたいに、“良く見せよう”ともしない。


ただ、鳴らすだけでいいと思えた



(なんで、わかるんだろうな)


ふと、思う。


観客の顔は見えない。


でも。


わかる


誰かが、聴いている。

誰かが、何かを感じている。


それが、わかる。



理由は、ひとつだった。


自分も、そうだったからだ



モノクロの日々。

何も感じなかった時間。


でも。


後から、全部色になった



だから、わかる。


今、この瞬間も。


誰かの中に残る



曲が終盤に向かう。


音が削られていく。


余白が増える。


その中で、最後のフレーズ。


指が、少しだけ震える。


でも、止めない。


最後まで鳴らす



そして。


最後の一音。


消える。



完全な静寂。


(……終わった)


そう思った瞬間。


拍手が起きる。


最初は小さく。


でも、すぐに広がる。


音が、返ってくる。


(……ああ)


胸の奥が、少しだけ熱くなる。


ちゃんと、繋がった

第十三章:音の外で、続いていくもの

楽屋のドアが閉まった瞬間。

外の音が、すっと遠くなった。

さっきまで確かにあった拍手も、
ざわめきも、
全部、薄い膜の向こうに消えていく。


(……静かだな)


椅子に腰を下ろす。

ギターを膝の上に置く。

まだ、弦の振動が残っている気がした。


指先に、感覚が残っている。

ほんの少しの痺れ。

弾いたときの圧。


(……まだ鳴ってるな)


音は消えたはずなのに。

体の中では、まだ続いていた。


陽菜が隣に座る。

何も言わない。


その沈黙が、ちょうどよかった。


言葉にすると、壊れてしまいそうだった。


(……終わったのか)


そう思う。


でも、すぐに違うと気づく。


終わっていない


むしろ。


“始まった感じ”がする



「……どうだった?」


陽菜が、静かに聞く。


少しだけ考える。


でも、やっぱり言葉にならない。


「……わかんない」


正直な答え。


「でも」


息を吸う。


「ちゃんと、繋がった感じがする」



自分でも、驚くくらい素直な言葉だった。


陽菜は、小さく頷く。


「うん」


それだけで、十分だった。



楽屋を出る。


廊下。


壁に貼られたポスター。


知らないバンドの名前。


でも。


(……みんな、同じなんだろうな)


何かを抱えて。

何かを鳴らして。


ここに立っている。



外に出る。


夜の空気が、少し冷たい。


さっきまでの熱が、ゆっくりと抜けていく。


でも。


消えない


胸の奥に、残っている。


歩き出す。


街灯の光。


アスファルトの匂い。


遠くの車の音。


全部が、少しだけ鮮明に見える。


(……変わったな)


世界じゃない。


自分の見方が変わった

第十四章:日常に戻るということ

朝。


目が覚める。


カーテンの隙間から、光が差し込んでいる。

白い天井。

見慣れた部屋。


(……いつもと同じだな)


そう思う。


でも。


同じじゃない


体を起こす。


指を軽く動かす。


(……残ってる)


ギターを弾いたときの感覚。

弦の抵抗。

指先の震え。


まだ、消えていない



ベッドから降りる。


床の冷たさ。


足の裏に伝わる感触。


(……こんな感じだったっけ)


小さく思う。



以前なら。


何も感じなかった



でも今は。


一つ一つが、ちゃんとある



顔を洗う。


水の冷たさ。


鏡に映る自分。


少しだけ、はっきり見える。


(……悪くないな)



朝食。


トーストの匂い。


コーヒーの苦味。



(こんなに味あったっけ)



小さく笑う。



電車に乗る。


満員。


押し込まれる体。


人の流れ。



(変わらないな)



でも。


見え方が違う



誰かがスマホを見ている。


誰かが眠っている。


誰かがぼんやりと外を見ている。



(みんな、それぞれの時間を生きてるんだな)



前は、ただの“風景”だった。


でも今は。


全部、意味を持って見える



会社に着く。


パソコンを開く。


作業を始める。



同じことの繰り返し。



でも。


(……これも、途中だな)



“意味がない時間”じゃない



“意味になる途中の時間”



キーボードを打つ音。


資料の数字。


上司の声。



全部。


ちゃんと“現実”としてある



昼休み。


一人で座る。


スマホを開く。



陽菜からのメッセージ。


『今日、ちょっとだけ弾いた』


短い文章。


でも。


それだけで伝わる



少し考える。


『俺も』


送る。



それだけ。


でも。


ちゃんと繋がっている感じがする



午後。


仕事を続ける。



ふとした瞬間。


頭の中に、音が浮かぶ。


昨日のフレーズ。


ギターの音。



(……残ってるな)



音が、日常に入り込んできている



帰り道。


空が、少し赤い。



(あの日と似てるな)



でも。


同じじゃない



あの時は、迷っていた。


今は。


迷いながらも、進んでいる



第十五章:なぜわかるのか

夜。


一人で歩く。


街灯の光。


少し冷たい空気。



(……静かだな)



でも。


嫌な静けさじゃない



落ち着いた静けさ。



空を見上げる。



少し曇っている。


星はあまり見えない。



(それでも、いいな)



そう思える。



「僕にはどうしてわかるんだろう」


もう、この言葉は。


問いじゃない



確認だった。



(……そうか)



ゆっくりと、言葉になる。



わかるのは、“特別”じゃない



ただ、通ってきたからだ



ただ、感じてきたからだ



ただ、逃げて、戻ってきたからだ



モノクロだった日々。


何も感じなかった時間。



でも。


消えていなかった



後から、全部意味になった



(……だからか)



今も、わかる。



今のこの時間も、あとで意味になる



今は、その途中だ



小さく息を吐く。



(……それでいいな)



完璧じゃなくていい。


答えが全部出ていなくてもいい。



途中だから、いい



エピローグ:続いていくもの

歩く。


一定のリズム。



(……軽いな)



少しだけ。


軽くなっている。



全部が解決したわけじゃない。


未来も決まっていない。



でも。


止まっていない



それだけで、十分だった。



街の光。


人の流れ。


音。



全部が、そこにある。



(……ちゃんと、生きてるな)



ふと、思う。



モノクロだった日々

逃げた時間

選ばなかった未来



全部。


必要だった



そして。


まだ終わっていない



(……これからだな)



少しだけ、笑う。



歩き出す。



今度は。


止まらない



人生は、あとからしか理解できない



でも。


だから、今は意味になる途中だ



音のある方へ。


まだ見えない未来へ。

~完~

他にも『Vaundy』の名曲を紹介しておりますので併せてご覧くださいρ(._.*)ρ

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